表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

プロローグ 落ちこぼれ、苦悩の果てに。

新作です。

応援よろしくお願いいたします。








「――ディン。お前に剣の才能は、欠片ほどもない」




 父がボクにそう告げたのは、十三度目の誕生日を迎えた翌日だった。

 十歳の頃から毎日のように剣術の鍛錬に励んできて、薄々分かっていたことではある。それでも父親から直接、苦虫を嚙み潰したような表情で伝えられるのは苦しかった。

 しかし、ボク――ディン・アルケイオスに剣術の才がないのは明らかだ。


 名門騎士の家系に生まれ。

 長男として、幼い頃から家督を継ぐ意味について考えてきた。でも――。



「悪いが、ディンよ。お前に家督を継がせる話は、白紙とする」

「…………分かり、ました」



 その一言で、すべてが終わり。

 ボクは長男でありながら、アルケイオスの家督を継ぐことはなくなった。すなわちそれは、ボクが生きる理由としてきた目的の消失に他ならない。

 だから――。



「……あの、お父様。折り入って、お願いがあります」



 この時のボクは、潔く身を引こう。

 そう思って、父にある提案をしたのだった。







「えー……。今の説明で【ファイア】を発現できなかった者はいるか?」

「はーい、先生! ディンがまたできてませーん!」

「なんだ、またアルケイオスか……」

「す、すみません……!」




 ――あの日から、三年の月日が流れて。

 ボクは本来通うはずだった騎士学園ではなく、魔法学園に通っていた。

 名門騎士家系であるアルケイオス。そこの長男が魔法学園に通うなどということは、前代未聞の出来事だった。だが、これはボクから申し出たこと。


 剣の才がない。

 それなら、僅かながらに扱えた魔法の才を伸ばそう。

 あの当時のボクは、せめてもの可能性を求めて決断したのだった。



「……ったく。いったい、何度教えればできるようになるんだ?」

「すみません、先生……」



 だけど、現実はそんなに甘くはない。

 魔法というのは本来、何代にも重ねて研磨していく才能だ。

 そんなところに、騎士の家系の人間が足を踏み入れればどうなるのか。結果は火を見るよりも明らかだった。



「ホントに、どうして入学できたんだろうな」

「なんでも父親のコネらしいよ?」

「うわ、最悪……!」



 クラスメイトの声が、嫌でも耳に届く。

 しかし、それに反論することもできなかった。

 何故ならボクが魔法学園に入学できたのは、奇跡に近いのだから。決してコネとかではない。だが、筆記の成績でどうにか滑り込んだに過ぎないのだ。



「あ、で……できました!」

「はぁ……。よし、今日はここから進めていくぞ」



 そんなボクが必死になって基礎中の基礎魔法【ファイア】を成功させる。

 しかし、それでも聞こえてくるのはため息ばかりだった。



 分かっている。

 ボクがいるせいで、他の生徒の授業進行が遅れているのだ。

 教員の苛立ちが肌を刺すように伝わってきて、思わず震え上がりそうになる。



「………………」



 ――もう、終わりなのだろうか。


 淡々と進んでいく授業に、耳を傾けながら。

 ボクは、隠れて一つため息をつくのだった……。







 その日の放課後のこと。

 ボクは日課となっている自習のため、図書室へと足を運んでいた。

 折れそうになる心を必死に奮い立たせて、せめて最後まで足掻こうと決めたのである。基礎能力で届かないのなら、ボクが対抗できるのは知識だけなのだから。



「……えっと、今日は――」



 と、いうわけで。

 その日もいつものように、分厚い魔術書と睨めっこ。

 独学ながらも三年間こうやっていれば、ある程度は理解できるようになっていた。本当に知識だけなら、教員の方々に負けるとも劣らない自信がある。



「とはいっても、問題は実践なんだよなぁ……」



 誰もいない図書室で、ボクはそう呟く。

 そうして、ふと次のページを開いた時だった。



「ん、これは……?」



 一枚の古ぼけた紙切れが、魔術書の中から出てきたのは。

 ボクはそれを手に取り、書かれているないように目を通していく。どうやら何かの暗号のようだが、見たことのない文字ばかりだった。


 それでも、不思議と興味が惹かれる。

 気付けばボクは、メモ帳片手に暗号の解読を始めていた。



「汝……この、文を……解くならば……」



 そして、いつの間にか。



「学徒の集う、憩いの地にて……この言葉を、唱えよ……?」



 ボクは答えを導き出していた。

 全文を書き出すと、こうだ。


『汝、この文を解くならば学徒の集う、憩いの地にてこの言葉を唱えよ』


 そして、末尾には件の言葉があった。



「なんだろ、これ……?」



 解読はできた。

 しかし、意味は分からない。



「憩いの地、って……中庭?」



 それでも、ボクの興味はすっかりそちらに向かっていた。

 日はとっくに落ちている。これなら――。



「まぁ、誰にも見つからないだろうし……」



 そう思って、ボクは中庭へと足を運んだのだ。







「えっと……」




 そして、ボクは誰もいない学園の中庭でこう口にした。








「【ハーヴァマール】」――と。







 直後、世界が暗転した。




「え、なんだ!? こ、これは――」




 しかし、それも一瞬の出来事。

 次にボクが立っていたのは、武器がたくさん並んだ倉庫のような場所で。




「これ、は……?」




 すぐに、息を呑んだ。

 目の前にあった一振りの槍を見て。

 先ほどと同じで、見慣れない文字の刻まれた槍はとかく美しい。思わず見惚れてしまっていると、そんなボクにこんな声がかけられた。




「おや、どうやら久々の来客のようですね」




 どこから聞こえるのか。

 困惑していると、その声は少しおかしそうに笑って言うのだった。




「目の前ですよ。自己紹介をしましょう、私は――」




 そして、声の主は中性的なそれでこう名乗るのだ。






「神槍【グングニル】と、申します」――と。




 


面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!


もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。

創作の励みとなります。


応援よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ