プロローグ 落ちこぼれ、苦悩の果てに。
新作です。
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「――ディン。お前に剣の才能は、欠片ほどもない」
父がボクにそう告げたのは、十三度目の誕生日を迎えた翌日だった。
十歳の頃から毎日のように剣術の鍛錬に励んできて、薄々分かっていたことではある。それでも父親から直接、苦虫を嚙み潰したような表情で伝えられるのは苦しかった。
しかし、ボク――ディン・アルケイオスに剣術の才がないのは明らかだ。
名門騎士の家系に生まれ。
長男として、幼い頃から家督を継ぐ意味について考えてきた。でも――。
「悪いが、ディンよ。お前に家督を継がせる話は、白紙とする」
「…………分かり、ました」
その一言で、すべてが終わり。
ボクは長男でありながら、アルケイオスの家督を継ぐことはなくなった。すなわちそれは、ボクが生きる理由としてきた目的の消失に他ならない。
だから――。
「……あの、お父様。折り入って、お願いがあります」
この時のボクは、潔く身を引こう。
そう思って、父にある提案をしたのだった。
◆
「えー……。今の説明で【ファイア】を発現できなかった者はいるか?」
「はーい、先生! ディンがまたできてませーん!」
「なんだ、またアルケイオスか……」
「す、すみません……!」
――あの日から、三年の月日が流れて。
ボクは本来通うはずだった騎士学園ではなく、魔法学園に通っていた。
名門騎士家系であるアルケイオス。そこの長男が魔法学園に通うなどということは、前代未聞の出来事だった。だが、これはボクから申し出たこと。
剣の才がない。
それなら、僅かながらに扱えた魔法の才を伸ばそう。
あの当時のボクは、せめてもの可能性を求めて決断したのだった。
「……ったく。いったい、何度教えればできるようになるんだ?」
「すみません、先生……」
だけど、現実はそんなに甘くはない。
魔法というのは本来、何代にも重ねて研磨していく才能だ。
そんなところに、騎士の家系の人間が足を踏み入れればどうなるのか。結果は火を見るよりも明らかだった。
「ホントに、どうして入学できたんだろうな」
「なんでも父親のコネらしいよ?」
「うわ、最悪……!」
クラスメイトの声が、嫌でも耳に届く。
しかし、それに反論することもできなかった。
何故ならボクが魔法学園に入学できたのは、奇跡に近いのだから。決してコネとかではない。だが、筆記の成績でどうにか滑り込んだに過ぎないのだ。
「あ、で……できました!」
「はぁ……。よし、今日はここから進めていくぞ」
そんなボクが必死になって基礎中の基礎魔法【ファイア】を成功させる。
しかし、それでも聞こえてくるのはため息ばかりだった。
分かっている。
ボクがいるせいで、他の生徒の授業進行が遅れているのだ。
教員の苛立ちが肌を刺すように伝わってきて、思わず震え上がりそうになる。
「………………」
――もう、終わりなのだろうか。
淡々と進んでいく授業に、耳を傾けながら。
ボクは、隠れて一つため息をつくのだった……。
◆
その日の放課後のこと。
ボクは日課となっている自習のため、図書室へと足を運んでいた。
折れそうになる心を必死に奮い立たせて、せめて最後まで足掻こうと決めたのである。基礎能力で届かないのなら、ボクが対抗できるのは知識だけなのだから。
「……えっと、今日は――」
と、いうわけで。
その日もいつものように、分厚い魔術書と睨めっこ。
独学ながらも三年間こうやっていれば、ある程度は理解できるようになっていた。本当に知識だけなら、教員の方々に負けるとも劣らない自信がある。
「とはいっても、問題は実践なんだよなぁ……」
誰もいない図書室で、ボクはそう呟く。
そうして、ふと次のページを開いた時だった。
「ん、これは……?」
一枚の古ぼけた紙切れが、魔術書の中から出てきたのは。
ボクはそれを手に取り、書かれているないように目を通していく。どうやら何かの暗号のようだが、見たことのない文字ばかりだった。
それでも、不思議と興味が惹かれる。
気付けばボクは、メモ帳片手に暗号の解読を始めていた。
「汝……この、文を……解くならば……」
そして、いつの間にか。
「学徒の集う、憩いの地にて……この言葉を、唱えよ……?」
ボクは答えを導き出していた。
全文を書き出すと、こうだ。
『汝、この文を解くならば学徒の集う、憩いの地にてこの言葉を唱えよ』
そして、末尾には件の言葉があった。
「なんだろ、これ……?」
解読はできた。
しかし、意味は分からない。
「憩いの地、って……中庭?」
それでも、ボクの興味はすっかりそちらに向かっていた。
日はとっくに落ちている。これなら――。
「まぁ、誰にも見つからないだろうし……」
そう思って、ボクは中庭へと足を運んだのだ。
◆
「えっと……」
そして、ボクは誰もいない学園の中庭でこう口にした。
「【ハーヴァマール】」――と。
直後、世界が暗転した。
「え、なんだ!? こ、これは――」
しかし、それも一瞬の出来事。
次にボクが立っていたのは、武器がたくさん並んだ倉庫のような場所で。
「これ、は……?」
すぐに、息を呑んだ。
目の前にあった一振りの槍を見て。
先ほどと同じで、見慣れない文字の刻まれた槍はとかく美しい。思わず見惚れてしまっていると、そんなボクにこんな声がかけられた。
「おや、どうやら久々の来客のようですね」
どこから聞こえるのか。
困惑していると、その声は少しおかしそうに笑って言うのだった。
「目の前ですよ。自己紹介をしましょう、私は――」
そして、声の主は中性的なそれでこう名乗るのだ。
「神槍【グングニル】と、申します」――と。
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