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4話 : 防具づくり

「他愛もない。」

 虫によってHPを吸い尽くされた、イバーンが光となって消える。そこには、いくつかのドロップアイテムが残されるだけだった。コウは歩みより、アイテムを拾ってインベントリにしまう。


「こ、コウ…?お主どうしたのじゃ?」

 心配そうに近づいてきたヨミ。そんな姿を目にとめ、コウは【王の器】を解除した。


「うぅわ…、めっちゃくちゃ恥ずかしいなこれっ!」

 コウがいつもの口調に戻ったかと思えば、頭を抱えてその場にうずくまり出した。まだ心配そうな顔をするヨミに、コウは先ほどまで使っていたスキルのことを話す。


 【王の器】は、MPを消費し続けることで、テイム可能なモンスターを強制的に使役するスキルだった。また発動者自身のステータスを上昇させる効果もあるため、それだけならばMP消費が重い優秀なスキルで終わったのだが、『プレイヤーの言動・行動が変化する。』という一文が加えられていた。すなわち、先ほどまでのコウの一連のセリフは、スキルの副作用といったところである。


「妾は嬉しいぞ。そなたが自発的ではないとは言え、ロールプレイに目覚めたことに。」

 笑顔のヨミが、慰めにならないような言葉をコウにかけるのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「期間限定イベントか…。」

「そうじゃ。2次職実装してから初のイベントなんじゃよ。」

 コウのプライベートルームに戻ってきた二人は、運営からの告知を見ていた。そこには、3週間後の期間限定イベントの内容や、報酬が書かれている。コウもそれらのいくつかに魅力を感じており、できることなら欲しいとは思うのだった。


「妾は思ったのじゃ。お主と組めば結構いい線行けるのではと。」

「でもさ、ヨミはギルド入ってるだろ?そっちと一緒に行った方がいいんじゃないのか?」

「む、それがの。今回『円卓の聖騎士』のメンバーはそれぞれ独自に動く予定なのじゃ。」


 このイベントは、いわゆる護衛任務である。通常のフィールドで行われるが、フィールド上にイベント専用の、『干支モンスター』が12種類配置される。そのモンスター達を、干支の順番で護衛しながら目的地まで連れていき、12種全てを目的地に辿り着かせた順番を競うものだった。また、イベント戦のため、限定モンスターである『聖獣』も複数配置されている。更に、干支モンスターと同じ目的地に連れていくことで、確定で聖獣をテイムできるというボーナスイベントもあった。


 クエスト自体はパーティーで受注することができる反面、聖獣はをテイムできるのはパーティーの中でただ1人となってしまうデメリットがあった。だが、聖獣を確定でテイムできる上、パーティーで受注可能なクエストとなれば、護衛任務の難易度はかなり高いことが予想される。つまり、達成できないリスクを覚悟で1人で受注するか、パーティーを組んで攻略難易度を下げ、他のパーティーメンバーに聖獣を譲ってもらうかの2択となる。

 一応、運営の告知の最後、注釈欄には『複数名でクエスト達成した場合、パーティーメンバーの貢献度順に聖獣をテイムできる権利を得ることができます。』と書かれていた。運営もイベントの仕様上、プレイヤー同士の揉め事が起きることは想定しているため、このような条件を付け加えているのだろう。


「そりゃそうか。みんな聖獣狙いだったら、ヨミのギルメン同士で組むのは悪手だな。」

 ヨミの所属するギルド『円卓の聖騎士』は、過去のイベントで聖獣を手に入れた13人のメンバーからなるギルドだ。そして、今回のアップデートでは全員が【聖騎士】のジョブとなっている。つまり、新しい聖獣を手に入れるチャンスである次のイベントでは、個別に動く必要があるというわけだ。


「うむ。そうなのじゃ。それにな、お主はタマ以外をテイムするコストがないのでな、クリアしてしまえば聖獣は妾のものなのじゃよ!」

 ちゃっかりしてる、とコウは肩をすくめた。たしかに、コウは【王の器】を発動しない限り、テイムコストは1である。【王の器】自体は、MPを連続消費するスキルのため、実質彼がテイムできるモンスターはタマしかいない。ヨミはその特性に目を付けて、安全かつ確実に聖獣を手に入れようという魂胆だった。彼女のこんな性格は、リアル含めていつものことだったので、コウは少し考えてから条件付きで了承した。


「わかった。聖獣はヨミがテイムすればいい。その代わり、クエスト中の素材とトレード可能な報酬はくれるか?」

「感謝するのじゃ!よいぞよいぞ、新しい聖獣が手に入るなら、他は持っていくがよい。」

 ヨミはもう既に聖獣をテイムしたかのように浮かれている。一方のコウも、素材や報酬が倍になるという条件が付くため、イベントに向けて準備を進めなければ、と思うのであった。


 ヨミがプライベートルームを去った後、コウは拾ったワイバーンの素材を使って防具を作成していた。ヨミと相談した結果、コウのレベリングは彼一人でも問題ないと判断したのだ。だが、さすがに防具が初期装備のままでは心もとない。もともと装備は更新するつもりでいたので、さっそく作業に取り掛かる。以前、ヨミの装備を同じ素材で作ったこともあるので、さほど問題はなかった。

 このゲームにおける防具は2種類存在し、『能力値』と『外見+α』を別々に反映したものとなっている。

 『能力値』を反映した防具は、攻撃力や防御力、HPやMPといったプレイヤーの能力を底上げする機能を持っている。だが、その見た目は黒一色のボディスーツとなっており、一部の嗜好を持つプレイヤーを除いて、能力値の防具のみを装備する者はいない。また、ボスからの天然ドロップと製作以外に入手方法がなく、そもそも能力値防具を付けていないプレイヤーもたくさんいた。

 一方、『外見+α』の防具は、能力値防具の外見を無効化し、違う見た目に変更するものだ。プレイヤーの初期装備の防具はこっちに分類される。こちらの防具は通常のエネミーからのドロップなど、入手は比較的容易だった。しかし、見た目は初期装備と大きくは変わらず、ヨミの白銀のライトアーマーのように、独自性の高い見た目の防具の入手難易度は一気に跳ね上がる。その分、『+α』の要素として、パッシブスキル等の恩恵を得ることができるのだ。ちなみに、ヨミの外見防具は、ユニコーンをテイムした時のボーナスアイテムであり、『聖獣の加護』というバフスキルが付加されている。


 膝にタマを乗せ、コウは眉間にしわを寄せながら目の前のポップアップを見つめていた。今作ろうとしているのは、『ワイバーンの能力防具』で、悩んでいるのは能力値の割り振りだ。

 プレイヤーのレベルアップ時に獲得する能力ポイントの振り分けと同じく、能力防具作成時も各種ステータスのポイントを割り振ることができる。割り振れるポイントの総数は、防具の種類ごとに決まっており、レアリティの高い装備ほどポイントは増える。

 能力防具は、店のNPCに依頼しても作成することができる。しかし、ポイントは各種ステータスに均等に割り振るというデメリットがあった。そのため、貴重な素材を使う防具の場合、生産スキルを持つプレイヤーに依頼するのが主流となっている。


「やっぱりMP多めに振るのが得策か…。」

 【王の器】を含め、コウのスキルはMP消費が激しい物が多い。MPポーションなどの回復アイテムがあるとは言え、MP最大値が多いことに越したことはない。また、彼のジョブは武器を持てないこともあり、攻撃力に能力ポイントを割り振る必要もなかった。結局、コウはMPとHPのみにポイントを割り振ったのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「タマ、【猫パンチ】」

 指示を飛ばしたコウは、MPポーションを飲み下す。2割を切っていたMPは全回復するが、また徐々に減っていく。彼の目線の先では、巨大化したタマがオークに必殺猫パンチを繰り出しているところだった。腹に肉球マークを付けたオークは、吹っ飛び一瞬でHPを削られ、光となる。

 防具を作り終えた後、彼はログアウトするまでレベリングしようと森林フィールドへ来ていた。ヨミとやっていた時のように『寄せの香』を作成し、周囲のモンスターを呼び寄せた後、【王の器】と【猫缶】スキルを発動させ、襲ってくるモンスターを片っ端から片付けていく作戦である。

 オークは中ボスであり、テイム可能なモンスターである。つまり、コウのオーラに当ててしまえば、使役することが可能だ。当初の作戦は、オークを始めとしたモンスターを配下に置き、森林フィールドで進行方向を一掃するローラー作戦を考えていた。だが、【王の器】で発生するオーラは半径1mといったところ。更に、オークはこん棒を振り回して攻撃してくるため、攻撃を回避しつつ接近し、オーラに触れさせる必要があった。一度、こん棒がオーラを掠めることがあったが、オークに変化がなかったため、モンスターが持つ武器等では効果を発揮しないことも分かった。


 最初の作戦が無効化されたとは言え、彼には相棒のタマがいる。【猫缶】スキルで高レアリティモンスターにも引けを取らないスペックとなったタマは、中ボス程度ならいとも簡単に排除していた。同時に、コウも襲ってきたゴブリンなどの低級モンスターを使役し、オークの足止めを指示する。そして、タマが1体ずつ倒すことで確実に経験値を得ていくのだった。

スキル解説

【王の器】

・MP連続消費で発動者の基礎ステータスの向上とオーラエフェクトを発生

・オーラに当たったテイム可能なモンスターは、強制的に使役状態となる

・『寄せの香』といった、後付けでテイム不可能となった状態のモンスターも使役可能

・発動者の口調、言動が変化する


【猫パンチ】

・初期モンスターのスキル

・素早い正拳突き

・かわいい

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