第三話 小鳥遊さんは真上の家に住んでるようです
前回俺の家の上階に彼女の家があるって知った。
いやー、こんな偶然ってあるもんなんだな。
「あの、大丈夫ですか?」
「ああ。大丈夫大丈夫」
確かにかなり驚いたけどどうってことない。
「それにしてもなんで同じマンションに住んでたのに気づかなかったんだろな」
ふと思った疑問を口にすると、
「えっと実は私3月に引っ越してきたばかりなので、挨拶回りした時も日曜日だったからだいたいがお母さんだったし」
へぇ。はじめて知った。
まあ別に同じマンションに住んでたからラッキーくらいだけど。
それから暫くして、マンションに着いてから彼女はこう言ってきた。
「あの、今日のお礼として少しお茶していきませんか?」
まじですか。
□■
彼女の部屋は驚くほど何もなかった。
いや、流石にほんとに何も無かった訳じゃなくて最低限の生活用品しか無かったからびっくりしたぐらい。
「お茶です」
「あ、ありがとう」
なんか緊張する。
そりゃそうかだってはじめて女の子の家にお邪魔したんだから。
「そういえばご両親は?」
「えっと父と母は仕事の都合で基本的に家に帰ってこないんです」
一瞬暗い顔をしたが、すぐにそう答えてくれた。
てかなんだったんだ?今の間。
まあ今はどうでもいいか。
「じゃあ普段は一人で?」
「はい。桜さん………友達も呼んだことがないので七瀬さんがはじめてですね」
そう言って笑う彼女。
やばい可愛すぎる!!
「改めて、今日は勉強を教えてくださってありがとうございます」
「いいよ別にどおってことないからさ」
そんな返答をする俺に「そう言ってくれると嬉しいです。」と笑いかけてくれる彼女。めっちゃ良い子!!
それから1時間くらいして。
「じゃあそろそろ帰ろっかな」
そう言って俺は立ち上がった。
時刻はそろそろ七時になる。
帰りは遅くなるって伝えてあるけど、流石にそろそろ帰らないとやばい。
「そうですか。今日は本当にありがとうございました」
「さっきも言ったけどいいよ別に。俺がやりたくてやったわけだし」
「そうですか」
そう言って彼女は一度黙ると
「じゃあ連絡先を交換しませんか?」
そんな提案をしてきた。
「俺はいいけど。ほんとにいいの?」
「はい!また勉強教えて欲しいですし」
「そういうことなら喜んで」
そして俺は彼女………小鳥遊さんとRINEを交換して別れた。
それからは家に帰って、ご飯を食べて風呂に入って寝るだけ。いつも通りのこと。
だけど今日は少し違った。
寝る前に小鳥遊さんから。
『今日は遅くまでありがとうございました!!ほんとうに助かりました!また明日よろしくお願いします!!』
そんな連絡が来た。
『また明日』っか。
こんな連絡が女の子から来るって少し前の俺に教えても絶対に信じなかっただろうな。
そんなことを思いながら俺は『おん。また明日』とだけ送って眠りについた。