第三十二話 今この時に感じる平穏
更衣室から出たものの、まだ藤原さんと碧は着替え終わっていないみたいで、外で待っていたのは玲二だけだった。
「二人はまだみたいだな」
「そうだな。玲二はどうする?ここで待っとくか?」
「まあそうだな。移動する場所も無いし」
俺はあっそうとだけ行って壁にもたれる。
今日は暑い。
たしか最高気温は35度とか言ってた気がする。
35度は十分暑い。日陰で待機していないと日焼けするし、脱水症状も起こす。
一応日焼けしないように日焼け止めクリームや、上着を羽織ってるし、健康を害しないようにはしているが、暑いのだけはどうにもならない。
ふとプールの方に視線を向けると、家族連れや友達と来てる人、カップルで来てる人など色々な人がいた。
「何してんだ?涼太。可愛い子でも探してんのか?」
「違ぇよ。ただ、たまにはこういう所に来るのも良いなって思っただけだ」
そう言いながら辺りを見渡す。
「まあ涼太の考えはよくわかんねえけどよ、でもこんな暑い日にプールに来るってのはいいよな。美人に出会えたら尚のこと!」
「お前の頭の中はそれしかねえのかよ」
ないんだろうな。
「おっまたせえ!」
「すみません!遅れました」
そんな中、急に背後から声をかけられたので振り向くと、赤っぽいビキニを着た藤原さんと、
「ど、どうでしょうか?」
すっげえ可愛い表情で恥じらいながらそう問うてくる白く、少し柄の入ったビキニを着てる碧がいた。
「えっと、凄くいいと思うよ」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
俺が顔を真っ赤にして返事をすると、碧も顔を真っ赤にして返事をかえしてくれた。
「ねぇねぇ玲二。あの二人、付き合いたてのカップルみたいなことしてるね!」
「そうだな。ああいう感じで話してる知り合いがいたらすっげえ弄りやすい」
「うっわ。性格悪!玲二のそこんとこ直したら絶対今よりはちょっとはモテるのにな」
「うっせ」
ちょっとそこ!
外野が五月蝿いよ!
「あの、涼くん」
「どうした?碧」
俺の上着の袖を引っ張りながら名前を呼んでくる碧と向き合って、
「せっかくプールに来たのですし、泳ぎませんか?桜さんは大久保さんと話してるようですし」
「わかった。じゃあ行くか」
藤原さんとなにか話してる玲二をほって俺と碧は歩き出した。
「てかお前はどうなんだよ!どうせお前もモテて無いだろ!」
「うわひっど!これでも私は何回か告白された事あるからね!!確かに誰も気に入らなくて付き合ったことは無いけど告白された事はあるから全くモテないあんたよりマシよ!」
「お前に告白?見る目ないんだな」
「は?」
うん。俺はそんな不穏な会話は聞いてない。
「どうしたんですか?涼くん」
「いや、なんでもないよ。今行く」
俺は背後で喧嘩してるであろう藤原さんと玲二の喧嘩を一切聞かないことにした。
「ちょっと待て!話しをしよう!」
「話し?話しなんてする必要ある?」
「待て!ほんとに待て!人類とは知性を持ち、互いに意思疎通が出来る。だから話し合えばきっとわかりあえるはずだから!だからその手を引っ込めてくれ!」
「くたばれ」
「ぎゃあああああああああ」
うん。俺は何も知らない。




