第二十六話 寝落ちヒロイン碧ちゃん
「すぅ……すぅ……すぅ……」
俺の家のソファーで気持ちよさそうに寝ている碧を見て思った。
どうしようこれ。
ここで寝かしたら絶対に風邪ひく。
毛布を持ってこようか悩んだが、碧をソファーで寝かせる訳にはいかない。
碧の家に運ぼうにも鍵が無いし、女の子の服を勝手に漁って鍵を取り出し、女の子の家に勝手に入るのも問題がある。
そこで俺に残された選択肢はあと一つ。
俺の部屋のベッドで寝かせるしかない。
俺の部屋は何の変哲もない普通の部屋だし、見られて困る物は何も無い。
俺は覚悟を決めて碧をお姫様抱っこする。
決してやましい気持ちなどなく、心を落ち着かせて自分の部屋に碧を運ぶ。
「すぅ……すぅ……すぅ……」
俺が運んでる間も起きる様子は全くない。
今日は疲れてたのだろうか。
きっとそうだろう。学校が早く終わったとはいえ帰って暫くしてから2人分のご飯を作り、勉強もした。
碧は基本的に早寝する人らしいからこの時間まで起きてることはまず無いそうだし。
そんな事を考えながら俺の部屋まで運び、碧を優しくベッドに寝かせる。
「すぅ……すぅ……」
相変わらず起きないが、寝顔が可愛らしく見える。
今の碧はただただ無防備で、本当の碧の一部を見せているような感じがする。
本当の碧の少し垣間見たのはあの時、碧に「ありがとう!」と言われた時以来だ。
あの時の碧の表情と言葉からは本当の碧が見えた。
別にいつも嘘をついてる訳では無いが、俺や藤原さんにも一定の距離を開けてるような感じがする。
まあ今はどうでもいいか。
「いつか本心を見せてくれたらいいんだけどな」
そう思いながら俺は部屋の壁にもたれかかって寝る事にした。
□■
「朝か」
部屋の窓から日光がさしこんでくるのを感じた俺はすぐに目を覚ました。
「すぅ……すぅ……すぅ……」
目が覚めると自分のベッドに美少女が寝ていました。
一瞬なぜ碧がここに?と思ったが、そういえば寝落ちした碧をここに連れてきて寝かせたんだったと思い出し、気持ちを収める。
そして、
「よし、碧起きろ」
比較的優しめに声をかけた。
「うーん。あと5分」
ただし碧は起きる気がしない。
俺は碧に近づいて頬っぺたをぷにぷにと弄りながら、
「おーい。起きろー」
至近距離でそう言うと、碧は目を覚ました。
「おう。おはよう碧」
「………おはよう涼くん」
まだ寝惚けてるのか、目が半開きのまま碧は言い、
「………あれ?涼くん?」
意識が覚醒してきたのかそう呟いた。
「おう。俺だ俺。目覚めたか?」
「え?え?」
凄く困惑してる。
「ちなみに言っておくが、寝落ちした碧をソファーで寝かせる訳にもいかず、碧の家に入るわけにもいかず仕方なく消去法で俺のベッドに寝かせただけだ」
余談だが親のベッドは存在しない。
必要ないもん。この家で寝ることないから。
「そ、そうでしたか。ありがとうございます」
俺の説明で意識が覚醒し、昨夜の事を思い出したのか碧は顔を真っ赤にしてそう言った。
「そういえばもう6時過ぎてるが、今日は用事無かったのか?」
「えっと。今日は桜さんと出かける予定がありましたね。すみません。寝落ちしてしまって」
「いやいいって」
そう言って、碧はお詫びも兼ねて朝食を作ってから帰っていった。




