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本作は、『ざまぁされるラノベヒロインなんてハードすぎる』の続編となります。
宜しければそちらから。
短編量なのでさくっとすすみます。
リサ・トッポデク、15歳。希少な聖属性魔法適切持ち、平民……いや、元平民。現在侯爵令嬢。病気で死んだ前世の記憶持ち。
ラノベの悪役令嬢にざまぁされるヒロイン的立場だと前世の記憶を思い出した13歳の頃、短い一年という準備期間を必死で足掻いた結果、想定外の方向に進みざまぁも断罪も回避。まぁ良い結果だったと言えよう。……言える、はず。
現在は、ゲーム時間軸に当てはめるならば二年後、ラノベ終了から一年経つが、ここまで怒涛の展開だった。
悪役令嬢ではなくラノベ主人公、第一皇子アルファート殿下の婚約者ステファーナ侯爵令嬢の親友、第二皇子ロイスダール殿下の婚約者、トッポデク侯爵家養女という肩書きを得た。
付属して、ステラ(ステファーナの愛称、アラサー転生者)令嬢と取り巻き(攻略対象)やアル(アルファート殿下)の妹的扱いで甘やかされ、ロイ(ロイスダール殿下)の溺愛、更に王家とトッポデク侯爵家の面々から手厚い庇護までついてきた。公表されていないはずなのになぜかステラの命の恩人であり世界を救った少女として崇められる始末。
ついでに王妃教育までされている。噂に違わぬキツさとステラの「逃がすもんか」執念が凄いが、お得意の治癒魔法があるから倒れることはない、が。
……解せぬ。
第三皇子が消え継承権争いもなく、順当にアル陛下が次期国王ステラが王妃。何故私が……
ロイか、ロイのせいだな。第二皇子だ、仕方ない。
求婚とも皇子とも知らず迂闊に受けてしまい戸惑いはしたものの、恋愛感情を抱くまで時間はかからなかった。外堀は完全包囲され、イケメンでストレートな言葉で愛を囁き続ける優しいロイに墜ちるなという方が無理というもの。裏では腹黒っぷりを遺憾無く発揮しているが、それはリサだけは知らぬこと。
さて、少し長くなっているが、もう少しお付き合いを。
ここからが本題だ。
勘違いと空回りから成り立っていたヒロインリサ。
フラグから逃れやっと幸せを手に入れたかと思いきや、続編に突入。続編というより番外編らしいが。
ステラのさくっと解説によると、ディストゥール学園の最上級生として新入生を迎える日にスタートするらしい。
新たなヒロインは隣国第五皇女。もちろん転生者。留学先のディストゥール学園で第二皇子と出会い互いに一目で恋に落ち、二人で協力して隣国の内乱を治め王位に就きめでたしめでたし。
……待ってほしい。
第二皇子とはロイを示し、私の婚約者。
さてお待ちかね、仮定してみようの時間だ。
1 続編フラグ乗り → 婚約解消 → 身を寄せる場所を失う
2 続編フラグ折り → 隣国内乱継続 → 路頭に迷う人続出、下手をすると戦争勃発
3 逃げる → 無理。
4 何とかして内乱も婚約破棄も避ける
言わずもがな、4しかないよね、うん。
とりあえず、皇女がどう出るのか懐かしの噴水をステラと二人でこっそり覗き見。令嬢にあるまじき行動ではあるが誰も咎めなかった。
おっと、来た来た黒髪黒目の女の子。きょろきょろしてロイが隣に来たタイミングで
「いやーん、転んじゃったぁ。いったぁい」
……そうきたか。もうハードモード吹っ掛けるのやめてもらえませんかね?神様……
とにかく自国愛に溢れた大人しい皇女のはずが、自分勝手ないんら…失礼、ロイにラブオーラを向け積極的に行動する皇女に。
前回の自分の失敗を生かし、ステラと二人で早々に接触を試みた。
「率直にお聞きしますわ、第五皇女セーラエリル様。あなたは転生者ですわね?」
「その通りよ。セーラって呼んでいいわ、元悪役令嬢ステラ。それにしても何で生きてるのよ、ざまぁヒロインリサが」
「セーラエリル様、そこまでご存知でしたらなぜそのような行動をとられるのでしょうか?」
「そのような、ってどんな行動よ?」
「品の欠片もないマナー、わざとらしい上目遣いに誘惑行為」
「全部あなたがしてたことじゃない、ざまぁリサ」
「いいえ、そのような覚えはございませんが」
「じゃあなんでロイきゅんはあんたの婚約者なのよ?あんたがいるせいでロイきゅんがわたしのものにならないじゃない!わかる?推しのいる世界で推しとラブラブ贅沢に暮らせると思ってたのに、上手くいかないもどかしい気持ちが。あなたにわかるわけ?」
「それは…」
「まぁいいわ、ロイきゅんとのラヴに立ち塞がる試練ってことよね。乗り越えてみせるんだから!」
ガッツポーズをして去る皇女セーラ。
上手くいかない気持ちも、もどかしさも理解できる。強制力も破滅フラグ折りも経験してきたからこそ、その気持ちがわからないとはとても言えず複雑なステラとリサだったが
「「ロイ"きゅん"はないわ〜」」と同時に言ったのは笑えた。
仮にも未来の王族の一端となる二人は隣国を放置するわけにもいかず、アルとロイ、国王ゴディール陛下に王妃シシール殿下、それぞれの侯爵家まで巻き込み内乱を治めるため動き回った。ステラとリサは更に王妃教育と学園の授業までこなし、それはもう治癒魔法が大活躍。中毒か、というくらい皆にかけまくり魔力量大幅アップ。
何とか悪の根元隣国王と王妃をその座から引きずり下ろし、六人いる皇子のなかで一番優秀な第一皇子を王位に。また、賢王と名高いゴディール陛下が手助けしたことで他国や五人の皇子からの横槍も入りにくいだろう。それにしても皇子皇女の多い国だ。また、ここにきてやっと王と王妃の名前が出たことは気にしないで欲しい。
騒動が終息したのは恒例年度末ダンスパーティー一週間前だった。
因みに第五皇女セーラエリルは「国が大変なんですよぉ」「帰れないです、どうしたらいいのぅ」等ロイに隙あらばすり寄るだけの日々。下手に動かれると面倒な事態になるのが目に見えていたので全員一致でロイに押し付けたが、その皺寄せはリサにいった。溺愛にも更に上があったんだ……と呟き、遠い目をしつつも真っ赤に染まるリサを全員が生暖かく見守った。
今回もあっという間に一年が経過。
ドレスは侯爵家が用意してくれた最上級のもの。輝く宝石付きのティアラにネックレス、イヤリングまで。着飾るのが苦手な上、高価すぎて申し訳なさでいっぱいだが、義父母にはもっと頼って欲しいと泣かれた。ステラにはちっぱい(ちっちゃい胸)を隠すにはこれくらいしなきゃ、と言われた。失礼千万、これでも成長してるんだ、と胸を張ってもさらに成長したステラには敵うわけもなく。軽口を叩ける仲になれて嬉しい。
ロイにはとにかく誉められた。
アル「甘過ぎて溶けそうだ」ステラ「リサは可愛すぎるから仕方ありませんわ」ロイ「アルもステラが可愛くて他の男に見せたくないって言ってたくせに、このムッツリヘタレ」アル「なっ」リサ「アルもロイも格好いいよ。ステラ、とっても綺麗」
皆に抱きしめられて完了。はい、時間です。
王族のアルとロイ、エスコートされるステラとリサは最後にパーティー会場入り。するや否や……
「リサ・ナブリューシュ!ステファーナ・……なんだっけ、とにかく、断罪してやるわ!」
片手は腰に、片手はびしっと人差し指を立ててふんぞり返るのはヒロインではなく悪役令嬢であるべきだ、と思ったステラとリサだった。
pt評価誤字報告等々、嬉しくて小躍りしちょります。
本当にありがとうございます!
調子に乗って書いたこの続編、少しでも感謝と楽しさを伝えられればの気持ちを込めて。
後編は来週末までに。