ファッションヤンキー、蜘蛛退治へ
「ほぉ、洞窟にねぇ。」
無事ドヴァータウンについた私はそのままその足で、冒険者ギルドに向かい良さそうなクエストを探していた。ちなみに特に用事のない街中では犀繰にはインベントリに収まってもらっている。
さて、数ある依頼の中で見つけたのがポートガス街道側とは反対に位置する門から向かえる洞窟にいる大蜘蛛を退治してほしいと言うものだった。
女子的には蜘蛛に対して嫌悪感を抱いた方がいいのかもしれないけど、残念怖くないんだなこれが。Gともなればビックリはするけれども。
という訳で、この依頼を受注しましょうそうしましょう。ポートガス街道はやり切った感あるしね。そろそろ新しい冒険を求めてもいい頃でしょう。強くもなっていることだし?あぁ、ポーション買うのを忘れないようにね。……状態異常回復するポーションも買っておこう、念のためにね。
さて、ポーションも買ったしドヴァータウンの門から出たしで、出発したいんだけど……見られてますね。それも犀繰出してからの視線が痛い。分かっていたことではあるけど。だとしても、私は犀繰を出すことには躊躇しないのだ。ヤンキーよ図太くあれ。
まぁそもそもの話、ぱっと見普通のヤンキーな私がゴッツイバイクに乗ってエンジン音吹かせてるんだ、そうそう話しかけてはこまい。私だってそんな人話しかけたくないもん。HAHAHA――
「あのー、すいません。そのバイク格好いいですね、どこで手に入れたんですか?」
話しかけてくるやつおるんかーい。あなた度胸ありますねぇ……他のプレイヤーからも「うわ、行った」「勇者かよ」なんて声が聞こえる。私に話しかけると勇者とまで言われるのか。私は魔王か何かですかねぇ?
うーん、このまま走り去ってもいいけどそれはそれでなぁーってことで、宣伝しておこうかな。
「あァん?これぁ情報屋のおかげで手に入ったブツじゃけぇよ、聞くならあいつに聞きんさいや。それで商売しとる奴じゃけぇ。」
「情報屋?」
「じゃあのぉ!」
別れを告げると私はさっさとハンドルを回し犀繰を発進させる。あの様子だと彼らは情報屋の方に向かってくれるだろう。んでもって情報屋はゴーレムバイクに関しての情報を売る。いやぁいいことした。――そもそもレアアイテムであるゴーレムの金核が無いと制作自体が出来ないけどね!そこまで教える義理は私には無いよね!
にしてもポートガス街道と違ってこちらのあんまり整備されてないんだなぁ……ちょくちょくぼこぼこしてるよ。しかしそこは犀繰、ものともしませんよ。
「犀繰、どれぐらいで着きそうなん?」
『5分ほどだ、姉貴。ところで進行方向にパープルスライムが見えるが。』
その言葉に前方を見てみると確かにスライムが。その名の通り紫色で、ぽよんぽよんと跳ねながら移動する様は可愛らしさすら覚える。へぇー、紫ってことは毒なのかなー、へー
「轢いてOK」
『了解だ。』
犀繰は急には止まれないからね、進行方向にのこのこもといぽよんぽよんと出てきた己を恨むがいい。パープルスライムは抵抗する暇も与えられずさながら水風船のように弾けとんだ。
その後も次々とモンスターが現れて轢き飛ばされる。先程のパープルスライムをはじめ、ダッシュトリッチ、ゴブリンナイト、ショットマンティスとポートガス街道では見なかったモンスターが犀繰の被害に遭った。ダッシュトリッチはWQ以外でポートガス街道では見なかったから元々はこことか別の地域のモンスターなんだろう。
その中でショットマンティスという人間サイズの体まさに刃物な鎌を持ったモンスターだけは轢かれる前に斬撃を飛ばしてきたが、私の命を刈り取ることは出来ず、プチっとね?んでその際に
"ターンアタックのレベルが1上がりました。"
忘れていたけど君、レベルという概念存在してましたね。えーっと、上昇値10%だったのが13%になってる。打点が上がるのは嬉しいね。上昇回数は……一回のままかぁ。そこはしょうがないかな。
『姉貴、見えてきたぞ。』
「おう。」
おっと、そうこうしているうちに洞窟に……んんん?確かに洞窟は洞窟なんだけど……入口に目一杯に蜘蛛の巣張ってない?
このまま突っ込んでしまえば犀繰のボディに蜘蛛の糸が絡んでしまう。それはちょっと嫌なので、入り口直前で犀繰から降りて確認する。触れてみると……おおう、粘々するねぇ。突っ込まなくて正解だなこりゃ。
しかしこんな状況じゃそのままだと通れないなぁ網目も小さいしそこから通れそうもない。よし、斬っちゃおう!




