ファッションヤンキー、PKと闘う
さてとさてと、挑発して相手が乗ってくれたところまではいいんだよ。その気になってくれて私に狙いを定めてくれたみたいだからね、うん。
ど う し よ う か。
状況としてはリヒカルドとピンキーちゃんを盗賊から守った状況と似てはいる。けど相手が違う。ある程度の力を持ったプレイヤーに倒されることを想定されたNPCとプレイヤーとでは天と地ほどの差がある。言ってしまえば、このPK達1人1人がコング・コング・コングとサシでやれる程の実力があるかもしれないということだ。
仮にそのレベルだとして、1人2人ならまだ行けたかもしれないけど――
「掛かってきんさいや。それとも?急に俺ただ1人と戦うのが怖くなったんか?」
7人もいちゃあなぁ……最悪コテンパンに負けるかも。恥ずかしいから出来るだけ避けたいけどね!
「上等だよ糞ヤンキーが!」
うわぁ、あの金髪PK、面白いくらいに簡単に乗ってくれたよ。そんなに目を見開いてまぁ……1人で向かってきて助かったけどね!
奴は片手剣を振り上げて私に迫る。特段武器に詳しくない私だけど、奴の持っている獲物は上等そうに思えない。であればそのまま受けても大丈夫かな?私は犀繰から降り、一切の防御行動をとらず、笑みを浮かべたままその攻撃を受け止める。……最悪踏ん張り所があるし死にはしないでしょ!
「軽いのぉ。そんなんじゃあ俺の命には届かんのぉ。」
「はぁ!?なんでっ……!?」
そんな驚かれても。あなたの思っている以上に私の防御力が高いからじゃないですかねぇ。それにしても、全然余裕で助かったよ。それに……奴さん驚いたまま私から離れることを忘れちゃってる。捕まえてくれと言っているようなもんじゃない?では有難く。
「捕まえた。」
「なっ!?てめ、コラ離せっ……!」
金髪の襟をつかみ、リフトアップで引き上げる。これ解除されたことがないけど私の予想では相応のATKが無いと無理だよね、私と匹敵するかそれ以上じゃないと。もしくは私の力を弱めさせるとか?ま、少なくともこの金髪自信にその手段は無さそうだ。
「おいっ!見てねぇで助けろ……っ!」
「す、すまん!」
おっと、仲間に助けを求めちゃうか。他に方法ないもんね。ただねぇ、私も1人じゃないんだよねぇ。勿論後ろの彼らじゃないよ?人でもないけどね。
「犀繰。」
『応。』
「暴れてきんさいや。」
『応!』
私の言葉をキーに今の今までバイク状態で黙視を貫いていた犀繰が可動を始める。唸り声のようなエンジン音を上げ、3本のタイヤを回す。変形――ではない。まずはバイク形態のまま、一番近くにいたPKに突っ込む。え?轢き逃げアタックはプレイヤーにしないって?ほら、私犀繰に乗ってないからセーフ。あ、轢いてからすぐに近くの別のPKに接近し人型に変形した。
そういや、初めての人型での戦闘かー。一体どう戦う……うん?両腕に何か見覚えのあるぶっとくて尖ったものが?え、あれまさか……リノギガイアの角なの!?2つあるってことは真っ二つにしたの!?それにあの武器の形態、あれだよあれ。パンドラじゃなくて、パイロキネシスじゃなくて――そう!パイルバンカー!
『対象を殲滅する。』
「はぁっ!?ロボぶへぁ!」
おっと、ロボが現れたことで驚きたかったんだろう。しかし残念だったな、そいつはゴーレムです。さて、お腹にパイルバンカーの重い一撃を受けたPKだが、流石に刺し貫くなんてエグイことにはならず、普通に吹っ飛ばされた。その光景に私は、自分がリノギガイアに吹っ飛ばされたシーンを思い出した。あの角使っているだけあるわぁ……
にしても轢き逃げアタックにパイルバンカー双方ともに一撃でキル出来るという訳じゃないのね。
あーあー、他のPK達も茫然としちゃって。金髪はそもそも私に掴まれてるの忘れてない?
「いいんかぁ?よそ見しとってよぉ!」
ぶん投げさせていただきました。金髪PKが向かう先には仲間の1人であろう目元だけ隠すマスクを付けた女プレイヤー。あー避けちゃったよ。綺麗に避けられたね。無駄な動きのない避け方、私には到底真似の出来なさそうな感じだよ。
「あらあら、人を投げつけるなんて。プレイヤーだと思ったらモンスターかしら?」
「寄ってたかってプレイヤー襲うお前らに言われたくないのぉ。」
「よく言うでしょう?一番怖いのは人だって。」
カラカラと笑う仮面女。なんだろ、この人ヤンキーRP関係なしに好きになれそうにないなぁ。なる必要は無いんだけどさ。
「一応聞くんじゃけど、何でこいつ等襲ったんなら。」
後ろに向けて親指を指し被害者である少年少女プレイヤーを指し示す。
「仲良さそうだから。じゃあダメかしら?」
「なんじゃあ、お前ぼっちかぁ?」
「あら、あなたと一緒にしないで欲しいわ?」
「ハッ!俺ぁ他とつるまんだけじゃ!」
だーめだ、この人と話してると疲れる。こういう手合はさっさと片付けるに限るよね!堅泥団子を仮面女の顔面に向かって投げつける。後私は断じてぼっちじゃない!フレンド結構いるんだからね!?
あぁっくそっ!また避けられたよ!自信があったんだけど――そうだ!
「オラァ!くそアマァ!」
「あら何かし……っ!」
威圧眼を発動。私の呼びかけに無警戒に視線を向けた仮面女は私の瞳を直視する。そして言葉を紡ぎ終わる前に仮面女の体が痺れ、動かなくなる。
「犀繰!轢け!」
『了解だ、姉貴。』
残ったPKの相手をしていた犀繰が私の指示に従い、対峙していた敵を無視しバイクへ変形し仮面女に迫る。
仮面女と私との距離では近づく前に拘束が解除されてしまう。でもバイク状態の犀繰なら大丈夫!一気に距離を詰め奴を上空へ――んぇ!?仮面女がボロボロに崩れた!?
『目標、喪失。』




