ファッションヤンキーちゃん、ドライブで見つけた
「言えってのあのアホンダラぁ!」
『燃料50パーセントだ、姉貴。』
私は今、猛烈に怒っていた。理由はというと、納品時に犀繰に燃料を半分以下しか入れてなかったクリカラに対して。そしてそれを想定せずにそのまま受け取っていた自分に対してだ。この件についてはすでにクリカラにメッセージを送りその返答は「携帯でも車でも納品時にエネルギー半分はよくあるからなー再現したぞー」とのことだった。再現する必要ないよね!?
そんな訳で今私は犀繰に燃料をつぎ込んでいる訳なんだけど……これがすべてのアイテムを投入しても燃料増加分が一定ではないことが判明した。
言ってしまえばレア度に比例するみたい。と言ってもこのゲームにレア度という数値は存在していない。入手するまでの手間?が掛かるアイテムの方が燃料とし機能するようだ。証拠として、ゴブリンの棍棒とダッシュトリッチの羽毛とでは燃料増加量が2倍ほど違った。
――となればだよ。私の手持ちの中で、レア度の高い、尚且つあまり役に立たないアイテムと言えばと思いついたのは……ブトーレントルーパーのフィギュアな訳なんだけど。これを犀繰に見せた所
『これは良い燃料になる。だが、姉貴本当にいいんだな?あとで返しても言われても遅いぞ?本当に本当にいいんだな?』
なんて言われてしまえば、引き下げざるを得ない。私はそういう「捨てちゃうの?」的な言葉に弱いんです。かと言って私の手持ちのほかに手の込んだもしくは入手に苦労した物なんてない。あぁ、堅泥団子は苦労したかな。でもあれは投擲に使うし……という訳でまじで持て余したゴミアイテムを犀繰に突っ込みました。そしてそこで私は気づいた。――犀繰はこれ、高性能ゴミ箱だと。
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今後一切使い道のないアイテムをつぎ込み、ようやく燃料満タンになった犀繰に乗り込み私はポートガス街道を走り回っていた。と言っても道から外れた荒れた所だけどね。最初はガクンガクンと振動が辛かったけど、ものの数分で慣れた。
でだよ、少し走ったところで見つけちゃった。
「のぉ、犀繰。あれ、何じゃと思う?」
『解析――渡界者同士の戦いだと判断する。』
「どっちもプレイヤーか……」
前方方向に複数の人間を発見した。数は12人ほどかな?その中で4人ほどが背中を預け合って残りの8人と対面している様に見える。少なくとも、合同演習とかお互いが了承し合って戦っているようには見えないね。その4人、囲んでいる奴らよりも幼い感じがするし。
無視するのは簡単な話だけどこういう不義理?なものを見過ごすのも私の中のヤンキー像からして如何なるものか。もしかしたら私同様どちらもRP勢かもしれないけど――手出そ。
「犀繰、攻撃は耐えられるんか?」
『ある程度なら平気だ。厳密には姉貴の攻撃力の半分以下なら余裕だ。』
「そうか。」
何故私で例えたかは今は問わずにいよう。自慢ではないが、私の攻撃力は高い方だと思う。その私の半分以下の攻撃力を耐えられるのであれば十分だろう。という訳で割り込ませていただこう!この爆音ともいえるエンジン音だ。私が向かう方向の全てのプレイヤーは私の存在に気付いた。最初は「なんだあれ」みたいな表情だが、その顔が徐々に青ざめていくのが見える。そりゃそうだ!予想だにしないゴツイバイクがそちらに向かっているんだからねぇ!
「よぉ、こんなところで祭りかぁ?」
相対する2組の間に入り込み不敵に笑う。――あの、犀繰さん?別にドリフト走行して割り込まなくてもよくない?格好良さはあるけど私の心臓バクバクよ?ヤンキーRPの意を汲んでくれるのは嬉しいけど手加減して?顔に出さないだけ褒めて?
「な、何だお前?」
「定番の台詞じゃのぉ。何じゃあ、『聞いて驚け!』とか『なんだかんだと聞かれたら』とか言って欲しいんか?懐かしいのぉ」
さて、改めて周りを見渡す。なるほど?大人数の方は大人とも言ってもいいほどの体格。対して少人数は大人数と比べて背が低い。尚且つ女の子もいる。――まぁその誰よりも私の背が高いんだけれども。――この状況を見るに、PKとかそういうの?何だやっぱり祭りじゃん!
「で?何しとんなら。喧嘩ならまぜぇや。」
「そ、そんなんじゃねぇよ!ただ遊んでるだけで」
「嘘です!その人たち一方的に僕たちを囲んできたんです!」
「ほぉん?」
やっぱり?実は小さいプレイヤー達が悪い方で囲んでいる奴等が復讐か何かで囲んでいるって可能性があったけど合ってたみたいだね。ほら、このゲーム性別以外は詐称できるから……私も目とか詐称したから……
「こいつ等はこう言っとるけどお前らはどうなん?」
「あ゛ーうっぜぇ!勝手にしゃしゃり出やがって!おい!この変なヤンキーもやるぞ!」
「誰が変なヤンキーじゃゴルァ!!!」




