ファッションヤンキー、ゴーレムを見て回る
ドア開けゴーレムもといドア君の脇をすり抜け、家の中へとお邪魔し、声には出さなかったけど結構驚いた。
そこら中にゴーレムやそれらのパーツと思しき物体があるのだから。と言っても散らかっているわけではない。腕のパーツ、脚のパーツ、胴体てな感じでちゃんと整理整頓されていた。完成されているゴーレムも大きいのもあればフィギュアサイズのものもある。これ全部クリカラって人が作ったの?凄いなぁ。
「で、そのクリカラはどこにおるん?」
「ここだぞー。」
「うゎお!?」
クリカラを探すためにキョロキョロしていたところ、いきなりゴーレムのうちの一体が声を発しながら動いた!?思わず声が出ちゃったけど……あ、これゴーレムじゃなくてドワーフだ。髭は無いけどずんぐりむっくりした男性ドワーフだ。ゴーレムの中に紛れていたのか。
「お前、そうやって驚かせるの好きだよなぁ。」
「結構引っ掛かってくれるからなぁー。やりがいがあるぞー。そいつは大丈夫だったけどすっころぶ奴は見てて面白いぞー。で?そいつがゴーレム作って欲しいって奴かー?」
のんびりした口調の癖に案外黒いなこのドワーフ。
「おう、俺はオウカ、職業はヤンキー。よろしく頼むわ。」
「ヤンキーが職業とは一体……?まぁいいかー。俺はクリカラ。職業はゴーレムクリエイターだぞー。」
クリカラは私に手を差し出し握手を求める。……いや、普通に届かないんで私屈みましたとも。子供と握手してるみたいだなぁ。相手ドワーフだけあって大人な顔なんだけど。でも手のひらはがっしりしてるなぁ。パックンさんの手もこんな感じなのだろうか、ぷにぷにしてそうだけど。
「でー、作るのは構わないんだがなー。いいのかー?お前の持ってる金核高く売れるぞー?特に俺にー。」
「お前が買うんかい。じゃけど今特に金に困ってるわけじゃないけぇのぉ。作ってくれや。」
「ちぇー、金核はもう一個欲しかったんだけど仕方ないかー。」
「ん?お前もう金核持っとるんか?ワールドクエストでゲットしたんか?」
「いいやー。運よく普通のクエストでレアドロしたんだー。そしてそこから俺のゴーレム沼が始まったんだー。」
遠くを見ながらもへらへらと笑うクリカラはどこか不気味だった。それは知り合いであるはずの情報屋も感じたようで「えぇ……」と引いていた。
にしても金核ってレアドロップで落ちるのね。情報屋が食いつかないあたり既出の情報なんだろうけど。そもそも私通常フィールドでゴーレムに遭遇したことなかったわ。
「じゃあまずは俺の作品見てみるかー?欲しいタイプのものがあったら言ってくれー。」
「あ、それならお前が金核使って作ったゴーレム見せてくれんか?」
「おー、トリにとっておこうかと思ったけどいいぞー。」
そう言うとクリカラは私たちが入ってきたドアと反対側に位置するドアの扉を開けた。ん?待て待て。
「ドア君は使わんのんか?」
「ドア君は玄関専用だー。」
「もういらんくないかそれ?」
「そう言うなー。ドア君は銅核で出来てるからなー。難しい命令は出来ないんだ―。」
あぁ、ゴーレムの金核のテキストに書いてあったけど、銅・銀・金・白金でランク分けされていたんだったね。上がるにつれて上級のゴーレムが動かせるとはあったけど、ドア君は下級のゴーレムなのね。まぁ戦えそうも無いし……
っと、それよりも金核のゴーレムだ。一体どんな感じのゴーレムなんだろうか。やっぱりリノギガイア並みにデカいのかな?
「これが俺の最高傑作。"シュバルツ"だぞー。俺は直接戦う力がないからなー。こいつがメインウエポンだー。」
それはゴーレムと呼ぶには何というかとてもスマートな見た目をしていた。シュバルツ……確かドイツかそこらで黒を意味する言葉だっけ?その名に違わない黒い鎧のような体をし、兜からは赤い相貌を覗かせていた。……いや、これもはやゴーレムじゃないよね。これどう見たって――
「ロボでは?」
「分類ではゴーレムだぞー。」
「やっぱりみんなそうツッコむよな。俺もそう思う、誰だってそう思う。」
情報屋もそう思っていたのね。
だってそうじゃん!ドア君もバンルも土色の体にずんぐり体型だった。その最高傑作もおんなじ感じだと思うじゃんと思ったけどそういや、迎えられた部屋にもフィギュア体型のゴーレムあったわ。
なんてことを考えていると、シュバルツから音が聞こえクリカラからシュバルツに視線を戻した時、何かシュバルツが私の前に立ちはだかっていた。Why?
『おはようございます、マスター。……こ奴は敵ですか?』
「え、喋れるんかこいつ。」
「喋れるぞー。シュバルツ、そいつは俺の客のオウカだー。失礼は許さないぞー?」
『申し訳ございません、マスター。この前討伐した盗賊に近い顔立ちをしていたもので。』
失礼は許さないって言われた割に失礼なこと抜かしたなこのゴーレム!?おい情報屋、肩を振るわせるんじゃあない。お前絶対笑ってるだろ後で憶えとけよお前。リフトアップでイケてるお父さん風ジャイアントスイングしてやるからなぁ!?
『失礼いたしました。オウカ様ですね。認識いたしました。後ろの方は情報屋様ですね。』
「久しぶり、シュバルツ。」
シュバルツにも情報屋で憶えさせているのか、徹底してるなぁ……それにしてもロボットみたいなゴーレムねぇ。ふむふむ。ロボット……もうちょっと他のも見てみようかな。
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その後もシュバルツ以外のゴーレムも色々見させてもらった。お茶汲みゴーレム・料理ゴーレム・剣型ゴーレム・目覚まし時計ゴーレム・ミニマムゴーレム・高い物取る用ゴーレム・映像投影ゴーレム・湯沸かしゴーレム(やかんを頭に乗っけて熱で温めるだけのゴーレム)などなど……頭がいいのか悪いのかよく分からないゴーレムがたくさんあった。
「大体こんな感じだぞー。おすすめはやっぱりシュバルツのような戦えるゴーレムだぞー。」
『おすすめです。』
シュバルツよ、お前自身もお前自身を勧めるのか。それほど自分のスペックに自信があるという現れなんだろうけどさ。
よし、私が作ってもらいたい物。それを再現できるかできないか、まずはクリカラに聞かなきゃならないね。
「のぉ、クリカラ……お前、変形ギミックとかは出来るんか?」
なんとなーく、オウカの欲しいゴーレムが何か分かりますかね?




