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ファッションヤンキーちゃんのVRMMO記  作者:


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ファッションヤンキー、作戦を実行する

「ふんぬっ!!」


 先ほど同様、突進攻撃を仕掛けてきたサイ型ゴーレムを真正面から受け止める。いや、止め切れてはいない。どれだけ力を込めても、どれだけ踏ん張り所やリフトアップを使用しても一向に止まる気配は無いし、持ち上がるなんて以ての外だ。

 ただ、止めることは出来なくても勢いを殺すことは出来る。現に奴の突進スピードは落ちている。そしてこの隙に――


「"爆弾矢"。」

「"ウォーターショット"!」

「"ウィンドカッター"!」


 スピードが遅くなったことで防御力が低下したゴーレムの横っ腹に玄道さんが集めてくれた私以外のプレイヤーが攻撃を仕掛けてくれる。ゴーレム……所謂ロボットみたいなものだからか、いまいち弱っている様子は見受けられないが、接触部分から伝わってくる振動や、攻撃の音から奴も少なくとも無傷ではないはずだよね。

 ただねぇ、ダメージが通るのは良いんだよ。問題はこの後なんだよ。


「あ、駄目じゃ。」


 2回目だからか、何となく察した次の瞬間、私の体が一気に持ち上がり、空へと打ち上げられた。

 うーむ、それこそ2回目だから恐怖心は薄れてはいるけれど、やっぱり怖いなぁこれ。下からも「吹っ飛ばされた―!」だなんて聞こえる。

 あ、下降し始めた。落ちたらまた踏ん張り所でHP1になって回復しなきゃなぁ。……にしても踏ん張り所制限無いのヤバいよね。全快できるポーション持ってたらゾンビ戦法できるじゃない。折角だから活用させてもらうけどこれ、修正されるよね。

 あー地面近くなってきましたね。じゃあ衝撃に備えまーす。今回は仰向けに落ちて受け身を試してみよう。中学の体育の授業で習ったからね、まさかこんなところで役に立つとは――


「ぶふぇっ!」


 ま、そもそもあんな高いところから落ちて受け身もくそも無いんだけどね!!!まーた瀕死だよ私!さっきと変わったところって地面じゃなくて青空が見えるだけじゃん!綺麗ねー!

 おん?足音がしたと思ったら視界の端からニョキっと鉄色のヘルムを被った何某が私を見下ろしている……?


「おーう、大丈夫かヤンキー。」


 ヘルムから聞こえたのは男の声。なーんだ、こういうのって大抵可愛い女の子って割と相場が決まってたりするんだけど……いや、んなこと言ってる場合じゃないわ。

 声と同時に差し出された革の手袋が装着された手を掴んで起こしてもらう。


「おう、助かったわ。」

「気にすんな。俺達の方こそ助太刀が遅れちまったからよぉ。」


 そう言ってヘルムに守られて掻けないはずの後頭部をポリポリと掻く仕草をする全身フルアーマーの男。私よりも少し高いくらいか……でもガタイが大分いい。

 見た目もそうだし助太刀と言っているあたり玄道さんが探してくれたゴーレムを止める役割を担ってくれる人なのだろう。む、後ろにも何人かいるなぁ。皆揃ってフルアーマーだけど……目の前のこの男だけどこか鬼を連想させるような角やら棘が付いている。


「俺はオウカじゃ。早速じゃけど、何かあいつを止める有用なスキルはあるんか?」

「俺は鉄心だ。使えそうなのは、"アンカー"っていう足と地面を固定するスキルだな。あとはこの……っ!」


 鉄心は背中に背負っていた大盾を難なく持ち上げ私との間に突き立てる。おおう、ちょっと地面揺れたよ。

 おっと、話してる間にポーション飲まなきゃ。こうしてる間にほら、まだまだ距離はあるけどゴーレムが何かを探すようにキョロキョロし始めちゃった。


「俺の自慢の盾でな。何とこいつにゃあ"再生"スキルが内蔵してあって壊れても直っちまうんだよ。後はまぁ……何個か、な。」

「おう、それだけ教えてくれりゃあ十分じゃ。俺のも言おうか?」

「いや、何となく分かるから言わなくてもいい。だが……その即死級の落下なのに生きてるってのはタンクとしちゃあ気になるけどな。」


 あぁ、踏ん張り所の事か。うーん、実のところ別に私が頑張って習得したという訳じゃないんだよねぇ。竹輪天さんのこの装備のお陰なだけだし。でもま、別に教える必要はないけどね。


「そうじゃのぉ、俺ほどになりゃこれくらい楽勝じゃけぇのぉ。お前も精々気張れや?」

「ま、そう簡単に教えてもらえるわきゃねぇか。ハッハッハ!おっと、後ろのは俺の知り合いだ。まぁ俺ほどじゃねぇけどいねぇよりかはましだろう?」

「ちょ、鉄心さぁん!アンタたちと比べないでくれよ!?」


 おっ、後ろのフルアーマーズの1人が悲鳴のような声で反論した。ん?待て、アンタたちって私も含まれているの?……いや、私も言うて普通じゃないな。

 だけどこんなに集まってくれたのは僥倖だ。これならば先程よりも時間を稼げるかもしれない。そしてその機会はすぐに訪れることになる。


「おう、来たようじゃのぉ。」


 ズンズンと地響きを鳴らし近づいてくるサイ型ゴーレム。その目は確実に私を捉えている。ゴーレムに注目されても別に嬉しくないんだけれどねぇ。


「流石2回受けただけあって慣れてるねぇ、見ろよ恥ずかしながら俺も震えてきたぜ?」


 いや、言うて私も怖いよ?こうして平静を保っていられるのもヤンキーRPをしているからこそだからね?だーれが車よりもデカい物体が迫ってくるのに平静でいられますか!だけど私は強がらなければならないのだ!


「怖いなら隠れとけぇや。俺一人でもやり切るけぇよ!」

「ハッ抜かせ!ここで逃げちゃ鉄心の名折れだってんだ!」

「あ、すいません鉄心さん俺逃げたいです!」

「「「テメェだけ逃がすか!死なば諸共じゃあ!」」」


 いや、フルアーマーズ仲良くしろよ!

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