ファッションヤンキー、新たな力を手に入れる
背中合わせに戦うソレイユは、私の後ろに回り込んでいた盗賊2人を相手取る。盗賊の苦し気な呻き声が聞こえるから劣勢ではないみたいだね。
さ、私は正面の5人……待って私の割合多くない?少人数なら相手出来るって2人までなの?
とはいえ、無理させて住人を死なせてしまうのはよろしくない。プレイヤーである私達なら教会で復活できるけどこの世界に生きている住人はその限りではないかもしれない。今度、そのあたりシャドルに聞いてみよう。
でも今は目の前の盗賊を倒さねばなるまいね。とりあえず、すぐ近くの盗賊を木刀で突く!鳩尾にクリティカルヒットし、盗賊は悶絶し倒れる。
"レベルが1上がりました。"
"レベルが上がったことにより、ヘッドハンマースキルを習得しました。"
"喧嘩術のレベルが1上がりました。"
"喧嘩術がレベル2に達したことにより、一部ステータスが上昇。リフトアップスキルが解放されました。"
このタイミングでレベルアップ!?いや、でもコング倒してから結構新エリアの盗賊倒したもんね。1レベル上がっても別段おかしくはないか。
加えて喧嘩術のレベルも上がってATKが増えたみたいだし、スキルも2つ増えた!
戦闘中だけどちらっとだけでも確認しよう、後でじっくり見るから一瞬だけ!……オッケー把握した!
新規スキルのテキストを流し読みし大体の効果を把握した私は先ほど沈めた盗賊に近づき奴の服を掴んで……持ち上げる。
おぉ、片手で重みを一切感じることなく、軽々と持ち上げることが出来た!
盗賊の体格はしっかりしたもので普通であれば、片手で持ち上げるなんて不可能だろう。でも今しがた手に入れたリフトアップは、それを可能とするスキルみたいだね。いやほんと、軽ーい羽毛みたーい。片手でぶんぶん振り回しても全く辛くない。
そして投擲スキルとの組み合わせで持ち上げた盗賊を投げつけることも可能なのだ!
「だらっしゃあ!!」
掛け声とともに投げつけた投擲武器もとい盗賊は真っ直ぐ飛び、人槍と化したその体は仲間の盗賊をくの字に変形させ、両者ともに吹っ飛び気絶した。
嘘のような出来事に、他の盗賊たちは目を剥き吹っ飛ばされた仲間を見つめ、ポカーンとするがそんな呆けていていいわけないだろう!戦闘中だよ今は!
呆けているうちに、別の盗賊に迫りこいつも持ち上げる。投げた盗賊と違ってこいつは意識がある。ので、勿論暴れるんだけど……私の腕はびくともしない。いいねこれ!いかにもヤンキーっぽい行動だよこれ!
「ちくしょう、放しやがれ!」
「軽いのぉ、ちゃんと飯食っとるんか?」
「今だ!やれ!」
あ、こいつ等持ち上げてるのに掛かりきりになってるからって攻撃仕掛けてきやがった。持ち上げた奴を振り回してもいいんだけど、暴れるからやり辛い。
だからまずは、私の手の中で暴れているこ奴を片付けようか。次の新スキルを……ヘッドハンマースキルを使用する!
説明しよう、ヘッドハンマースキルとは……ただの頭突きである!
「歯ぁ食いしばれよぉ!」
「は?ぐぎゃあっ!!」
私のおでこと盗賊の鼻っ柱をごっつんこ!ぶつかった瞬間は勿論見えはしないが声から察するにいい感じにクリーンヒットしたみたいだね。流し読みした時にスタンって文字があったから確率でスタン効果があるようだね。
こうしてだらんと腕を垂らした盗賊は、私の武器へと成り代わった。勿論することと言えば……
「ハッハッハァ!これやってみたかったんよ!!!」
ジャイアントスイングである。
気絶した盗賊の服を掴んだまま回転しながら振り回す!そしてそのまま残った盗賊に迫る!
盗賊もやられっぱなしとはいかない。ナイフを持って対抗しようとはするが、振り回されている仲間にビビり踏み出せないようだ。……盗賊にしては仲間意識あるのね。いや、今の私には全く関係ないけどねぇ!?
「ハハハハハハハハ!」
やっばい、ジャイアントスイング凄くテンション上がる。盗賊にぶつかっても勢いを失わないジャイアントスイングはバッタバッタと敵を薙ぎ払い、そして最後には……遠心力に耐え切れず服がすっぽ抜けて振り回していた盗賊がギャグマンガのように吹っ飛んだ。
よし、これにて盗賊殲滅完了。ソレイユの方はっと、もう終わってるみたいだね。ソレイユの傍に2人盗賊が倒れている。
でもソレイユよ、何その目は。
「お前どっちが悪か分からないぞ?」
いやほら、ヤンキーってほら、基本悪役だし多少はね?
リフトアップ、イメージとしてはヤンキーが襟掴んでオラつくあれです。流石にそのまま持ち上げるのは現実ではそうそう無理ですけどね!




