ファッションヤンキー、護衛開始
リヒカルドから護衛の依頼を受けた私は只今、馬車に乗って揺れています。
伸した盗賊はというと、縄でぐるぐる巻きにして放置でOKなのだと。いや、他の盗賊が縄ほどいたらどうするのかと聞いたら使用した縄は捕縛用の物で、持ち主か持ち主が許したもの以外解くことが出来ないそうだ。縄故、斬ることは出来るが、それでも相当な手練れでないと斬れないとか。何でもアリか。
しかし漫画で読んだけど、馬車って昔のやつだと振動が途轍もなくてお尻が痛くなるってあったけど、この馬車は全くそんなことはない。むしろ椅子とかクッションがふわふわで中々に心地よかったりする。
でもさ……今更気付いたんだけど馬車操る人いなくない?御者っていう人そういえばいなくない?なのに進んでるよね……
そのことを不思議に思っているとピンキーちゃんが得意げに教えてくれた。
なんでもこの馬車はアイテムを捨てることでそれに応じた魔力を生み出し動く自動運転可能な馬車らしい。いや、今や自動運転車は現代には欠かせない物になっているけど、ゲーム内の馬車までその影響が及んでいるとは……
「オウカお姉ちゃん怖い顔してどうしたの?」
「怖い顔しとるつもりはないんじゃけどのぉ……」
しかしピンキーちゃん中々にぐいぐい話しかけてくるね。私、初対面の子供には泣かれたり黙られたりするんだけれど。
まぁ忌避せずかまってくれるのは嬉しい事ではあるから邪険にはしないけどね。でもヤンキーだからちょっとそっけなくね。
おいソレイユ、睨むな睨むな。アンタの大好きなお嬢様と会話しているからって睨むんじゃない。そんなアンタをリヒカルドが睨んでますよ……鬼が見えるよ……?
そうこうしていると、外が騒がしくなった気がする。これはもしかして?とリヒカルドに視線を移すと彼は無言で頷いた。
盗賊の襲撃が来たか。私はリヒカルドから数本ポーションを受け取ると、馬車の戸を開け外に出る。
おるわおるわ、盗賊たちが。さて、ひーふーみーよーいつむー7人か。思ったよりは少ないかな。さっきのが多かっただけかもしれないけれど。
「何だぁアイツ!?」
「おいおい、聞いてた話と違うぞ?」
「あの野郎、俺たちをだましたのか?」
あの野郎?だました?口ぶりからして盗賊以外の何者かがこの馬車を襲うように指示したのかな?
うーん、考えても仕方ない。というか、ヤンキーらしく考えることなく喧嘩でもしましょうか。とりあえず、盗賊1人に棍棒投擲。顔面アウト!
それを皮切りに盗賊が私に襲い掛かる。数こそ劣るが、私にはそれを補って余りあるほどの体力やスキルがある。……ごめん流石に喰らい続けたら死んじゃうので貰ったポーションを有効活用させてもらいます!
「死ねぇ!」
盗賊の1人が私の腹部にナイフを突き立てる。確かにリアルならこれだけで死ぬかもしれないけどこれはゲームの世界なので問題なし。
しかも体力的には全く減ってない。コング・コング・コングのパンチに比べたら10%も満たないほどの攻撃力だ。
そんな攻撃で私が倒れるわけでも無く、むしろターンアタックの条件満たしたんで強化された拳を乙女の柔肌にナイフを突き立てた不届きものに叩き込む。おぉ……凄い吹っ飛んだ。
そんな仲間の吹っ飛びに一時は口をあんぐりとさせ静止していた盗賊だったが、すぐに気を持ち直し私に向き直り襲い掛かる。
「てめぇよくも!」
「何がよくもじゃ!覚悟くらいしときんさいや!」
震脚で地面を震わせ盗賊は転げまわり、そこを木刀で追加攻撃をする。しかしなんだ、もうちょっとこう一気にスムーズに倒したいんだけど上手くいかないなぁ……でもこれが今の限界だからこうするしかない。うん?盗賊1人いなくね?
「貰ったぁ!」
うぇっ!後ろ!?いや、さっき受けた一撃を見るにこの攻撃でも死ぬことはないかもしれないけど、不意打ちのような形だ。もしかしたらダメージボーナスとかあるやも――ん?ダメージ来ない?あれ?不意打ちしようとした盗賊が……倒れた。
その盗賊の背後には、剣を振り下ろした体勢のソレイユが立っていた。おぉ、助けてくれたんか。
「降りてきていいんか?ガタガタ震えながらお嬢様と待っとっても良かったんじゃけど?」
「ぬかせ!貴様にだけ良い格好させてたまるか!」
背中合わせで軽口をたたく私とソレイユ。なんかいい共闘っぽいけど!ぶっちゃけ、どこかに盗賊隠れてるかもしれないからピンキーちゃん達の傍にいてくれた方が助かるんだけどなぁ!?




