ファッションヤンキー、原因を知る
突然のキングアバターの分裂に私たちは一瞬膠着した。そりゃいきなりデカいボスが崩壊して小さいネズミに分裂したとなれば驚かない人間はそういないだろう。ただ、いくら私達が固まっているとはいえ、分裂したトライブグラトラットも待ってくれるわけもなく。散り散りに動こうとしたところで、分裂した個体の数匹が一瞬にして細切れになった。
「お前ら起きとるかー!しっかりしぃやぁ!」
細切れにし、声を張り上げたのはムラムラマッサンだ。その言葉に意識を取り戻した私達は、各々分裂体に攻撃を仕掛ける。キングアバターはとても好戦的ではあったが、分裂体は非常に憶病なようで捕まるまいと必死に逃げようとする。おまけに耐久もないようで、一撃貰っただけで消滅していってる。
ってか、私の"存在強調"でヘイト稼いでいても君ら逃げるのか……私、完全に逃げに回った相手は無理なんですが?今だって攻撃しようにも空振り。そもそも追いつけないし目からレーザーなら速いけど敵が小さくて当てるのが困難だし1匹焼き貫いたところでMPの無駄!
よし、じゃあサポートに回ろう。
「おっらぁ!」
私は膝を大きく上げ――思いっきり地面を踏み抜き、"震脚"を発動させる。たちどころに辺りの分裂体たちは突如として発生した地震のような物に慌てふためき、今度は奴らが動きを止めてしまう。
そこを見逃さず、土蜘蛛やムラムラマッサン達が仕留めてってくれている。うむ、チームプレイと言うやつだね。パーティ状態だと震脚がフレンドリーファイアにならないことを確認しておいてよかった……
「うがぁ!どんだけいるでござるか!」
「俺は20匹はやったなぁ!」
「しかし、どうして分裂したのか……?」
確かに、私達は特別な攻撃をしたわけじゃない。蓄積ダメージで分裂?ならムラムラマッサンが喉に数撃入れた時点で分裂してもおかしくなさそう。もしくは時間経過、もしくは気付かないうちにギミックを攻略していたか。
「その疑問は俺がお答えしよう!」
そんな声と共に木々の間から顔を出したのはぴょん吉・ヨリドリ・ヘイヘと共に攻略のヒントを探すために戦線を離れていた四五六だ。彼が答えを知っているということは、後方組がギミックを見つけ出したのだろう。
「森の中に赤く光るトライブグラトラットがいたんだ!それをキルしたらネズミの体が溶け出して赤い光がそっちに向かって飛んでった!」
「ほぉかほぉか、本体――と言うか核は外におったんか。よぉ倒したなぁ!あの面子だとヘイヘかぴょん吉が倒したんやな?」
「……いや、倒したのはヨリドリだ。凄い楽しそうにメイスでぶん殴ってた」
さり気なく言っているが、遠距離攻撃のヘイヘとDEX高めのぴょん吉いるのにその2人を出し抜いてヨリドリが倒したの……?あの子何者?クレリックってのは嘘だったりしない?
おっと、会話しながらトライブグラトラットをプチプチする作業もここまでのようだ。一定時間逃げ回っていたはずのトライブグラトラットが一斉に空を見上げたかと思うと一斉に1つの個体に集まり、やぐらを組み上げ――赤い光が空に向かって放れた。
「あれが核か!」
「四五六!また頼むでござるよ!」
「おっけぇ!俺もそろそろ伝言役以外で活躍してぇからなぁ!」
切実ぅ!
さて、私達の目の前には再びキングアバターが現れた。明らかにさっきよりサイズが一回り小さくなっているが、それでもまだデカい。やはりデカさはパワーだよ兄貴。逃げまどっていたトライブグラトラットの集合体とも思えない程、キングアバターはニヤリと好戦的に笑う。今度こそ仕留めてやると言いたげに。
だけどね、私の方も準備はOKなんだよね。ネズミさんよ、龍が混ざった人間を見たことはあるかな?私は鏡で見たことあるよ!
"パッシブスキル 龍驤麟振の効果が時間経過により変化いたしました"




