第187話 ファッションヤンキー、未知の状態異常に
後方組がキングアバターの弱点を探るべく行動を始めてから数分後、キングアバターが今まで見せなかった行動を取り始めた。顔を上に向け大きく仰け反る――これってまさか!
「アカン、これブレス行動や!みんな離れぇ!」
ムラムラマッサンの声掛けに反応して全員が回避行動に入る。特に土蜘蛛はいち早く気付いていたのか、誰よりも先にキングアバターから距離を取っていた。ブレスの範囲こそ分からないが、キングアバターの口から放たれることから、少しでも離れていれば、ブレスが来た後でもさらに離れれば問題ない。
まぁ、それが出来るのは最低限のDEXがある者だけだ。ここで振り返ってみるが、私のDEXって滅茶苦茶低いんだよね……だから
「すまん俺無理!」
「「「ハァ!?」」」
みんなから何言ってんだこいつみたいな「ハァ!?」が飛んできたんだけど。ハァ三兄弟ですか?まぁね、これで私が体格も小さい軽い女の子だったら土蜘蛛辺りが軽々持ち上げてすたこらさっさ出来たと思うんだよ!回避できると思ってみんなさっさと離れちゃったから実現不可能なんだけどね。
とは言えだ、ブレスなら黒劣竜ダリグリカで何回も喰らって私、ピンピンしてたからね!いくらキングになったとはいえ、所詮ネズミはネズミ!ドラゴンよりも強いブレスを吐くとは思えない!
……あ、キングアバターと目が合った。おい、「何でこいつ離れてないの?」みたいな目は止めなさい。私がそう見えてるだけかもしれないけど。そして躊躇なく放たれる紫色のブレス。なんだろう、炎のブレスと違って紫色ってのちょっと嫌だな。放ってるのがネズミってのがさらに嫌悪感に拍車をかけていそう。ゲームで良かった……さてダメージは……うん、やっぱりダリグリカほどのダメージは無い!
「無事か、ヤンキー!」
「おう!ダメージはあんまないわ!」
「ちゃうわ!あんな色のブレス明らかに状態異常がメインやろが!そっち問題ないんかい!」
マジ?恐る恐るステータスを見てみると……ヤバい、ムラムラマッサンの言った通り確かに猛毒状態と倦怠状態になっている。猛毒状態はその名の通り毒状態よりも速いスピードで継続ダメージを与える状態なんだろうけど……倦怠状態?なにこれ聞いたことないんだけど!ここは一番そう言うのに詳しいであろう、ムラムラマッサンに聞かねば!
「ムラムラマッサン!なんか倦怠状態って奴になったんじゃけど何か知っとる――げぶっ!」
振り向いてムラムラマッサンに情報を求めようとした瞬間、お腹の方に強い衝撃が走った。そちらに目を向けると、キングアバターの尻尾が突き刺さっているではないか。貫通は……していないけどおかしい。目に見えて分かるほどにダメージ量増えてる!?
「倦怠状態はHP・MP以外のステータスを減少させる状態異常や!しかも他の状態異常が増えるたびにその割合も増える!」
「マジかぁ!」
通りでダメージが増えたはずだよ!幸い、ノックバック耐性は減少しなかったようで、その場に踏みとどまれてはいるけれど、この状態が続くのであれば、あまりよろしくない。っていうか倦怠状態なんて状態異常知らなかったから対応するポーション無いよぉ!?
なんて焦っている間にもキングアバターは待ってくれるわけはない。次々と攻撃を私に与え倦怠状態どころか猛毒すら解除させようとしてくれない。猛毒の影響洒落にならないんだからちょっとタンマ!
「代わる!ヤンキー、一旦お前は下がれ!」
「すまん!」
何発か喰らったところで、土蜘蛛が戻ってきてくれた。お陰で退くことが出来た。……けどちょっと屈辱感。おのれぇ、ネズミがぁこの恨み晴らさでおくべきかぁ……!
一旦距離を取り何とか解毒ポーションを飲んで……あれ、解除されない。
「猛毒の場合は上解毒ポーション1本か解毒ポーション2本なんやで」
あぁ、そうなの。ん?なんで同じ解毒ポーション2本で解除できるんだろ。ゲームだからあんまり難しく考えちゃダメ?よし、解毒完了!んで倦怠状態はどうすんの!倦怠ポーションなんて聞いたことないよ!何、栄養ドリンク飲めばいいの!?それとも寝ればいいの!?
「倦怠状態はHPを全快させたら解除されるで」
流石ムラムラマッサン先生!トッププレイヤーは伊達じゃないね!胡散臭い身なりしてるなぁとか思っててゴメンね!
「すまん、助かったわ」
「構わんけど、自分そんなゴッツイ鎧着とるわけじゃないのに鈍足やなぁ……」
「言わんでくれ、自分でも分かっとるしこれで問題ないんじゃ」
普段ソロだし、移動は犀繰でいいからねぇ……今回が特殊だっただけだよ……
「ムムッ!キングトライブグラットラットアバターに異変アリでござる!」
「ヂヂヂヂュヂュヂヂ……!!」
ムサシマルの声にその場の全員の視線がキングアバターに向く。確かに異変アリだね。何か、キングアバターの体が波打っている?ぱっと見苦しんでいるようにも見えるから、攻撃ではなさそうだけども。
「ヂュアアアアアアアアア!!」
キングアバターが絶叫を上げた途端、奴の頭が崩れ始めた。え?何?倒したの?――いや違う!崩れた頭の破片がもぞもぞと動きだして別の形に――合体する前のトライブグラトラット!?




