ファッションヤンキー、ベースキャンプを爆走する
「ッラァ!!」
「ヂヂィッ!」
飛び掛かって来たトライブグラトラットを龍拳で迎え撃つ。避けるという行動を一切取らないトライブグラトラットは私の拳の前に敢え無く爆発四散。これで10匹目かな?ただ、周りに比べるとペースはどうしても劣る。私、範囲スキルって震脚しか持ってないからなぁ。この震脚、ご丁寧に味方まで影響するからこういう集団戦でむやみやたらに使うことが出来ない。
だからこそこうして拳と武器を駆使して戦ってるんだけど――あぁもう鬱陶しい!!
「犀繰!」
『お呼びか、姉貴』
インベントリからバイク形態の犀繰を取り出す。予想していた通り、周囲がざわめくが、気にしていられない。私は颯爽とハンドルを掴んで跳躍し、サドルに跨る。ふふん、秘かに練習していたんだよなぁ。観衆の前で成功してよかった!そしてハンドルを思いっきり捻ると……本来ならゴーレムだから出ないはずの重低音の排気音が犀繰から放たれる。
「おぉ、ネズミ共を踏みつぶすぞ!」
『こういうベースキャンプでの走行は推奨されていないが』
「知らんのぉ!」
そういうところでバイク乗り回すのってむしろますますヤンキーっぽくないですかね!という訳で発進止まるどころか!犀繰が放つ走行音に気付き、トライブグラトラットが一切恐れることなく飛び掛かるが、モンスターとは言え、サイズは一般的なネズミと変わらないやつらが大型バイクと接触したらどうなるでしょうか?A,死にます。
「おう、犀繰!損傷は!」
『非常に軽微だ。100体轢いた所で影響は皆無』
流石の丈夫ボディだね。実際、いくらネズミが神風特攻したところで犀繰は止まるどころか減速さえしていない。ちなみに結構な速度で走り回っていますが、人身事故及び建物などの被害も一切ない。私のドライビングテクニックの賜物……と言いたいところだけど、犀繰が自動的に避けてくれるんだよね。本当に優秀だよこの相棒。
さぁ、このまま轢き続けてこのベースキャンプからトライブグラトラットを絶滅させよう――そう思った瞬間、フラグだったのか眼前に異変が発生した。
「ヂヂュッ!」
「「「ヂヂーッ!!!」」」
1匹のトライブグラトラットの叫びに答えるように数多くのトライブグラトラットも鳴き声を上げる。その集団はスクラムを組んだかと思うとさらにその上にトライブグラトラットが乗りスクラムを組む。まるで組体操のやぐらのように積み上がるそれはだんだん高さを増していく。
あぁ、これ不味い奴だ。ネズミ共の行動に既視感を感じる!あれはスライムだったけどね!
「犀繰、完成させんな!突っ込め!」
『了解だ』
組み上がっていくやぐらをぶっ壊すべく、犀繰の速度を上げる。あれを完成させてはダメだ。合体中に手を出してはいけないというのは特撮のみに許されたルール……思いっきり邪魔させてもらうよ!
近づくことでやぐらの頂上は見えない。だが、ぶつかる直前、私は聞こえた気がする。トライブグラトラットの勝ち誇ったような鳴き声を。そして同時に感じるのは強い衝撃。ただのトライブグラトラットを轢いただけでは感じなかった明らかに何かとぶつかり――犀繰の進行が妨げられた感覚だ。
「ヂヂヂヂ……」
まるで笑うかのような鳴き声に顔を上げる。そこには……いた。見上げるほどの巨体を持ったトライブグラトラットが。
"ベースキャンプにキングトライブグラトラットの分身、キングトライブグラトラットアバターが出現しました!"
"これにより、キングとアバターそれぞれを撃破しない限りトライブグラトラットは発生し続けることとなります。"
マジですか……こっちにもボス相当が沸いてきちゃった!?




