ファッションヤンキー、歩き続ける
はい、私含めた周りの人、みんなしてポカーンとしております。幸い、陰から逃げていったネズミたちは通りがかった一部始終を見ていないプレイヤーが仕留めてくれた。すぐに現実に戻って来たプレイヤー達。次にとる行動は容易く想像がつくだろうね。そう、私に詰め寄る事だ!
「ちょっ!アンタ今何したんだよ!」
「ネズミぶわーって出てきたよな!?スキルか!?」
「教えて!早く解決しないと!」
思ったよりも勢い強いなこの人たち!不動スキル持っているはずの私が押されているだと……っ!?
考えてみると、このゲームでこんなに詰め寄られるのは滅多にないかも。ちょっと新鮮。
さて、教えてと言われてもなぁ……私自身自主的に何かをしたという訳じゃない。考えられる点があると言うのなら、存在強調だけれども。とりあえずそう言うスキルがあるとだけ伝えてみると――
「なるほど!確かにアンタみたいなのが近くに来たらビビって逃げたくなるよな!」
「失礼じゃのぉ」
「ヘイトを集めるスキルじゃ出てこなかったんだけどなぁ……」
「ネズミ側に耐性があるのかもしんないね。とりま、ヤンキーさんは色々歩き回ってて!出てきたところを退治するのは私たちがやるから!」
何その簡単なお仕事。私も駆除側に回ったほうがいいのでは……?いや、さっきのネズミの速度的に私が追いかけたところで追いつけないな。目からレーザー撃てば仕留めきれるかもしれないけど無数にいるネズミに一々撃つのも効率が悪い。であるのなら、大人しく歩き回っていよう。
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言われた通りに歩き回りましたよ、後ろに殺気立ったプレイヤー達引き連れてそりゃあもう隅から隅まで。たまに「サボるな」と事情を知らない人に怒られはすれども、すぐにその怒った人も私のスキルでネズミが出てくるところを見れば列に加わる。それが何回か繰り返された所で――
「出たぞー!殺せーっ!」
「ハッハァ!ネズ公が人様の物に手を出してタダですむと思うんじゃねぇぞぉ!」
「ドブネズミは消毒よーっ!」
私の周り世紀末になっちゃった……。皆ネズミを駆除するたびに変なテンションになっていませんか?今お昼のはずなんですけど?私より極悪な感じしてないですか?いや、私別に悪を目指しているのであって極悪までは目指してないんですけど。というかみんな軒並み私の後ろに並ぶから私が率いている様に見えるのどうにかしてもらえません?あぁほら、事情を知らない今日初めてログインした人がビビり散らかしてるから。
しかしだ。私今ベースキャンプ5周位したんだけれど未だネズミが沸いてくるのは何でだろ。そろそろ駆逐されてもいい頃合いと思うんだけど一向に減る気配を見せない。正直飽きてきた感は否めない。
確かこのネズミたちを生んでいる元凶がいるんだよね。近くの取り巻きに聞いてみよか。
「のぉ、このネズミ共の元凶ってどうなっとるん?」
「おぉ、フレンドが捜索に参加してるんだけど、近くで昨日までなかった洞窟を見つけたみたいで進んでいるみたいだ」
おぉ、それはいかにもと言った感じだね。
「ま、それでも時間はかかるみたいだからな。それまで頼むぜ、アンタ?」
ポンと肩を叩かれた私は人目も気にせず大きくため息をついた。あたしゃいつまでベースキャンプを延々と回らなきゃいけないのよ……もう気を紛らわせることないよ……?




