ファッションヤンキーとティラノの発狂
「グリュアアアアアア!!!」
わぁ、表情らしい表情がないはずのティラノが怒ってるってよく分かるわぁ……やりたいこと悉く潰されて何度も転ばされちゃあ無理もないかもしれないけど。しかも今はそれに加えて拘束ですよ。手も足も尻尾も出ないので、私とクレメオでボコってます。
しかし、やはり強襲ボス。これだけ私達で殴っても一向に倒れる気配がない。それどころか今すぐにでも嚙み殺してやると言わんばかりの目を向けている。
うーむ、これが私1人だけの戦闘ならなぁ。何も考えず殴り合いになったんだろうけど、今は偶然ながらパーティでのボス戦だ。私1人が勝手な行動しちゃ怒られるからね。(一敗済)許せ、仮称ティラノ。
なんて考えていたら、ティラノに異変が起きた。そのピンク色の肌に黒だの黄色だのラインが浮かび上がってきた。これは――!
「クレメオ!」
「えぇ、下がりますよぉ」
異変を察した私たちは、一旦ティラノから距離を取り、奴の変化をを確認する。
ティラノは低い唸り声を上げながら起き上がる。拘束していたはずの蜘蛛の糸は既に解かれ……いや、焼き切れている?ん?あれ?ティラノの頭になんか変な物無い?
「なんじゃあ、ありゃあ」
「羽根の被り物ぉ?」
「あー!インディアンが被ってるあれみたい!」
「「あー」」
ステープラの発言に納得する私達。確かにテレビで見たインディアンあんなの着けてたね。え?なんでティラノが被ってるの?インディアンティラノサウルスなの?なんて考えてるうちにもっと異常なことが起こった。
ティラノの周りに火の玉が現れたんですよ、複数も。いや、ホラー的な奴じゃなくて煌々と燃える火の玉。あれ見たことあるよ。魔法のフレイムボムだよね。え?
「魔法!?」
ステープラが驚きの声を上げ、それを皮切りに沢山のフレイムボムがこちら目掛けて飛んできた。クレメオは高く跳躍して回避し、ステープラは「"コクーンバリア"!」と自分の体から範囲1センチくらいのバリアのような物を張り防御。私は、こんな速い魔法を避けきれるわけもなく直撃です。いやぁ、ドッカンドッカンうるさいのなんのって。視界も狭まるしさぁ、溜まったもんじゃあないよ。
とは言え、死ぬほどのダメージではない。この土煙が晴れたら反撃を開始しよう。
「魔女さぁん、ヤンキーさぁん!攻撃に備えてくださぁい!」
頭上からクレメオの声。何のことかと聞き返す前に「ぐぴゃ!?」と奇妙な鳴き声が聞こえ――私を衝撃が襲いよろめいてしまった。何事かと見てみると、私にぶつかってきたのは眼を回したステープラだ。纏っていたはずの薄いバリアは砕け散っていた。
「ちょ、ステープラ!?大丈夫か!?」
「うひぃん、大丈夫じゃないですー今スタン状態ですー」
アカン、思ったより大丈夫じゃない。とりあえず放っておくわけにもいかないし、おんぶしておこう。しかし、何で彼女がいきなり横から吹っ飛んできたの?
なんて疑問はすぐ明らかになった。うん、土煙が晴れたらね、尻尾を鞭のように地面に叩きつけてたティラノが目の前に居ました。あぁ、ステープラは尻尾にやられたんだな?でもおかしな点がある。ティラノ君そんなに速かったか?それにその巨体で走って何で音しなかったの?さっきはズシンズシン言わせてましたよね?
こういう時はあれだ。恐らく見えていた奴に聞くのが一番いいよね!
「クレメオ!何が起こったんなら!」
「魔法ですぅ。フレイムボムを使ったのち、あの恐竜ちゃん魔法の"スピードアップ"と"スニーキング"を使用しましたぁ」
「はぁ?」
冗談だと笑い飛ばしたいところだけれど真実なんだろうなぁ。ちょっとティラノさんいきなり魔法使うとか卑怯ですよ。いくら発狂モードとは言え、いきなり方向性変えるのはどうかと思うんですけど!
なんて愚痴はティラノに届くわけもなく――私の腹に奴の尻尾の先端が突っ込んできた。
「ぶっふぇ……!」
しかもご丁寧に攻撃力まで上がってるよ!いや待て?この場合の攻撃力アップは奴の発狂が原因か?それとも私の背中の魔女っ娘が原因だったりしない?ティラノの顔というか目を見ると滅茶苦茶血走って鼻息荒いし。
ヤバいな、これはピンチやも知れない。なのでさっさとステープラには起きていただきたいんですけど。




