ファッションヤンキー、探索型イベントに参加する
翌日、私は探索型イベントに参加するべく、トレトゥスの冒険者ギルドに来ている。元々プレイヤー数の多いAFW。ギルド内はプレイヤーが混雑してすし詰め状態になっているものかと思いきや全然そんなことはなかった。何かよく分からないけど、運営が対策しているみたい。おかげでスムーズに受付に辿り着くことが出来た。えーっと、イベントの参加っと。
「孤島の調査依頼ですね?ご参加いただきありがとうございます。――案内はおひとり様でよろしいでしょうか?」
「おう」
複数人同時参加可能だから念のために聞いているんだろうけど、なんだろう……少し心に刺さる気がする。フレンドはいるからね?好き好んで1人で参加しているだけだからね?おかしいな、受付の人の表情がいつもと変わらないはずなのに少し変な方向の優しさを感じるぞ。
「かしこまりました。それでは案内を表示しますので、それに従って渡界者転移室まで向かってください。なお、ギルドから外に出ますと、案内は自動的に消えますし、案内が表示されない状態で渡界者転移室には入れませんのでご注意ください。」
そう案内されると私の視界の少し上の所に立体的な矢印が表示された。へぇ、これに従っていけばいいのね、了解。
矢印の案内に導かれて辿り着いた渡界者転移室。ここも受付同様、混雑している様子は無い。何人か並んではいるものの、スムーズにプレイヤーが中に入っていっている。よし、私の番がやって来たね。私は意を決して、ドアノブを周り室内へと突撃する。いざいざいざ!
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転移魔法陣を抜けると、そこは……ベースキャンプでした。うん、そりゃそうだ。冒険者ギルド経由して転移しているんだから、いきなり無人島の何もないところに放り込まれるわけないわな。
というか、ベースキャンプ結構充実しているなぁ。飲食スペースもあれば鍛冶スペースもある。へぇ、訓練場もあるんだね。
えーっと、あっアナウンスが表示された。何々?"現在、クエストは発生していません。無人島を散策してみましょう。"か。こういう表示が出るということは、ワールドクエストのような大規模なクエストが発生する可能性があるのかな?まぁ、言われた通り散策してみましょうか。周りを見れば結構みんな散り散りにベースキャンプを出ているみたいだし。それに倣い、私もベースキャンプから出て木々が生い茂っているジャングルのエリアに脚を踏み入れた。
「はぁ、これ絶対に現実だったらクソ暑いんじゃろうなぁ」
思わずそう漏らしてしまうのも仕方ない。ベースキャンプの時からそうだったけど、滅茶苦茶日が照っているんだからね。しかし、当たり前だけどワンズフォレストと生息している植物が全然違うね。こう、それっぽい植物が生えている。――おっ、なんか赤い果実が落ちてる。視界を上部に向けてみると、同じ果実が木に成っているから自然に落ちた物だろう。拾い上げて情報を見てみる。
"謎の赤い果実"
ジャングルエリアに生息していた果実。よく分からない。
……よく分からないとは?食べることが出来るかどうかも分からないの!?もしかしてこういうものを持ち帰って調べてもらえってことなのか。そんで無警戒に食べると毒とかでしっぺ返しを喰らう……と。いや、確かに調べずに口に入れることの怖さは分かるけども。この果実はとりあえず1つだけ確保しておこう。で、ベースキャンプに戻ったら提出しよう。と、インベントリに仕舞ったところで――
「ギェッギェッギェッ」
明らかに人ではない笑い声が私の耳に届いた。それも1つではなく複数。同時に周りの草木がガサガサと音を立て揺れ、その奥から音の正体たちが現れた。
……ゴブリンだね。何の変哲もないただのゴブリ……いや違うな?このゲームのゴブリンは布を腰に巻いているが、私の目の前にいるゴブリン達は腰蓑を付けてチャームポイントと言わんばかりに花の装飾が取り付けられている。あとは肌が日焼けしているかのように浅黒い。変わらない点と言えば手に持っているゴブリン棍棒は変わらないのね?
よし、それじゃあこの無人島で遭遇した初めてのモンスターだ。実は高いレベルに設定されている可能性もあるから気を付けていこう。
「オラァゴブリン共ぉ!かかって来いやぁ!」
「ギギーッ!!」
あ、はい。ゴブリンは所詮ゴブリンでした。苦戦らしい苦戦しませんでしたし、何ならダメージもありませんでした。普通にゴブリンの弱さでした。低レベルのプレイヤーも参加するだろうし当然っちゃあ当然か。しかしまぁ……張り合いはないけど。
おっと、アイテムはちゃんと回収しておかないとね
"謎のゴブリンの耳"
お前らもかい。謎のゴブリンて。もうあれだ、"日焼けゴブリン"とかでいいんじゃないですかね?それか"常夏ゴブリン"で。"アロハゴブリン"なんてのも面白いかも。アロハってただの挨拶だけど。
なんて馬鹿なことを考えていると、また草木を搔き分けるような音が耳に届いた。またモンスターかな?でも、仮称日焼けゴブリンと同じエリアに出てくるモンスターなら対して警戒しなくても……おっ何者かの影が草木の間から――
「あら?あらあらあらぁ?うふ、うふふふ。まぁまあお久しぶりですですわぁ」
「っ!お前は……!」
現れたのはおよそジャングルには似つかわしくない蜘蛛の巣の意匠が施された黒のゴシックドレスに身を包んだどこか狂気を感じる瞳をした幼エルフ――クレメオ。いや、私が言えた義理じゃないけど本当に暑そうだな。
結構面倒くさい奴に遭っちゃったかもしれない。




