ファッションヤンキー、聞いてみる
「――ふぅ!満足しました!オウカ様、お待たせして申し訳ございません」
「お、おぉ別に待っとらんけぇ気にすんな」
購入した大量の服を入れた紙袋を手にほくほく顔をしたフェリーンを私は迎えた。いや、この言い方だと従者であるはずのコーネストが主人に持たせて自分は何も持っていないように聞こえちゃうな。訂正しよう。コーネストも大量の紙袋持ってます!!いや、久しぶりに街中に出たお嬢様でもそんなに買わないよ?よしんば買ったとしても複数の店舗だよ?
そして私、罪を告白します。嘘をつきました。ご飯食べ終わってからログインして40分ほど待ちました。一旦ログアウトして30分ほどゆっくり食べてたんだけどなぁ……
「さて、オウカ様……お話ということですが……その更に高まった龍の気に関することですよね?」
楽しそうな雰囲気から一転。フェリーンの真剣な面持ちに私も自然と背筋が伸びる。別に私が悪いことしたわけじゃないんだけれど、なんか居た堪れない気分になるなぁ。
とりあえず頷いておこう。龍の気云々は初耳だけど凡そは間違っていないだろう。
「ちょっと水虎の爺さんと喧嘩したら暴走してのぉ。俺の意思関係なしに喰おうとした」
「それは……なるほど。しかし、ここで話すには少しふさわしくありませんね」
そう言うとフェリーンはちらりと視線を逸らす。私も釣られて視線を同じ方へ向けてみると、表には出さずともビックリした。周りに人が集まり明らかに聞き耳を立てていた。思えば当然の話か。こんな従者を連れているような人との会話が重要な話じゃないわけがない。プレイヤーであれば気になるのが常だ。その中に竹輪天さんが入ってなかったのは少し嬉しかった。
「オウカ様と私の会話を盗み聞きされるのは、いささか不満ですね。"柳風"」
スキル名だろうか、フェリーンがぼそりと呟くと周りの様子が一変した。皆が一様に私達を見失ったようにキョロキョロしだした。おかしいな、私達一歩たりとも動いてないんだけれども?
「私のスキルで一時的に私達を見えなくしました。――ただ、オウカ様の自己主張の力が大きくてあまり保ちそうにありません。急いで外に出ましょう?」
自己主張はもうちょっと別の言い回しがありませんでしたかね!?確かに"存在強調"とか持ってますけれども!ってツッコミたかったけれどそれが原因でばれても困る。なので私は場所を変えると店の外へ出るフェリーン達の後ろをすごすごついて行くことにした。
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案内されたのはフェリーン達が寝泊まりしているという高級宿屋の一室。私とフェリーンが椅子に座り、コーネストを含む護衛達が私達を囲むように立ち並ぶ。私座ってていいのか……?でも、この中で一番偉いであろうフェリーンから「お座りください」って言われたし……?
「ここでならゆっくりお話しできますね。で、オウカ様はそのスキルによって暴走したと?」
「おぉ、一応運営――いや、プライヤ?に聞いてみたんじゃけど別に想定外のことじゃないって言われてのぉ」
何気なくプライヤの名前を口にしたはずなんだけど、その瞬間周りから息を呑む音が聞こえた。
「そう、ですか。ビルドの一柱が降臨されるとはやはり渡界者様は特別な方たちなのですね」
ただの運営への問い合わせなんだけれど!?住人にとってビルドの連中って神様のような存在なの!?そう言えば、シャンユエも結構恭しく相手にしていたよな。でも咎められないあたり私らは別に大丈夫みたいだね。
「さて、話は逸れてしまいましたが、オウカ様はそのスキルの改善のため私を頼っていただいたということでよろしいですか?」
「おぉ。俺にゃあスキルを抑える方法なんてとんと分からんけぇのぉ。龍関連ということでフェリーンなら何か分からんかと思ったんじゃけど……」
私の言葉に、申し訳なさそうに眉を顰めるフェリーン。あぁ、言葉にせずとも何となくわかった。フェリーンでも解決できそうにないか。
「頼っていただいて嬉しくはあるのですが、私にはどうすることもできません」
「あー、いや気にせんでえぇわ。俺の方こそ無理難題を頼んで――」
「ですので、ゴルディバルド様にお話を聞いて頂きましょう!きっとお力になってくださるはずです!」
え?マジ?




