ファッションヤンキー、お土産をもらう
さて、次の目標が決まったわけだけども、そう言えば今一番近くに龍に関する手掛かりいましたね。
私がさっきまで喧嘩していた相手小虎のシャンユエ。彼は青龍トルネイアと知古であるみたいだったし、もしかして現在の居場所は――
『知らんぞ?あ奴は水流が如く動き回るからのう。基本定まった場所には居らんのじゃ。気に入った場所があれば暫くは滞在するじゃろうが』
「ならしょうがないのぉ。一発殴りたいと思っとったんじゃけど」
今の私の拳ならそれなりにダメージ与えられるでしょうしね!とまぁ、口ではこう言ってるけど、勿論殴るつもりは……あんまり無いよ。暴龍眼になったのはトルネイアからしても予想外って言ってたし。
後は火竜サラマーダだけど、あれは場所的にダメ。私一人じゃ辿り着けないだろうし、パックンさん達の力を借りるのも少々憚れる。
じゃあ、当初の予定通り彼女に会わなくちゃね。まだトレトゥスに滞在してくれればいいんだけど。さっさと帰ってしまおう。
『オイオイ、待たんか。儂に勝った報酬を受け取らんか。全く、最近の若いもんは急ぎ過ぎる』
「いや、急ぎ過ぎるに越したことない事情抱えとるんじゃけど?」
『それでもじゃ。落ち着かねば見えぬものもある。……という訳でこれ等をやろう』
そう言い、シャンユエは招き猫のように前脚をクイクイと動かす。すると、何もないところからいきなりアイテムが現れた。なにこれ、NPC側もインベントリみたいなものを使えるの?
見た感じ、素材アイテムのような物が多いね。……ん?生きてる魚も混じってるんですけど?え?これも持たされるの?え、えーっと一応アイテム名見てみよう。
"タイガーアイ"1
"上浄水草"10
"マックロガツオ"2
"水玉石"1
"酔虎爪"1
"水虎の毛皮"1
"耐性ポーション(水)"2
"耐性ポーション(火)"2
"招き猫シャンユエキーホルダー"3
お待ちになってシャンユエさん。色々ツッコミどころはあるんであるが、まず一つ言わせていただけませんかね。
「おう、待てや。毛皮って何じゃあ!」
『毛皮は毛皮じゃが?』
「名前的にお前の毛皮じゃろうが!」
『そうじゃが?あぁ安心せぃ、きちんと洗っとるわぃ』
「そういう問題じゃないんじゃけど」
『呵々、実際に皮が剥がされたわけじゃないぞ?儂が操った水が儂の毛皮と言う形で固定されてアイテム化しただけじゃ。じゃから痛くも痒くもないぞぃ?』
何その不思議設定。ゲームだからとスルーした方が良いんだろうね。ってか凄いなこの毛皮。ちゃんと毛皮としての感触もあるのに水っぽさもある。これ、加工できたりするのかな?竹輪天さんと応相談だね。
次に気になるのは……この根っこごとついてる草。薬草かと思ったら上浄水草?浄水?
「のぉ、爺さん。この上浄水草?ってなんなん」
『こいつはのぉ、そのままの状態でも回復ポーションの材料としても使えるんじゃが、真価は別にあるんじゃ』
「浄水って所か?」
『うむ。例えばこの草を毒沼に漬ける。すると、少々時間はかかるが、草が毒素を吸い上げ、たちまち元の池や湖に戻してしまうんじゃ』
「ほー、すげぇんじゃのぉ」
『最後に毒を吸い上げた上浄水草を加工すれば――毒とHPを同時に回復するポーションが出来るという訳じゃ。ちなみに今回は毒で例えたが、麻痺なども吸い取れるんじゃ』
思った以上に有用なアイテムでビックリした。何時か使う場面有りそうだし、大切に持っていよう。他のアイテムも説明を受けたが、高価だったったり使えそうだったり、勝ってよかったと思える。
よし!それじゃあ今度こそ帰るか!
「じゃあ爺さんそろそろ」
『お主、わざとこの招き猫シャンユエキーホルダースルーしとるじゃろ』
「そんなこたぁない」
『良いから持って行かんか!』
「どうせ大した効果ないんじゃろうが!やめ、ポケットにねじ込むな!」
『持ってけ!3つあるんじゃから2つ誰かに渡して布教せぃ!儂の可愛さを布教するんじゃ!』
「もうちょっと威厳持てや爺!!」
無理やりポケットにねじ込まれました……闘ってた時より力籠っていたんじゃないのこのぶりっ小虎。
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「それじゃあ頑張るんじゃぞ」と威厳がどこかに旅に出た水虎の激励を受け、私は"常雨の荒野"から出ることが出来た。さて、これからトレトゥスに戻って彼女に会わなきゃね。居てくれればいいんだけど……!!
犀繰に乗って走りだそうとした瞬間、メッセージが届いた。
「何じゃあ?」
そのメッセージを開くと――"送り主 竹輪天 件名 旗完成しました "
…………よし、まず竹輪天さんのところからだな!




