ファッションヤンキー、シャンユエと決着の時
『呵々、破られるとはのぉ。文句のしようがないわぃ』
シャンユエが楽しそうに私を称賛する。そう、私と渦潮のぶつかり合いは私の方に軍配が上がった。殴りつけた右腕が痺れて動かせないけど、それで済んだと喜んでおくべきかな。渦潮に呑み込まれなくてよかったよ。
「じゃあ、そろそろ決着と行こうかぁ!」
さて、今も私は猪突を使用し続け、シャンユエとの距離を詰めている。だって、渦潮消しただけで私とシャンユエの喧嘩はまだ終わってないからね。ある程度近づいたところで――思いっきり地面を蹴りつけ大きく跳躍!私の体は巨体であるシャンユエの顔面の高さまで跳び上がる。普段のオウカの跳躍力ではここまで跳ぶことは出来ないんだけど、どうやら猪突発動時だったらこういうことが出来ちゃうみたい。己の眼前まで跳び上がった私を見て、シャンユエは一切の抵抗をしようとせず呆れたようにつぶやく。
『滅茶苦茶じゃのぉ』
「私もそう思う」
おっと、つい素が出ちゃった。誤魔化すように笑うと、使えない右手に変わり左手を強く握りしめシャンユエの顔に突き立てた。まるで水風船を殴りつけたような感触だけど手ごたえはバッチリ!
危なげながらもなんとか着地し、頭上でふらふらとしているシャンユエを見上げる。まるで頭の上に星でも飛んでそうだね。
『呵々、見事じゃ見事。ふぐぇぁ』
何とも気の抜ける様な声を上げると、シャンユエはゆっくりとその体を後方に傾け、そのまま大きな音を立てて倒れた。あの、倒れた衝撃で廃遺跡結構壊れたんですけど大丈夫なんですかね。シャンユエの領域?だから私には被害無いからいいんだけども。
"BOSS 水虎シャンユエに勝利いたしました。"
"レベルが1上がりました"
おっ、討伐とかじゃなくて勝利なんだね。まぁ特にシャンユエは悪いことしたわけじゃないし、ただ喧嘩しただけだからね。えーっと、戦闘が終了したってことは私のこの奇怪な状態も解除されるんだよね?
なんか依然として私の腕とかドラゴンドラゴンしてるんですけどいつになったら解除されるんですか……?ッ!?何か視界が勝手に動いた!倒れ伏して、いつの間にか出会った時のように小さくなったシャンユエを見ている?まさかっ!!
"眼が求めています"
"取り込みます"
「馬鹿野郎が!!」
悪態をつくが、それで止まるわけがない。あの時と同じ様に体が勝手に動こうとし始める。一歩、また一歩と動かないシャンユエに向かって歩を進め……ん?ダリグリカの時よりも動きが何か遅くない?もしかして!
「うがあああああああ!!」
試しにあらん限りの力で腕を動かそうとする。するとどうだ。ギプスを付けられたように重いけれど腕が何とか動く!これでウィンドウが操作できるなら――犀繰を呼び出せる!急げええええ!!うわ、指も抵抗しやがるコイツ!何で私の体なのに私が頑張って動かしてんのホント!
えぇい、来い犀繰!よし出てきた!
『どうした姉貴。色々と変だぞ』
「話は後じゃあ犀繰!今は俺の体を抑えぇ!」
『了解した』
ゴーレムである犀繰は、私の命令に素直に頷くと、背後に回り羽交い絞めにする。うわっ、私の体が犀繰の拘束から逃れようと暴れ始める。抑えようにもそれ以上の力で動かれてしまう。くそっ、暴れるな私の中のナニカよ……ってやってる場合じゃないんだよ!
『姉貴、そんなに暴れられると破損する』
「すまん!耐えてくれ!」
やっばい、このままじゃあシャンユエを喰らってしまうどころか、犀繰まで壊してしまう。いや、もう本当にふざけないでよ。勝手に私の体を動かすばかりか知り合った奴食おうとするわ愛車壊そうとするわ……
「ざっけんなボケがぁ!!」
怒りに任せて思いっきり叫ぶ。いや、流石にこれほどこのゲームイラっとしたことは無いよ。……いや、言いがかりの件とかも割かしイラっとは来てたな?あぁもう本当に最後の手段だ!
「犀繰!俺の眼ぇ潰せ!」
『いいのか』
以前、暴龍眼を無効化にしようとした時、"このスキルは、アバター依存のスキルのため無効化できません""どうしても無効化したければ、目隠しするか目を潰してください"と表示されたのを覚えている。それは禍龍眼になった今でも有効なんじゃないだろうか。両目失明することは正直滅茶苦茶嫌だけれど背に腹は代えられない。もしかしたら回復する手段があるのかもしれないし……もし無かったら辛くはあるけどキャラリセしよう。
「さぁやれや!」
『了解した』
犀繰の2本のぶっとい指が寸分の狂いもなく私の両目に向かって来る。グッバイ私の眼――!!
"諦めます"
そう、いきなり表示された途端、私の体から力が抜けた。解除された……!?ってやばっ!
「犀繰ストップ!」
『了解した』
ひえっ、視界の8割が犀繰の指だぁ……




