ファッションヤンキー、喰らう
"レベルが2上がりました。"
"破壊道のレベルが上がりました"
あれ?折角ドラゴンとかいう大物を倒したんだから何かしらあると思ったけど、そうでもなかった。それに今までボスを倒した時に表示されていた10分間敵が沸いてこないというアナウンスも流れなかった。何でだろ?倒れ伏したダリグリカの上で楽しそうにしているシャドルに聞いてみよか。
「おー!レベル1上がった!シギョクも上がった!ってオウカはどう!?」
「おぉ、俺は2上がった」
私が2で、シャドルは1の上昇……この上昇の差は戦闘時間や与ダメージとかで取得経験値が違うとか?もしくはそもそも私達2人のレベルと経験値テーブルの違いか。うん、後者の可能性が高いかも。そんなことよりもだ。さっきの疑問についてシャドルに聞いてみた。
曰く、一部クエスト中に出現したボスは討伐しても雑魚MOBが出現しなくなるなんてことは無いらしい。まぁ絶対に出現しないってだけでそうそう湧いてくるものでもないらしい。
「ほぉ、そういうもんなんか。ってかダリグリカはいつまで残っとるんなら」
「私が触れてるからね!倒した状態でプレイヤーの誰かが触れてると一定時間消滅せずに残るんだよ!で、残ってる間に討伐記念のSSを撮ったりするの。その代わり離すまでドロップアイテムは出現しないけど!」
そう言うとシャドルは一切疲れを感じさせない動きで、ダリグリカから飛び降り私の横へ着地する。すると確かに彼女の言った通り、形を保っていたダリグリカの体がボロボロと崩れ始めアイテムと化していった。うわぁ、結構大量にあるなぁ。これはシャドルと折半してもいっぱい貰えそうだ。
おや?アイテムと一緒に何か人型の何かがって人だこれ。
「うぇ!?何この人!」
「ん?こいつぁ……」
ギョッとしていきなり現れた角付きの人物に驚くシャドル。でもこいつ私知ってるわ。ダリグリカとなったあのドラゴニュートだわ。私と対峙した時と違って空気のしぼんだ風船のようにヒョロヒョロしているけど微かに動いているからこいつ生きてるみたいだね。何とも運がいい……のかなぁ?
「え!?さっきのドラゴンこの人なの!?ドラゴニュート!?噂には聞いてたけど!」
「シャドルも知らんかったんか」
「うん。あまり人里には出ない種族とか聞いたことはあったけどね?っと、そんなことよりもドロップアイテムっと!」
どうやらシャドルにとってドラゴニュートとか云々よりドロップアイテムの方が重要なようで。私も同意見だけれども。そういや、フェリーンを連れて離れてもらった犀繰はいつ戻ってくるんだろうか。ここら辺のモンスター相手なら大丈夫だと思うけども。ダリグリカは結構大きな存在だったし、遠くからでも消えたことは確認できただろうから待っていようか。
「わぁ、すごいすごい!狂劣竜の鱗だって!ドラゴン素材キタ!爪もある!牙もある!」
「ほぉー、どれどれ?」
確かに色んなドロップアイテムが散らばっておりそのほとんどが見たことの無い物だ。私よりもAFWをプレイしているシャドルがこれだけ目を輝かせているんだから、ドラゴンの素材と言うのは滅多にみられるものではないんだろう。
ただ、その中でも私が目を付けたのは……ダリグリカのものと思しき1キロはありそうな生肉だ。いや、少し違うかな。釘付けになっているんだよね。私の意思とは無関係に視線が生肉に固定されちゃってるんだよ。なにこれ気持ち悪い。
"眼が求めています"
"取り込みます"
「へ?」
「ん?どしたのオウカ?」
固定された視界に現れたウィンドウに思わず声が出て、それにシャドルが反応する。眼が求めている?何を?そして取り込みます?取り込みますかって疑問形じゃなくて決定事項?いやな予感がするんですが?
予感はすぐに的中した。なんか体がいきなり動き出した。ゆっくりと歩きだし生肉に向かって手を伸ばす。これはよろしくない気がする。どうやら口は動くようだからシャドルに助けを求めてみよう。
「シャドル!俺を止めてくれ!」
「どしたのいきなり?」
「いいけぇ早く!」
最初はキョトンとしていたシャドルだけど、私の声の焦り様から察してくれたのか、素早く私の目の前に立ちはだかる。そして腰を落とすと……タックルのように私に抱き着いて止め
「あふん」
「シャドルぅー!」
腕が勝手に動き、易々とシャドルを払い除けてしまった。そもそも体格差あるもんね……魔法を使わなかったのはダリグリカ戦で使い切ってしまったからか。あぁ、ついに生肉を片手で掴んじゃったよ。ぐにゅって、The生肉って感触が手を伝う。再現度高いですねとか変なこと考えちゃう。で、取り込みまってまさか。口が!勝手に!開く!マジかおいやめ――ガブッといったぁー!
「ドラゴンって生で食べられるの!?」
シャドルよ、驚くところはそこじゃないんですけど、ツッコミが出来ない。私の口は生肉を食いちぎり、今はもっちゃもっちゃと咀嚼している。HAHAHA、ローストビーフの味するよ。リアル生肉の味したら最悪吐くもんね?口の中の肉が無くなったら再び齧り付いてもしゃる。我がことながら顎強ない?もはやシャドルは茫然とこちらを見ているだけになっていた。もう食べちゃったもんね。止めようないわな。
そして最後の一口を呑み込んだところでメッセージが流れてきた。
"狂劣竜を取り込みました"
"暴龍眼のレベルが上がりました"
"鉄拳が龍拳へ変化しました"
"HPの最大値が増加しました"
「うへぇ」
なにこれ。私ヤンキー目指してるはずなのに変なことなってない?よろしくないよこれ?流れてきたメッセージを見てうんざりしていると遠くからバイクのエンジン音が聞こえてきた。このAFWの世界でこんな音を出せるのはアイツしかいない。音のする方へ視線を向けるとやはりバイクモードの犀繰だった。かなりのスピードでこっちに向かってきている。
「犀繰、戻って来たん、か……おう、フェリーンどうしたんなら」
そう、私のすぐそばで停止した犀繰だったがその座席にはぐったりとハンドルにもたれかかっているフェリーンがいた。そこら辺で倒れてるドラゴニュートみたいにひくひく痙攣している。
『無事で何よりだ、姉貴。フェリーンは全力で走ったら何故か気絶した』
「そ、そうか」
そうだよね。明らかに高貴そうなフェリーンに犀繰の全速力は応えるよね。きついもんね。




