ファッションヤンキー、竜を追い詰める
-オウカside-
すっごいな、シャドルってば。次々とダメージ与えちゃってるよ。私ももう少し攻撃のバリエーション増やすべきなのかな?魔法は無理としても……思いつかないな。
おや?何か今までとは違うような引っ張られる感覚。掴んだ腕を辿ってダリグリカを見ると、ビックリなことにあの巨体が後ろに倒れ始めてるじゃないか!これ私がこのまま腕持ってちゃ倒れるものも倒れないよね、離そう。
拘束する必要のなくなった私は、ある事を思いつき、すぐさま猪突を発動し目的の場所へ移動する。それは、ダリグリカの股下――そう、私の目的は斬り切れなかった奴の尻尾!不動嚙行を斬モードに切り替え、一閃!
「っしゃあ!!」
気合の声と共に振り下ろした一撃は、尻尾を切断……出来ちゃったよ。2回斬っただけなんですけど?ちょっとダリグリカ君尻尾の接着甘くない?簡単に斬れちゃダメじゃない。うん?待って、ダリグリカの悲鳴が聞こえてくるけど私って今尻尾の真下にいるんだよね?切り離された尻尾は当然の如く自由落下するよね?潰されるのでは?
「うおおおおおおお!?」
「着地!って何してんのさ?」
慌てて落ちてきた尻尾をキャッチ!同時に空から降って来て、体操選手張りの着地をしてみせたシャドルに冷静に突っ込まれた。こんな状況見たらそう言いたくなる気持ちも分かるけども。ずっと持っている訳にもいかないので置いとこ。一瞬、これを武器にと思った自分がいるけど無理だねこれは。
「おう、シャドル。すげぇのぉ、あのドラゴン押し返すとはのぉ。」
「こっちの台詞だよ?オウカこそ、尻尾斬れるなんてすごい!」
シャドルから聞くに、このゲームにも一部モンスターに部位破壊ボーナスはあるらしくそれにより報酬のアイテムが増えるのだとか。へぇ、ならリノギガイアもちゃんと角とか破壊していればもう1本リノギガイアホーンをもらえたりしたのかな。もう過去の話だけどね。
……ところでなんだけど姿が見えないのが1羽ほどいらっしゃるんですけど。
「シギョクはどこ行ったん?」
「あそこ!」
私の問いにシャドルは指を指し示すことで応えた。その方向を見ると……上空に巨大な紫色の玉が浮いてるじゃありませんか。話の流れからしてその紫色の玉がシギョクかと思ったら、その玉のすぐ横にシギョクいたわ。どうもその紫の玉はシギョクが出しているようなんだけども、あれ何?想像は出来るんだけど、念のためシャドルに確認を取ってみよう。
「毒だよ!」
「じゃろうな!」
曰く、シギョクはその体の色から分かるように毒を生成するスキルがあるらしく、シャドルがその素早さで敵をかく乱している間にシギョクは上空で毒を生成して待機。貯めきったら大量の毒をやはり空から敵に浴びせるというのがシャドルの戦略の1つらしい。えげつないな?
「それじゃあシギョク!"ポイズン・ボミット"だよー!」
「クルァ!」
まるでトレーナーのように指示を出すシャドルの声にシギョクも鳴いて答え――その巨大な毒の玉を未だ尻尾を切り取られた痛みから解放されてないダリグリカの顔面に落とした。相手が多数の時は落ちているときにシャドルが魔法を当て雨のように広範囲にばら撒くとか。流石にパーティ組んでるときはやらないらしい。そりゃそうだね!
あーあー、毒も喰らったダリグリカくんジタバタと暴れる暴れる。毒を吐き終えたシギョクはパタパタと羽ばたきながらこちらに戻ってき……あれ?シギョク絞った雑巾みたいになってません?
「いっぱい毒吐き出しちゃうと暫くこうなっちゃうんだよねー。でも他の魔法とかは使えるんだよ!」
「キュルァー」
心なしか鳴き声もか細くなってない?さて、ダリグリカはまだジタバタしていらっしゃるので、私とシャドルは突っ走る。分かっていたことだけど猪突使ってもDEXの差は激しいなぁ……シャドル普通に走ってるだけだよ?シギョクも弱体化しながらも私より速いよ?
「俺はそのまま突っ込む!シャドルは!?」
「私は周りで攻撃してる!"レイ・フレイムボム"!」
前方を走るシャドルが魔法を唱え、周りにフレイムボムを漂わせる。何あれかっこいい。さて、私は猪突のままダリグリカに向かい不動嚙行を突きの構えを取る。そのまま無防備な横っ腹にドーン!今回は打モードで突いてみた。だって斬モードのままだと突き刺しちゃって体に埋まったら嫌だったからね。加えてシャドルの攻撃で次々と爆発音が辺りから聞こえてくる。
それにしても、シャドルが来てから一気に形勢逆転したね。持つべきものはフレンド……でもヤンキーとしては1人で戦えるようになっておきたいね。
いい加減大量のダメージを与えて奴の体力も尽きるでしょ、そう思ったところで状況が一変した。
「グルォアアアアアアアアアア!!オノレエエエエエエエ!!」
なんとダリグリカがまた叫びだしたかと思うと明らかに人語をその口から放ったではありませんか。
「何じゃあ!?」
「オウカ、危ない!」
「?ぶげっ!?」
呆気にとられていると後方からシャドルの焦るような声。その言葉を理解する前に私の体は大きく吹っ飛ばされた。それ自体はいいんだよ。体力もあまり削られたわけじゃあるまいし。ただねぇ、私をぶっ飛ばした張本人であるダリグリカ、思いっきり私を睨みつけてるんだよね。
「ゴロズゴロズ!喰ラウ!ソノ眼をクライ!俺ガ!我ガ!龍トなル!」
……何言ってるだあいつ?




