ファッションヤンキー、助けを呼ぶ
「ガアアアアアアアアアア!!」
「はいはい、熱い熱い」
はい、私今絶賛燃やされております。空に舞い上がったダリグリカの炎のブレスが私を襲ってるんですよねー。幸い、さっきと違って距離も離れているからダメージは少ない。その代わりに服にダメージががが。
くそうくそう、ただの遠距離ならまだ可能性があったけど空中はアカンて。私、空を飛ぶ手段なんて勿論無いし、空に届く攻撃なんて投擲とレーザーしかない。前者はまだゴブリン棍棒とか堅泥団子などストックはあるけど後者はMPが今枯渇状態。回復しきる前に飛んじゃったからなぁ、あいつ。
「あ゛ーちくしょう。降りてきぃや!」
ブレスが終わったところでポーションを飲み、回復したところで無駄と分かっていながらもダリグリカに文句を言う。おや?文句が届いたのか、ダリグリカが降りて……いや、これ私目掛けて急降下して前脚の爪で――やばい!
「ちぃっ!!」
舌打ちを打ち、不動嚙行でこちらに向けられた爪をなんとか弾く。速いなぁ……そんなつもりは更々ないけれど私のDEXで逃げて躱すことは難しそうだ。かと言って受け続けるというのもよろしくない。うーん、どうすべきか。ブレスはどうやら連発は出来ないみたいだから安心だけどね。
そう思案していると急にシステムメッセージが表示された。ちょっと、今ボス戦なんですけど!?ビックリするんですけど!
"近くにフレンドの存在を確認しました。"
"クエストの救援を要請いたしますか?なお、要請は拒否される可能性があり報酬は分割となります。"
え、何このシステム。私知らないんだけど?救援?他のプレイヤーが助けてくれるの?ダリグリカを倒すの手伝ってくれるの?いやいや、待て待て。私はヤンキーだよ?そんな、他の人に助けを求めるなんてねぇ。
ってああっ!そんなこと考えてる間にまたダリグリカ突っ込んできてるじゃん!ええい、もうこのままだとジリ貧なのは分かってるんだ、お試し感覚で要請してみようじゃないの!
"要請を確認しました。"
「っぶねぇ!」
システムウィンドウが出ている間も、攻撃が中止されることは無い。今度の一撃も弾き返すことが出来た。
"要請の受諾を確認。"
"なお特殊クエストのため、ストーリーを辿る必要があります。その間に救援要請プレイヤーが倒れた場合、クエストは失敗となります"
ストーリーを辿るって何?要するにすぐには来れないって事ね。であれば私がやることはその救援の人が来るまで耐えることだね。なんだ、普段からやってることじゃない。耐えることに関しては自信があるよ!だから早く来てください、切実に。
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今救援送ってから何分経った?え、5分も経ってないの?うっそだー!いい加減耐えるのも億劫になってきたんですけれども。回復挟みながらなんとかやってきてるけど、ブレスもさることながら、突っ込んできながらの爪攻撃が神経を使う。あれ、一度喰らったけど馬鹿にならないくらいHP減ったのよ。だから以降はちゃんと弾き返してるけど、何回もやらされると辛いものがある。
えーっと、次の行動パターンは……
「ブレスかぁ……!」
大きく息を吸い放たれるは防御不能のブレス攻撃。避ける速度もないから耐えるしかない。
ダリグリカは目を見開き、私に照準を合わせる。合わせずとも避けられないんだけどね?ああ、口の奥から炎が見える。私、炙られるんやなって。そろそろ服も危ないんだけどこの場合どうなるんだろ。マッパは無いと思うから初期服にでも――
「"フレイムボム"!」
「ムガッ!?」
聞き覚えるある声が聞こえたと思ったら、ダリグリカの顔の上あたりで小規模の爆発が発生した。それにより、ダリグリカの口が強制的に閉じられる。しかし、奴の口内に残る炎は存在したままだ。行き場を失った炎はダリグリカの中で爆発したのか、奴の口の辺りが風船のように膨らんだ。
不意の一撃に気を失ったのか、ダリグリカは自由落下し始める。そして、奴がいた空中に1つの影が存在していた。いや、フレンドが来てくれるとは言っていたけれど……
「ハローオウカ!私が来たよー!」
「お前かぁシャドルぅ!!」
そう、私のリアフレでもあるビーストで魔法職のシャドルだった。まさか、彼女が来てくれるなんて心強いわー……ん?待って?シャドルって犬系のビーストだよね?何で飛んで……羽?紫の羽?何故犬系から羽が生えてるのか疑問に思ったけど、それはシャドルがこちらに来たことで分かった。
「あぁ、なるほどシギョクか」
「そう!シギョクねー、スキルで体の一部を大きく出来るようになったの!」
それで飛べるようになったと。いやいや、待て待て私よ。まだ言わねばならないことがあるでしょうに。
「助かったわ、シャドル」
「んもー、オウカったらずるいよ!ドラゴンなんて燃えるものと戦って……あれ?オウカ燃えてない?物理的に」
「ちぃとのぉ」
「ふぅん?ま、いいや!私はね、オウカから救援が来て受諾したら近くに倒れてたおじいさん……えーっと、ホーネットじゃなくてコークスクリューじゃなくて……」
「コーネスト?」
「そう!そのおじいさんから目つきの悪いヒューマが誰かさんを助けに行ったから救援に行ってくれないかーって言ってたから来た!」
でも、私の犀繰みたいにスピードは出ないから時間がかかったらしい。まぁそれでも私は耐えられたんだからOKだ。
そうこう話をしていると、ダリグリカが目を覚ましたのか呻き声を上げながら起き上がった。
2人してダリグリカに向き合うとシャドルはとても嬉しそうに笑った。
「ねぇオウカ、初めての協力プレイだね!」
その言葉に私も自然と口角が上がる。
「ハッ!まぁ精々楽しく遊ぼうや!」




