ファッションヤンキー、受注者に会う
"送り主 竹輪天 件名 生産依頼についてお願い"
"依頼を拝見しました。希望欄に、学ラン・特攻服どちらかと記載しておりましたが、私としてはオウカさんのお姿を見た上で本当に似合うものを作成したいと考えております。お時間があれば一度お会いできないでしょうか。"
本当に似合うもの、か。私としては確かに似合うものを作ってもらいたさはある。
でもこれホイホイ誘いに乗って大丈夫なのかな?私よりも顔が怖い人に囲まれたりしない……かな?でも本当にいい人だったら作ってもらえる機会を失うし……ううむ。
いいや!ここで怯んでいればヤンキーの名が廃ると言うもの!女は度胸!やるぞ私は!
――ということで、竹輪天なる人の誘いに乗ることにした。と言っても怖い気持ちがないわけではないので、人がたくさんいる生産ギルドに指定したよ。時間はこれからでどうですかっと。
おっと、大玉狸のドロップアイテムを回収するのを忘れちゃダメだよね。
私は、大玉狸が消えた場所に残ったドロップアイテムを拾い確認をする。
"大玉狸の毛皮"
oh、毛皮剥ぎ取っちゃったか……試しに取り出してみるけど想像通りモフモフしていました。これ加工したらちょっとおしゃれな防寒着とかになりそうだよね。
ん?1つだけじゃない?何じゃらほい。
"大玉狸の尻尾"
これは……アクセサリー?アイテム使用してみると不思議なことに私のお尻に狸の尻尾がぴょこんと生えてきたではないか。
メニューを開き、取り外すと選択すれば綺麗に取り外せたし『中古』なんて文字は付かなかった。
可愛い人が付ければさらに可愛くなりそうだよね。あざとくなりそうとも言えるけど。よし、これは売ろう。
変なモンスターとの遭遇はあったが、結構な収入は得たね。お、竹輪天さんからメッセージだ。
"了解しました。これからお会いしましょう。しかし、自分でメッセージを読み直して気づいたのですが、少し怪しい誘いのような文面になったこと謝罪いたします。私としましては不埒な行為をするつもりは神に誓ってありませんが、不安に思われたのでしたら知り合いの方もお連れになっていただいて構いません。"
結構長いメッセージ来たな……でも本当に悪い人ならこんなメッセージ送ったりしないだろうし大丈夫だろう。この人は何となくだけど信用してもよさそうだし1人で行っても問題なさそうだ。
別にパックンさんのお手を煩わせないように誘わなかったわけじゃないよ!忙しいだろうしね?
・
・
・
ワンズフォレストから死に戻り以外で戻ったの初めてです、オウカです。
生産ギルドの前に来たんだけれど、そういえば私、竹輪天さんに私の特徴とか言ってなかったな。メッセージで"これから生産ギルドの入り口の扉を開けますので確認したら声を掛けてください"っと!
もちろん私以外に入ろうとしている人がいないことを確認したうえで送信。竹輪天さんからも"分かりました。私も入り口の近くでスタンバイしてます。"ってメッセージが来たから扉を思いっきりドーン!この前同様視線が集まるが……さて、竹輪天さんはっと。
「あの。」
「あン?」
上方から声?声のする方に視線を向けると……うおっ!?この男の人、私よりもでかっ!しかも耳尖ってる!エルフ?
突然の長身エルフの登場に声の出ずにいる私に長身エルフは声を掛けてきた。
「もしかして、オウカさんでしょうか?」
私の名前だ。この名前を知って、このタイミングで声を掛けたということはこの人は――
「竹輪天さん?」
「えぇ、俺……じゃない。私はあなたの依頼を見てメッセージを送りました、竹輪天です。以後よろしくお願いします。」
竹輪天と名乗ったエルフは、腰を30度ほど曲げ綺麗なお辞儀をする。私も思わずお辞儀をして返してしまう。ヤンキーが何やってるんだとは思うよ?でも礼には礼で返さなきゃ失礼じゃん。
しかし、竹輪天さん凄いキマっているなぁ。ファンタジーの世界のはずなのに来ている服はどこか現代チックだ。とても似合っていらっしゃる。あ、やべ私も名乗らなきゃ。
「えっと、私……じゃなくて俺はオウカだ。ヤンキーRPをしとる。」
「おぉ、やはりそうでしたか。依頼を探していた時に目についたんだ……ですよ。他の人は皮の鎧とか武器なのに1人だけ服?って思って。」
「のぉ、窮屈なら敬語じゃなくてもいいぞ?」
「そう言ってもらえると助かる。」
やっぱり敬語で話すの苦手だったのね。まぁこの人の方が年上だろうしため口でも何ら問題ない。何なら私の方が失礼まであるからね!
挨拶もそこそこに、話していたのは扉の前だったので通行の邪魔になるのでとりあえず、生産ギルドの中へ進むことに。
「なるほど。ヤンキーRPをしているだけあって本当に防具を除いたら様になっている。」
「そうなんよ。じゃけぇ作ってもらおうと……出来るん?」
「勿論だ。だが、メッセージでは言っていなかったが俺は昨日の夜から始めたからまだレベルも9なんだが……俺でいいのか?」
まだとか言わないでください、私はまだレベル6なんですから。
さて、作ってもらうかどうかだけど、ぶっちゃけ竹輪天さんの着ている服すっごいスタイリッシュで格好いいし私の服も出来ることなら作ってもらいたいから――
「寧ろ頼ませてくれんか、私に似合う服を作ってください。」
最初、竹輪天のメッセージをおじさん構文にしようとしたのはここだけの話。




