ファッションヤンキー、救出へ向かう
「思ってる以上に厄介事の気配がするのぉ」
『姉貴、目標が見えてきたぞ』
モヤモヤする私の独り言を無視して犀繰が告げる。ここまで走らせてきたが、何も適当な方角に進んでいたわけではない。ナイスミドル――もとい本名コーネストから借りたコンパスのようなアイテム。彼が言うにはフェリーン様とやらがいる方向を矢印が指し示しているんだとか。それ常時示してるのならフェリーン様プライベート無いのでは?とは思ったけど、これがなくちゃ見つけられなかっただろうね。
さて、犀繰が見つけたと言ってたけど……何もないんだが?犀繰から降りてキョロキョロしても人っ子一人いない。おいおいおい、犀繰さん?
「犀繰?壊れたか?」
『まだ現役だ。だが、姉貴には視認できないか。であれば姉貴、何かしらを前方に投げてみてくれ』
犀繰には何が見えてるんだろう。ま、私が物を投げてみれば判明するみたいなので、リクエストにお応えして堅泥団子を前方に向けて――シューッ!!
するとなんとビックリ。私の投げた堅泥団子は何にも触れてないのにガラスを割ったような音を立て空間を割った。自分でも何言ってるか分からないけど、それ以外形容しようがないよ?しかも、堅泥団子が割った空間。そのヒビがどんどん広がり……おお、大きなテントが現れた。
「嘘じゃろ?何もなかったのに……」
『範囲のものを視界から隠す結界魔法のようだ。生憎ゴーレムはそういう類は効かないからな』
壊れてるとかとんでもなかった。犀繰さんマジパネェっす。ってかあれ?何か一人倒れてる。額にデカいたんこぶ付けてまぁ。……ん。この倒れてる奴の傍に散らばってるこの土。堅泥団子?そうか、不幸にも直撃しちゃったんだね。
「おい!結界が破れたぞ!」
「はぁっ!?ちょっとやそっとじゃバレねぇ魔道具だって言ってたじゃねぇか!」
「知るか!くっ、見張りのピーバはどうした!」
「護衛共は痛めつけたはずだ!新手か……?おい!誰かこいつ見張ってヨルクを起こしとけ!」
テントから聞こえる複数人の怒号。見張ってろだの言ってたしフェリーン様を誘拐した奴らでいいのかな?なんてことを考えてたら武装した男たちがぞろぞろと出てきた。ひーふーみー……7人か?まーどいつもこいつも怖い顔しちゃって
「何だテメェ……俺らに何の用だよ!」
「すまんのぉ、ここに可愛い子来とらんか?えらく美人なんじゃけど」
容姿については、コーネストと似た服を着ているしか聞いてないけどね!私の問いに、推定誘拐犯は忌々し気に舌打ちをするとすぐに厭らしい顔つきに変わる。
「知らねぇなぁ。俺たちはただここで休んでいただけだぜ?」
「ここに居場所を教えてくれる位アイテムがあるんじゃけど」
腹の探り合い?ハハッそんな面倒くさいことはごめんですよ。コンパスを片手に持ち、ひらひらと揺らしながら見せびらかせると推定誘拐犯は頭を抑え頭を振った。
「おいおい、聞いてねぇよそんなのよぉ!ちっ、テメェらこのふざけた格好の奴ぶっ殺すぞ!」
「「「「応!」」」」
私と受け応えしていた男の一声で、推定から確定誘拐犯達が武器を振り上げ迫ってくる。勿論そのまま受けてもいいが、今回はイケイケで行こう。
目を細め、笑みを浮かべて――暴龍眼発動。
「掛かってこいやぁ!」
瞬間、誘拐犯達の足が一縷の例外もなく止まる。どうやら私に掛かって来れるほど脅威になる奴はいないようだね、安心したよ。とりあえず不動嚙行で殴っておこう。恐らく殺しちゃうより生かしておいた方がコーネストからしたら助かるでしょ。
余程私と誘拐犯達の間でレベル差があったのだろう。私が全員を気絶させるまで誰一人動くことは叶わなかった。よし、これで後はフェリーン様を助け出せればと思いたいけど。絶対まだ終わりじゃない。
そもそもだ。ここまであっけなくやられたこの誘拐犯達がコーネスト達を下せるのかな?私の眼を臆することなく見返したコーネストが弱いとも思えない。他にも護衛がいたわけだしね?まだ、何かあるのかな?
「ふわぁ~あ……なんだ。やられてんじゃねぇか」
私の考えを肯定するようにテントから酷く落ち着いた低い男の声が聞こえた。フェリーン様という線は……無いよね。テントの布を掻き分けて出てきたのは2メートル……いや、それ以上の身長の大男だ。ヒューマではない。かと言ってドワーフでもエルフでもない。じゃあビースト?……いや、私は腕に鱗がはえて頭に枝分かれした角を生やしたビーストなんて知らないよ?
「おう、ちいせぇの。テメェか。」
「あ゛?」
幾余年聞くことの無かった蔑称。イラっとした私は流れるように首を下から上に動かし私を見下ろす、そいつに視線を向ける。そこで奴と目が合った。眼と目が合った。




