ファッションヤンキー、怒れる何かを呼び起こす
「このっ、離れなっさい!」
「うおっ!?」
幼女とは思えないほどの力で無理やり引っ張り上げられ投げられた。危なげながら着地は出来たけど2倍ほどある体格のある相手を遠くに投げるかね、普通。
さて、私のレーザー攻撃を受け、胸の辺りに穴が開いたパックンさん。穴を一瞥すると大きくため息をついた。
「アンタ何をしたのよ?」
「何じゃろうなぁ」
いつものようにパックンさんの店の前で話すならまだしも、対戦中に手の内ばらす奴がいますか!幸い、レーザーの発生源はバレていない様子。もう1回は撃てるから焦らずいこう。
パックンさんも私が答えないというのは何となく分かっていたようで、舌打ちし、距離を詰めてくる。その両手にはやはり槌か。ん?いや、右手の槌がさっきと違うな?
「てやぁ!」
「ラァ!」
その右の槌が振るわれるが、まぁやることは変わらない。不動噛行で受け止める。……待ってパックンさん不敵な笑み浮かべてない?もしかしてこれ受け止めちゃヤバい奴なのでは?しかし後悔してももう遅い。出した勢いは止まらず不動嚙行と槌はぶつかり合い――閃光と派手な音を立てて爆発した。
「ぶへぁ!?」
襲い掛かる爆発の衝撃にたまらず声を上げてしまう。不動嚙行に爆発機能なんて無いし、火花が飛び散って粉塵爆発なんて以ての外。であれば爆発の原因はパックンさんの新しく出した槌で間違いないだろう。接触したら爆発なんてひどくないですか?
「どう?驚いたかしら」
爆発によって巻き起こった粉塵が晴れると、してやったりと言いたげなパックンさんが仁王立ちで立っていた。
「爆発音はドッキリの定番じゃけど本物はやめーや」
こちとら至近距離で爆発受けてんのにパックンさんはケロッとしている。所有者には被害が及ばない仕様なのかな?何とも厄介なことで。かと言って、距離離したところで感はある。であればどうするか……突っ込むしかないかやっぱり!それしか出来ないからね!
「行くぞオラァ!」
気合の声を上げ強く地面を踏みしめる。発動させるのは"猪突"。一気に距離を詰め、今度はボディタックルではなく、速度を利用し、渾身の力を込めた不動嚙行での一振りだ。これに対してパックンさんは爆発する方の槌を構え防御の体勢だ。
「あら、何とかの一つ覚えって奴?」
「馬鹿はこれくらいしか出来んけぇのぉ!」
「ちょっ、わざわざ伏せたのに自分で言う!?」
あ、気を使っていただいたんですか、それはどうも。さて、再度不動嚙行と槌がぶつかり合う。仮に爆発がMPを消費して発動する物だとしても、私と違ってパックンさんはMPは十分あるだろうし複数回使えてもおかしくない。それを証明するように、先ほど同様の爆発が発生する。ダメージは受けるが全損したわけではない。勿論粉塵も巻き起こるが――パックンさんのいた位置は覚えている!
腕を伸ばし……ふさっとした感触が手に当たる。これだ!私は手のひらに当たったその物体を思いっきり掴む!
「んぁ!?アンタ何私の頭掴んでんのよ!?」
「ハッハァ、捕まえたでぇ……」
そう、私が掴んだのはパックンさんの頭部だ。さらに持ち上げようとすると、これまたいとも簡単に持ち上がる。ってか軽い。"リフトアップ"の効果もあるんだろうけどそれでも負担なくいけたんですが。ちょっと心配になるレベル
「あの、パックン。もうちょっと食べたほうが」
「ゲームで何言ってんのよ!」
そうなんだけれどもね?
「ってか離しなさいよ!このっこのっ!」
ははは、漫画とかアニメでよくある光景だよね。小さい子供が大人に持ち上げられて、拳を振るって抵抗しようとするけど腕が届かず空振りまくるって奴。まぁアレと違ってパックンさん両手に槌持ってるわけでしてね、普通に当たるんだよねこれ。私じゃなければ一発貰って即手放していたろうけど、そこは私クオリティ。離しはせんよ!でもダメージ馬鹿にならないからさっさと――
「おぉ、分かったわ。離しちゃろう!!」
「っぶ!!」
不動噛行で腹に強烈な突き。パックンさんは短い悲鳴を上げ私の手を離れ吹っ飛んだ。顔は止めときな顔はって訳じゃないよ。ただ、流石はトップ生産職。斬モードで突いたはずなのに刺し貫かれることは無かった。そういう耐性でもあるのかね?
んでもって戦闘終了のアナウンスは流れない。マジですか、今の大分自信のあった一撃なんですけど。勘弁してよ、そろそろ私体力尽きるよ?
「やって、くれたわねぇ……!」
やっべ、今まで聞いたことないレベルで低い声してる。マジ切れしてないですか、あのロリドワーフ。あの?何かあなたの何倍ものありそうな大鉄槌が見えるんですけど?それ人に向けるような物じゃないと思うんですけど?
「いいわ、まさかこれを使うことになるとは思わなかったけど。本来、大型モンスター用よ?」
「モンスターじゃないんじゃが!?」
「モンスターみたいな目とか所業しといて何言ってんの!"山潰し"!」
スキル名か、はたまた武器名か分からないけど、大鉄槌の面が私目掛けて落ちてくる。かなりの勢いで降ってくるそれを見て私は察する。犀繰居たら避けれるけど猪突のスピードじゃ無理だわ。……待てよ?もしかしたら――
「止まれぇえええええええ!」
僅かな可能性に欠けてレーザーを発動!これで、勢いが弱まるなり弾き返してくれれば……はい、ビクともしませんでした!レーザー霧散しちゃいました!残された選択肢は受け止めるくらいか。御弾鬼も使えばなんとかなるかな?少しばかりの恐怖はあれど、降参も撤退もする気はない。よし、覚悟完了!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
プチッ
"『パックン』WIN!!"
ははっ圧倒的な力の前では無力なんだなぁって




