表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月に願いを。月に想いを。  作者: 小鳥遊 雪都
月が綺麗ですね・・・。
7/9

Tシャツ。

紫月しづきさん・・・っ・・・意地悪ですよ・・・」


そう言いながら私は私を抱きしめてくれている紫月しづきさんを抱きしめ返すのを戸惑っていた。

本当ならすぐにでも力いっぱいに紫月しづきさんを抱きしめ返したい・・・。

けれど、今、抱きしめ返してしまったら紫月しづきさんに私の涙や鼻水がべったりと付いてしまう・・・。

今だって少しはそれらが付いてしまっているだろうけれどこれ以上、それらを紫月しづきさんに付けるのは本当に申し訳ないし、それで嫌われたらと思うと紫月しづきさんを抱きしめ返すことなんてとてもできなかった。


「あれ? え? 抱きしめ返してくれないの?」


そう聞こえてきた紫月しづきさんの怪訝気な声は私の右耳のすぐ横・・・。

本当に今の私と紫月しづきさんの距離は近い。

身体は・・・だけれど・・・。

心は・・・わからない・・・。

今の私と紫月しづきさんの身体の距離は本当に近いけれど、目に見えない心の距離はわからない。

もしかしたら今も紫月しづきさんの心は遠いままでこの恋愛は紫月しづきさんからしたらただの暇潰しの『ごっこ遊び』で私の一方通行なのかも知れない・・・。

それでも紫月しづきさんと一緒に居たいと願う私はどうかしている・・・。


「だ、だって・・・私・・・今、顔・・・ぐちゃぐちゃで・・・」


私がそう言い終わると紫月しづきさんは私をあっさりと抱き離し、私の顔を真っ正面からまじまじと見て『プッ・・・』と失礼にも吹き出し、ニヤリと笑った。

紫月しづきさんのそのニヤリ笑いに私は嫌な予感しかしなくて逃げようと身構えたけれど、私が動くよりも紫月しづきさんが動く方がはるかに早かった。


「ちょっ!? しづッ・・・んんっ!?」


かなえちゃん、確保~♪」


そう言われた私は紫月しづきさんの胸に顔を埋め込まれ、もがいていた。


「よ~しよ~し。私の胸で存分に泣きな~」


そう言って笑いながら私の頭を押さえ付け、わしゃわしゃと私の頭を撫でてくれている紫月しづきさんの手を私はなんとか逃れ、激しく咳き込んだ。


「え? あ、大丈夫?」


「だ、大丈夫じゃないですよっ! 窒息死するかと思いましたよ!?」


私はそう言いながらまだ咳き込んでいた。

本当に窒息死するかと思った・・・。


「あ~ごめんね? 豊乳で~」


そう言って苦く笑う紫月しづきさんの胸を見て私は小さく溜め息を吐き出した。

そんな私を見て紫月しづきさんが『・・・何?』と声を発する。


紫月しづきさんは豊乳って言うか・・・貧乳ですよね?」


「・・・あ? 何? ケンカ売ってんの?」


「だって・・・本当のことだし。それに・・・他に勝てるところ私にはないし・・・」


私はぶつぶつとそう言って自分の胸へと視線を落とし、また溜め息を吐き出した。


「てか、紫月しづきさんが貸してくれたこのTシャツ・・・おかしくないですか? 紫月しづきさんが着ているそのTシャツも・・・」


「え? そう? 似合ってるよ? ショッキングピンクの『どMっ娘』Tシャツ」


そう言ってクスクスと笑う紫月しづきさんの着ている黒地のTシャツの胸元にはデカでかと白い字で『自由人』と書かれていて私は内心、頭を抱えていた。

紫月しづきさんはちょっと変なところがある。

飼っている金魚には変な名前を付けているし、変なキーホルダーを待っているし・・・。


「そのTシャツが嫌なら脱いでもいいんだよ? Tシャツの下はノーブラのかなえちゃん」


紫月しづきさんのその言葉に私は顔をしかめていた。

そんな私を見て紫月しづきさんはクスリと笑う。

ああ、本当に敵わないし・・・本当に対等じゃない・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ