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月に願いを。月に想いを。  作者: 小鳥遊 雪都
月が綺麗ですね・・・。
6/9

汚い泣き顔。

かなえはご両親のこと・・・好き?」


私の話を一通り聞き終え、まず紫月しづきさんが発した言葉はそうだった。

紫月しづきさんはいつも私の話を最後まで口を挟まずに聞いてくれる。

私の話す話なんてきっとつまらなくてイライラしてしまうこともあるはずなのに私が楽しかったことや嬉しかったことを話すと紫月しづきさんはニコニコしながら聞いてくれていて時々『そう』とか言って微笑んでくれる。

逆に私が嫌だったことや辛かったこと、イライラしてしまったことを話すとその視線をやや下に向け、話の合間合間にこくりこくりと頷いて聞いてくれている。

きっと聞いている内には私が悪くて『それは違う』と口を挟んでしまいたいこともあるはずなのに紫月しづきさんはいつも私の話を最後まで口を挟まずに聞いてくれる。

そんな紫月しづきさんのことを私は素直に凄いと思うし、尊敬するし、見習いたいと思う。

紫月しづきさんは私の憧れだ。


「好き・・・でした。けれど今は・・・わかりません」


私は込み上げてくる嗚咽を必死に噛み殺し、そう言って何度拭ってもあふれ、こぼれてくる涙をイライラしながら手の甲で乱暴に拭い続けていた。

ふと、その両手を紫月しづきさんに掴まれ、私は固まった。

滲む視界に見えたのは紫月しづきさんの整った顔・・・。

その距離は息を吐き出せばその吐き出した息が紫月しづきさんに掛かってしまうほど近い・・・。

私はその近い距離にも戸惑っていたけれど、何よりも汚い泣き顔を紫月しづきさんに見られたくなくて掴まれた手を振り解こうと必死の抵抗を試みた。

けれど、そんな抵抗はすればするほど虚しくなるほど無意味だった。


「は、離してくださいよぉ・・・」


そうなんとか言った私の声は情けなさ過ぎて笑えてしまうほどだった。

そんな私を迷わず笑うのが紫月しづきさんだ。

紫月しづきさんは私の両手を捕まえたまま本当に愉快げにクスクスと笑っていた。

紫月しづきさんに笑われ、私の目からは量の増えた涙がバタバタと溢れて落ちていった・・・。


「笑わないで・・・くださいっ・・・。手を・・・離してくださいっ・・・。汚い泣き顔なんて・・・見られたくない・・・ですっ!」


そう必死に訴える私を見て紫月しづきさんはまたクスクスと笑った。

本当に紫月しづきさんは・・・。


「本当に汚い泣き顔~」


そんなひどいことを言いながらそっと私を胸に抱きしめてくれる紫月しづきさんは意地悪でズルくて大人で優しい・・・。

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