お風呂。
「あの・・・紫月さん?」
「ん~? なぁに? 叶ちゃん」
そう言ってクスリと笑った紫月さんはズルい・・・。
私が何を言いたいかなんてわかりきっているクセに・・・。
私は目の前に居る紫月さんから目をしらし、それだけじゃ足りなくて俯いた。
俯き、見えたゆらゆらと揺れる水面・・・。
そこに映った私の顔はひどく恥ずかしそうだったけれど、それ以上に幸せそうだった。
「なんで・・・なんで紫月さんまで一緒にお風呂・・・入ってるんですか?」
私は先程から疑問に思っていたことをなんとか訊ね、溜め息とも呼吸とも取れない息を吐き出した。
私と紫月さんは今、1つのバスタブの中に向かい合って入っていて、もちろんそのバスタブの中にはたくさんのお湯が入っているのでお互いに全裸なわけで・・・。
そして、全裸だからいろいろと見えるわけで・・・。
「叶さ・・・」
ポツリと私の名前を呼んでくれた紫月さんに私は『はい?』と返事を返し、チラチラと向かい合っている紫月さんを見つめ見た。
私は元々、人の目を見て話をするのが苦手だ。
それなのにこの状況・・・。
私にとっては罰ゲーム以外の何ものでもない。
「・・・乳、デカいね」
「ひぇっ!? な、何をいきなり言い出すんですか!?」
紫月さんのその思いもよらない言葉に私は慌てて自分の胸元を手で隠し、クスクスと笑っている紫月さんを横目がちに見つめ見てドキドキしていた。
紫月さんは綺麗だ。
紫月さんのその身長は170センチ・・・。
その長身の上にその身の細さはモデルさん並かそれ以上・・・。
それだけでも十分、紫月さんは目立つのにその上に紫月さんは色白でその肌の白さを際立たせている艶やかな長い黒髪からはいつもいい匂いがしていて、毛先にだけ掛かった緩いカールはお洒落で可愛らしくてそんな髪の掛かる紫月さんの顔は女優さん以上に美人さんでなんの特徴も特技もない普通の女子高生の私なんかが近づけるような人じゃないのになぜか私と紫月さんは一年ほど前から付き合っていて・・・。
しかも私と紫月さんは同性で7歳もの年の差で性格は真反対で本当に変なカップルだとは自分でもわかっているけれど別れられないほど私は紫月さんにぞっこんで・・・。
「いや、大きいな~・・・と思ったから言っただけだけど? 最近の女子高生は発育いいね~」
茶化す様子はなくそんなことを言ってきた紫月さんに私は何も言い返せずにいた。
「そろそろ私は上がるけど叶はどうする?」
突然のその問いに私は少し、戸惑った。
「・・・もう少し・・・入っています」
「そ。じゃ、ごゆっくり~」
紫月さんはそう言うとニコリと笑ってさっさとお風呂からあがり、脱衣場へと行かれてしまった・・・。