初戦闘
「これでよし、と」
イズルは防具を体につけ、ギンの方を眺めていた。
「悪いなイズル、怪我しないため最低限の防具はしてもらう。それで・・・お前はなにを使って闘うんだ?」
イズルは色々考えたが、万が一でも彼に怪我をさせてはいけないと考え、武器は持たず素手での戦闘を希望した。無論ギンも武器は持たずステゴロだけの勝負になった。
(初めての実践だ、取り敢えずはリミッターを外さずに戦ってみよう)
「始めッッッ!!!!」
試練の開始を告げる声が聞こえた。
しかし、ギンは構えたままそこを動かなかった。
「よし・・・来ないならこちらから行かせてもらう!!」
イズルはそう言うと一歩で距離を縮め、低い姿勢でギンの懐に入った。イズルは素早いパンチをいくつも繰り出すがギンはその全てを捌き、受け流していた。ギルドNo.2と言われる実力は疑いようがなかった。
「やっぱり一筋縄じゃ行かないな」
そう言うとギンは満面の笑みを浮かべ
「当たり前だろ?これでも長い事冒険者やってんだ。まだまだ負けるわけにはいかないぜ」
本来ならここらで降参しても誰も文句は言わなかっただろう。しかし、イズルの心に眠っていた戦闘に対する野心が目を覚まし、少しずつだが手加減というのをしなくなっていった。
「まだまだ行くぞ・・ギン!!」
ギンはイズルがこっちに向かって突っ込んでくるのを理解した時には既にイズルはギンの懐に潜り込んだ後だった。
(なんか...!さっきから段々早くなってねーか!?こんなラッシュ受けたことねーぞ!?)
イズルが先程と同じ感覚で放ったパンチのラッシュはギンからすれば、捌ける捌けないの前に立っていられるか否かの瀬戸際になっていた。
「これは・・・ダメだな」
ギンは避けるのを諦め、目を瞑り最低限のガードをして身を守ることにした。
しかし・・・
ギンがゆっくり目を開けるとそこには自身が装着していた防具がバラバラに壊れて落ちていた。
「いやあ、やっぱりあんたを殴るのは夢見が悪いわ」
そういって落ち着きを取り戻したイズルは両手を挙げ降参を宣言した。
ギンも腰が抜けたのかその場に座りこけて
「ははっ・・・、参ったねこりゃ・・・」
「イズル・・・合格だ。
俺たちのギルド 鋼鉄の意志へ歓迎する」
「ああ、こちらこそよろしく、ギン」