アリサは雷魔法を夢見る
「なあ、なんで船なんだ?」
「だって俺たちお尋ね者になっちゃったじゃん、陸続きで逃げるより海は逃げた方がいい気がしてな」
——港町【フラスハイド】
船を降り最初に目に付いたのは真新しい手配書
ーイズルー
生死問わず 金貨2枚
とだけ書かれていた。
肩にかけていたバックパックがストンと地面に落ち、イズルも膝から崩れ落ちる。
安すぎる、金貨2枚って...ちょっといい剣でも買ったら無くなっちゃうよ...
「き、気を落とさないでください!これから!これから上げていけば良いんですよ!」
「そ、そうだよな!おれたちこれからだもんな!」
二人ともイーリアに拳骨を1回ずつお見舞いされこの話は幕を閉じた。
ふと気になりアリサに聞いてみる。
「アリサー、残りの資金ってどれくらいある?」
アリサは持っていた袋をひっくり返し手のひら内で数えだす。いや、数えていない見ただけで分かっていたが現実から目をそらしていただけだ。
「銅貨...5枚です」
銅貨一枚でやっすいパンが一つ買えるくらいだ。
少なくても今晩の宿代には全く足りない。
「依頼だ!依頼をクリアするぞ!!」
——港ギルド【海上の鎖】
「あんらー!貴方達ファランクスの子達なのー??ギンちゃん!元気してたー?」
「あ...ハイ...割と元気だった気がします....」
アリサの目が泳ぎまくって大変なことになっている。オネエと言われる人を初めて見たのだろう。最初のインパクトはきついが話してみると意外と博識な人が多く会話は楽しくなることが多いもんだがな。しかしやはりインパクトが強い
その隙にと言わんばかりにイーリアと二人で手頃な依頼書を必死に探す。
が、手頃な依頼は海の魔物が多く知識がないイズル達には討伐は難しい。
「ん?イズル、これなんかどうだ?」
イーリアが手にしたのは近くの森に生息している熊型の魔物の依頼だった。手頃な値段だし2体討伐、強さはそうでもないのかと思いこれに決める。
「オネエさん、これ俺たちがやるよ!それじゃ、アリサ行くぞ!」
「あ!ちょっとそれは...」
オネエの人が止めようとする頃にはもう三人はギルドを後にしていた。
——
「酷いです...私だけほったらかしにして...恨みます...末代まで恨みます」
オネエと話をさせただけで恨まれる俺の子孫が可哀想だ。
森へ着く頃にはもう日は落ち始めあたり一帯が薄暗くなってきていた。
早めに狩らないと真っ暗になったら依頼達成は絶望的になる。そう思ったイズル達は足早に森へ入りベアトリーチェを探し始める。
「静かに...!」
やっとの思いで見つける。とりあえずこれで一匹だ。
イーリアが後ろから飛びかかり首元へめがけ剣を振り下ろす。しかし...
「なっ...!こいつ物理攻撃が効かないぞ!?」
厚い毛皮のせいなのだろうかイーリアの剣での不意打ちは魔物の肉に届くことなく体毛を少し切り落としただけで失敗に終わった。
「まずい!」
イズルは即座に飛び出して上空から攻撃を仕掛ける。
両の手で溜め込んだ魔力を一気に放つ。
魔力は雷へと変わり鋭利な形になって多くの流星群のような形になりベアトリーチェを襲う。
イーリアに気を取られたベアトリーチェはこちらへの対応が遅れていた。
もろにイズルの攻撃を受け防御も間に合わず地面に倒れる。
「あっぶねー!後ろ取ってなかったらやばかったかもな」
「すまない...私が仕留められていれば」
「いや、これは仕方がないあんな物理耐性があるとは思わなかった。簡単な依頼だと思って気が緩んでいた。もう一体の方は...」
「きゃあっ!」
隠れていたアリサの叫び声だ後ろを振り返ると先ほどより少し小さいがそれでもイズルの身長の二倍はある。
「二匹ってつがいって事だったんじゃあ...」
ベアトリーチェは雄叫びをあげるとアリサに向かい爪を振り下ろす。しかも相当素早い。
暗闇の中に見える一筋の閃光
アリサを抱きかかえベアトリーチェの爪の攻撃をかわしイーリアの元へと運ぶ。
「物理が効かないんだったら俺の方が戦闘に向いている。イーリア、アリサを守っていてくれ」
「ああ、わかった」
————
倒すのにそれほど時間はかからなかった。
物理耐性は高いが魔法耐性は低くコツさえつかめば討伐するのは容易だった。
汗をぬぐい倒した証拠として大きな爪を持って帰ることにした。
「お待たせ、大丈夫だったか?」
「ああ、特にこちらに支障はない、だが...」
アリサの方を指差す。
目はやる気気合いにあふれている。何が彼女を刺激したのか分からないがイズルに歩み寄ると
「私も!雷の魔法使ってみたいです!」
イーリアと二人で目を合わせる
「「....?」」
「「えっ!?」」