知らない所
アリサに大きく手を振り返しその場を後にするとスレイがヨロヨロと歩いてきた
「...聞いていいかな、君の強さはどうやって出来上がったものなんだい?」
「まあなんて言ったらいいか...何年もの訓練の賜物...て事で良いかな」
「...血の滲むような努力をしてきたんだね、すごいな」
確かに、血の滲む努力はしてきたな主にモニター越しに
「君なら大丈夫だろう...」
「ん?何か言ったか」
「いや、何でもないよ それより君の表彰が始まるみたいだよ」
スレイが指差す方にはいつ出てきたのか赤いコートに身を包んだアフロでサングラスをかけたいかにも変な人が拍手をしながらこちらに向かって歩いてきた。
「いやー二人とも白熱した試合を有難う!」
どこか聞き覚えのある声だと思ったら試合のアナウンスをしていた奴じゃないか
「そう!この俺こそが大会アナウンス兼大会実行委員長兼大会スポンサー、そしてこのカルムの都市のキングなのさ!!」
王様?
「嘘はやめてくださいゴルドさん、貴方はこのカルムの領主であって王ではありません」
「固い事言うなあ!スレイ君はよお!」
そう言いながらおもむろにスレイに近づくとアリサが使う回復魔法のように手に光を灯しスレイの傷をみるみるうちに回復させた。
「回復魔法...ですか?今の」
「そう!今はカルムの領主、なんて地味な仕事をしているが昔はヒーラーゴルドなんて呼ばれてそれそれは有名だったんだぜ?」
うわ似合わねえ
「おっと...話が逸れちまったな、ともかくイズル!優勝おめでとう!そしてこれが賞金の金貨50枚...」
「あ、ありがとうございます!」
「...相当の金のゴルド像だ!!受け取ってくれ!」
金のゴルドがサタデーナイトフィーバーみたいなポーズを取っている
(うわだっせえ)
「そして次は賞品の授与だ!今はプレミアが付いていてもうどこにも置いていない...」
「あ、ありがとうございます!」
「ヒーラーゴルドのサイン入り色紙だ!受け取ってくれ!」
(ゴミじゃん)
その色紙には殴り書きで
『ゴルドより愛を込めて...カリーナへ』
そう書いてあった
「俺宛ですらないじゃん」
「・・・、この辺りでこの伝統あるトーナメントの閉会を宣言する!!!」
「え!?もう終わり!?」
観客は盛り上がっていたが俺には何に盛り上がっていたのかさっぱりわからなかった。観客が荷物を求めて帰ろうとするのでイズルも渋々アリサの元へ帰ろうとすると
ゴルドに肩をガシッとつかまれ
「君は俺と一緒についてこい」
そしてそのままずるずるとどこかに連れて行かれてしまった。
どこかの部屋ーー
「あのー...自分何されるのでしょうか...」
訳のわからないまま謎の部屋に連れて行かれイズルは混乱していた。
「そう固くならなくていい!優勝者である君には今からある場所に行ってもらうだけだ。無論断ってもいい」
イズルはホッとし
「そうなんですか、それじゃあ謹んでお断りさせていただきます」
「ダメだ!!!」
あーもう滅茶苦茶だよ
「取り敢えずさっさと行ってこい!話はもうつけてある!」
ゴルドはポケットから白いカードを取り出しイズルに向かって投げつけた。
「あのー...これは?」
「持ってろ」
「はい」
ゴルドがそのカードに魔力を込めると
イズルの視界は真っ白になった
そしてその白さが色味を帯びてくると
いつの間にかイズルの目の前にゴルドはおらず宮廷のような場所に立っていた。
「・・・ここどこ」
背後から殺気のようなものを感じ剣を抜く
「ほお...私の殺気に気づくか」
そこには鎧を身につけ腕組みをしている男がこちらを睨んでいた。剣を抜く気配がない事から敵意はないように思えた。その男は振り返りながら
「王よ!この男はなかなか骨のある男のようですぞ!」
そこには玉座に座り楽しそうに笑っている人がいた
「お前が初見の男をそこまで言うとはな、ハイエン」
「ええ、この歳でこの技量 末恐ろしく存じます」
状況が飲み込めないイズルに王と呼ばれる男が
「君の名前を聞かせてくれ」
突然の事にイズルは混乱し土下座をしながら
「あ...!わ、わたくし!日本から来ましたイズルと言います!」
「ニホン?聞いた事のない国だな、それはどの辺りにあるのだ?」
「えーと...東?」
「東...確かにまだ未開の地が多いところだが...このような者がいるとは」
「あのー...それで自分はなんで呼ばれたのでしょう」
王は首をかしげ
「ゴルドから聞いていないのか?全く...あいつはいつもいつも...」
王は大きなため息を一つつき
「君には人探しをしてもらいたいのだ」
ハイエンは一枚の写真を取り出しそれをイズルに渡した。
王は、
「その子はアリーシア、私の娘なんだ」
イズルがその写真を見ると驚愕した。
服装も違うし髪型も少々違うがその写真に写っているのは
アリサだった