ステージ1-8・進化とか、進化権とか……難しい
進化。
それは生物が環境に適応する為に行う本能のようなもの。
地球ではガラパゴス諸島のガラパゴスゾウガメや人間の猿からの進化などが有名だ。
だが、俺はこの進化というものがあったのか謎に思う。
猿から人間に進化などあまりに非現実だとは思わないだろうか?
これは俺の持論であるが、この進化論には大きな欠陥があるのではないかと思っている。
詳しいことは知らないが、人間の進化論は猿が遠くを見渡すために二足歩行し始めたというものだ。
だが、そう考えた種族が猿だけなのはあまりにもおかしいと思う。
俺は進化論ではなく、人間は異世界から突然やってきた種族なのではないかと思っている。
なぜなら人間は生物として異常だからだ。
地球の人間は皆アホだ。
しかしだ……賢い人間はアホだが、馬鹿な人間はもしかしたらアホではないかもしれない。
なぜなら何も知らないがゆえに新しい発想ができるからだ。真実を知ってしまうとそこで知識は止まる。
その真実が真実とは限らないというのにどうしてその知識を信じれるのだろう?
まぁいい。
俺が言いたいのはそういう進化の話ではない。
『ゲーム』の進化の話だ。
俺は今、この世界の生命の仕組みについて聞いていた。いや、魔法の話をしてもらうはずだったのがいつの間にかそういう話になっていたと言った方が正しいだろう。
まぁ、終始魔法に関係がある事柄なので文句はない。
「魔法っていうのは、かつて人が『絶対進化権(直訳)』というものを使って長い期間をかけて遺伝子に刻んだものなんだよ。」
ホムルンはそう語る。
つまりこの世界の生物全てに『絶対進化権』なるものが備わっており、それが魔法という異能の正体なんだとか。
……だが、この話とは関係なくとある問題があった。俺について来てくれた護衛カオス過ぎるので全然話に集中できないと感じるのは俺だけだろうか?
俺の護衛である3人のプランターグール達。
1人は金属のような頑丈さと光沢を持つ皮のみで体が構成されている黒い板のような生命。
その体の板と板は赤と黒でできた露出された筋肉によって結合されており3mほど板を飛ばせるらしい。見た目はまるで騎士のようでカッコイイ。
ちなみにメスだ。
1人は筋骨隆々でゴリラのような体躯を持つ岩でできたゴーレムのような逞しい生命。
その手には見るだけで身震いしてしまうほどの刺々しい武器が握られており、まさに鬼に金棒といった見た目をしている。角はないがゲームでたとえるなら『オーガ』といえるような姿をしていてカッコイイ。
ちなみにメスだ。
1人は無数の赤色の目が白い粘体の体に埋もれているという見た目が肉塊の生命。
その赤い目の瞳は常にこちらを見つめており、白き肉塊はゴボゴボと躍動している。まさに動く肉塊。ホラーゲームに出てきそうな見た目である。だけど戦う姿はまるで無敵要塞でカッコイイ。
ちなみにメスだ。
さてここで問題なのは、この世界ではどうやらコイツらが街中にいるのは普通なんだそうな。
しかもコイツらはわりと『美人』の部類に入るらしく街に出たりするとよくナンパとかもされるらしい。
元の世界では考えられんな。
「ってさっきから聞いてる?」
「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた。」
そんなことを考えていたらホムルンにバレてしまった。
彼女とは今日1日仕事の相棒……のような形で一緒にいたのでわりと気安い関係になっている。
この世界で初めての友達というやつだ。
彼女は樹齢84年の若木なんだとか。年齢のスケールが違うね。
「じゃあ続きいくよ。魔法っていうのはようするに自分の望むものを出現させる力なの。だから子供の頃に『好奇心の強い』子供は自分の手元に気になるものを片っ端から出現させて親を困らすわ。」
ホムルンは気を取り直して自慢げにそう語る。
「ちょうどホムルンが子供だったトキとかそんな感じで困ったわいな。」
すると突然黒い板のプランターグールが喋りだした。声は高くてカワイイ。
俺は反射的に
「そうなんですか」
と苦笑して答える
「んだよ!ホムルンが子供んときゃあ2歳で魔法覚えよって保育器からよく脱走されたもんよ。」
黒い板のプランターグールはそんなことを言って肩あたりの板を高速回転させる。
「なるほど……この世界では植物だろうが赤ん坊だろうが『自分の望み』があるなら魔法を使えるってわけだな?」
俺がそう言うと、ホムルンは説明は私の役目と言わんばかりに大きな声で
「そういうわけ。人間は長い間『絶対進化権』を不可思議な力を目覚めさせることにつぎ込んできた。私達植物は長い間『絶対進化権』を移動することにつぎ込んできた。その結果が人間の場合魔法であり、植物の場合寄生というわけさ。」
と補足説明してくれた。
つまり、元々魔法は人間しか使えなかったらしい。
だが、人間がこの世界に『絶対進化権』を使って『魔法』という技術を定着させたんだとか。
そのせいで野生動物や植物、魚。はては岩なんていう無機物までも魔法が使えるらしい。
この世界ではそれが『ありえる』のだ。長い間蓄積された力はやがてルールになる。
正確に言うと絶対進化権で同一のものを同じ種族が発言し続けた結果、この世界のほぼ全ての生き物にとっての常識が変わったから使える……んだとか。
この後魔法には明確なルールや仕組みがあり、回路なんてもので希望から事象への変革過程を再現出来る……なんてことを言われた。だがそこまで行くと俺にとって難し過ぎてビビった。
難しいこと言われて混乱していた頭だが……最終的にはちゃんと結論が出た。
「よくわからなかったが……ようするに俺は魔法を使えるってわけだ。」
「うん!そういうわけ!」
俺はホムルンに手をグッドサインで突き出す。
ホムルンは一瞬ナニソレ?って顔をしたが、何かを察して同じくグッドサインをこちらに突き出してきた。清々しいドヤ顔が目の前で輝いていた。