ステージ1-7・ていうかさ、マジで性癖、くるくるパー
魔法。
それは俺にとって、皆にとって、おそらく憧れのものだと思う。
誰だって一度は夢見る事象。
永久に叶わぬ夢。
だから人は度々魔法の物語を書く。
妄想を空に思い描く。
だけど現実を知り人は大人になり、魔法なんて存在しないと思うようになる。
経験でないと知ってしまった。
もしかしたら……なんて考えなくなった。
化学を習うにつれて人は魔法を信じなくなった。
もしかしたらそれが魔法が使えなくなった原因なのではないかと俺は考えている。
だがこの世界の彼女達曰く……魔法は使えるのがなんだそうな。
「サトリが魔法について教えろって言ったんでしょ!」
俺は今、ホムルンの苗木が寄生されているという鳥と共に外に出ていた。それもこれも清掃業の休憩時間の間に魔法を教えてくれるらしいからだ。
外には凶暴な獣が出るとかいう理由で護衛が3人ついている。ただ問題はその3人が人の姿をしていないがため、なんともカオスになっていた。
俺は「せめて人の姿している奴にしてくれ」と頼んでみたが、「人は弱いから護衛にならん」と一蹴されてしまった。
この世界で人族は最も頭が良く、最も弱く、最も群れが多い知的生命体と認識されているようだ。
……それはいい。
俺もそこまでは予想した通りだった。
だが、他種族に人間の評価をさせた場合、その評価で最も多く出てくる共通認識は『多趣味』という評価らしい。
この時俺は「なぜ?」と聞いた。そして後悔した。
話は少しズレるがこれについて順を追って話そう。
実はこの世界に人族は『原人』『妖精人』『獣人』『虫人』『機械人』など沢山いるらしいのだ。
そしてそれら全ては人間とほかの種が混じりあった結果生まれたものらしいのだ。
だが昔は『原人』……ようするに普通の人間しか存在していなかったらしい。
種族が増えた理由は簡単だ。『原人』が多趣味だからだ。
とある『原人』は危険を顧みずオスの危険な四足獣に身を捧げて『原人』と『獣』のハーフである『獣人』を身ごもった。
『獣人』は人間の知能と獣の身体能力をもつ存在になった。
とある『原人』は森で出会ったいたずらな妖精にイタズラをして『原人』と『妖精』のハーフである『妖精人』を産ませた。
『妖精人』は人間の知能と妖精の特質を持った個性ある種族となった。
とある『原人』は森の中にいた虫に一目惚れ執念で純血を捧げて『原人』と『虫』のハーフである『虫人』を降臨させた。
『虫人』は人間の知能と虫の節足を持つ美しき種族となった。
とある『原人』は命ある無機物を愛していたゆえに無機物とヤリ『原人』と『無機物』のハーフである『機械人』を生み出した。
『機械人』は人間の知能と無機物の硬さを持った強い種族となった。
そう、全てはこの世界の人間の『多趣味』と生殖の違いが生み出したものだったのだ。
アホかと俺はそう思った。
地球では獣と(ピー)しようが妖精に(ピー)しようが虫と(ピー)を育もうが無機物に(ピー)し続けようが何も起こらない。
だがこの世界ではそれが成立するからこうなると。
そういう事だった。
そしてそういう事だったのか……と納得した。
そう、人っぽい姿をした種族が多いのには理由があったのだ。
特殊性癖を持つ者が多いのには理由があったのだ。
っていうかなんだ無機物に(ピー)し続けるって!?
結果が伴わなかったならただの自家発電だよ!!
話を戻そう。俺はその人外護衛達とともに危険な外に出てきたのには理由がある。
そう、『魔法』を教えてくれと頼んでみたのだ。
この世界の生物は三歳ぐらいになると親の真似をして勝手に魔法を覚えるそうなので俺にも100%使えるのだとか。
俺が「紅蓮の炎を来たれ」なんて言って気合を入れて詠唱していると
「サトリが魔法について教えろって言ったんでしょ!」
と怒られてしまったというわけだ。
そう。魔法に詠唱なんていらないらしい。俺は至って真面目にやっていたのだが、厨二病は人をイラつかせると知っているので素直に謝っておいた。
「すいません。俺の世界ではこの呪文を唱えると魔法を使えるようになると信じられていたので」
だがもちろん俺の名誉の保持のため、とりあえずそう弁解しておく。
俺は厨二病ではないっ!
「あなたの世界では魔法を使えないって言っていたじゃない。」
だが、めずらしく彼女は反論してきた。
「机上の空論の話です。」
だが詭弁で俺に勝とうなどまだまだ早いのだ。とそれっぽい言葉で追求を回避する。
「まぁいいでしょう。では、魔法について教えます。」
「はい」
どうやら追求は回避できたようだ。
だがそんなサトリの様子を、ホムルンは見透かしたような瞳で見つめるのだった。