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ステージ1-13・戦いを、見るは生物、希望なし

異世界。

それは憧れの世界。

冒険者になり、

モンスターや怪物なんていう存在を魔法や剣でぶっ倒し、

世界を旅し、

美少女に会い、

王族に会い、

事件に会い、

強大な敵を打ち倒すために切磋琢磨する。


そういうものだ。


と、書き記してみたものの……そういうものなのか?

本当にそういうものなのか?

少なくとも俺はそうは思わない。第一この世界は異世界ではあるが2次元ではないのだ。

リアルである以上、俺を育てた『ヌクヌクとした現代社会』がもたらした貧相な筋肉では戦うだなんて無理なのだ。

というか現実として『生き物を殺す』ということすら出来ないのだろうと思う。

いくら家畜とはいえ豚を殺すなんて考えられないだろう?

少なくとも俺はそうだ。


だからここで『観戦』している。

感じているのは『無力感』ではなく『恐怖』だ。

もしも自分がチート能力なるものを手に入れていたところであの場所に立つことは出来ていなかっただろう。

立ち続けることは出来ていなかっただろう。

一度立てば何度でも立てるのかもしれない。

だけどその『一度』を立とうと思わない。

ゆえに自分は一般人なのだ。


傷が増えていくあの巨大生物は一体何を持って生物を殺そうとするのだろうか?

それはもちろん捕食のためなのだろう。


ゆえに『アレ』は一般怪獣なのだろう。


ではそんな『一般怪獣』に立ち向かう生物たちはなんなのか。なぜ立ち向かっているのだろう?

それはもちろん自分の住処に入ってくる侵入者を排除するためだ。

犬だろうが猫だろうが鳥だろうが虫だろうが自分の住処に侵入されれば怒る。それと同じ原理だ。習性だ。

ならばこの行動はおかしくないのであろう。


故に彼らは一般生物なのだろう。


ここに主人公は一人もいない。

だけどそれぞれがそれぞれの『寿命』という物語を紡いでいるのだ。


……頭痛がする


なにかが心に引っかかる。


……頭痛がする


ああそうだ。


……頭痛がする


自分はどこの主人公なのだろう?だ。

もし主人公ならばここらで『覚醒イベント』の一つや二つ起こってもいいではないか。


あそこで死にゆく命を見て「よくもあいつらをぉおおおお!」などと叫んで能力が覚醒してもいいではないか。


だけど、この村を守っていた生命たちを無視しこちらに向かってくる『テルクル』を見て俺は呆然とすることしか出来なかった。


非戦闘員が多人数在中している村の展望台。

プランターグール達の命のバックアップとなりうる『枝木』の保管庫。そこに今自分はたくさんの非戦闘員プランターグールとともにいる。

彼女等は滅多なことではおびえないらしい。そもそも植物のため恐怖の感情も薄いらしい。


そんな彼女等がやられていく仲間たち、迫りくる巨大獣それを見ておびえているのだ。

だがここにきてたった一日二日程度の自分が助ける義理はない助ける力はない。

主人公なんていう都合のいい存在ではない自分にそんな力はない。


逃げたい。

だがここは空中だ。

それに下に降りたところで逃げれない。

あんな化け物のいる下に降りる勇気はない。


そう逃げたいのだ。

助けたいではない。

そりゃ助けたいよ。

だけど怖いんだよ。

ただの義勇だけじゃ……たすけられない。


……頭痛がする


一つ思い出す。この世界には自分を自分の願望に沿った形に変質させる『ルール』があることを。

それは確か……『絶対進化権』とか言っただろうか?


ならば、俺にもチートが使うチャンスが訪れたということだろうか?

何が出るかはわからない。

自分が今何を一番に望んでいるかもわからない。

それでもここでただ殺されるよりもずっとマシだ。


……頭痛がする


俺は意識的に懇願する。


力が欲しい。


主人公になれるだけの力が欲しい。


願わくば俺の厨二心よ。

絶対進化権とかいうこの世のルールをチートに変えてくれっ……


その瞬間、自分の中でナニカが変わる感覚がする。

体の中がすべてひっくり返る様な感覚がする。

体が変わっていることが感覚でわかる。

気持ちよくはない。

だが気持ち悪くもない。


〜『進化権』変質→『疲労無効』


自分の中のナニカが……変わったと感じる。

自分の体は疲れなくなった。

それを本能かなにかで察する。


自分の進化権は……


俺の中に溢れた『逃げたい』の気持ちを汲み取ったのだ。

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