ステージ1-B・護衛隊の護衛隊、その1
一方その頃、護衛をしていた3人は村の防衛をしていた。
黒い板の生物こと黒板族のバラッド。
肉塊の生物こと水凝固精霊のカレット。
ゴリラみたいな生物こと獣族はタバト。
実はこの3人、この村の最高戦力なのだ。
「カレット!やつの攻撃に当たってくれるなよ!お前の体が減って戦闘力が低下するのだからな!」
バラッドは己の体である黒い板を盾のように自分の目の前に翳して攻撃を防ぐ。
ヤツの狙いはまだ分からないが村に一直線で向かってきている以上倒すか撃退するかをしないわけにはいかないのだ。
「そんなん分かってるやん!だからこうやって高速移動してるんやんか!」
カレットは液状化した肉体を高速で移動しながらヤツに種を飛ばしていく。
種はヤツの体に当たるとハジケて針を発射するがヤツの体には全く攻撃が刺さらない。
ヤツはざっと20mの体躯はある巨大な生命であった。
ただし『取引』や『交渉』を出来るほどの脳を持たない危険獣。
見た目は地球の恐竜ティラノサウルスに翼をつけ、頭に棘をつけた様な感じ。三つの巨大な石版がこの生命の周りを飛び回り遠距離攻撃を一切受け付けない。
『バルラハーナ・テルクル』
それがこの獣の冠する名だった。日本語に訳すと『偉大な爬虫類』である。
ようするにこの世界のドラゴン的な存在である。
コイツに後方から希望精製能力に長けたプランターグール達が援護射撃を放ち続けている。だが三枚の石版でその殆どを防御される。
だから後方に臆することなくテルクルは見た目通りの遅い挙動でタバトに拳を飛ばす。
タバトは
「遅い……」
と一言いい剣を抜く。そしてその筋骨隆々としたムキムキの体に似合わない速度で拳を切り刻もうとした。
だがその一閃はテルクルの拳の鱗により防がれてしまう。
(……コイツ、硬い!?)
剣はその半ばあたりでポキリと折れたが、タバトはそのまま慣性に従ってテルクルの拳の間合いから外れる。
タバトは間髪入れずに連撃を加えようと考えて背中に背負ったたくさんの剣のうちの一つをもう1度引き抜く。
振り返るとそこにはテルクルの翼が間近まで迫っていた。
「おいタバト!」
「タバやん!避けてぇ!」
カレットとバラッドは助けに行こうとはしなかったが思わず叫んだ。一方タバトは
(……ちっ、やってやるわ。)
と迎撃態勢に入っていた。
カレットはテルクルがタバトを狙うすきに希望の力を溜めている。
バラッドはテルクルがタバトを狙うすきに板の形を組み替えてヤツに有効な武器を作っている。
タバトは迫る巨大な翼を見据え、『この体』を戦闘不能にさせないために方法を練っている。
……翼はタバトに迫り、翼はタバトを『通り過ぎた』そう、タバトは約二mという巨体がギリギリ通れるだけの穴を切り開いたのだ。
そして生まれる決定的な『隙』。
「カレット!……今!!」
その隙にカレットは炎を射出する砲台を希望し出現させていた。
「防衛砲撃台出現希望!死に晒せや爬虫類!」
砲台は火を吹いてテルクルの側面にぶち当たり、その巨体をよろけさせる。
それとともに役目を終えた砲台は空中に溶けていく。
「決めさせてもらおう!この斧で!」
さらに、ちょうどテルクルがよろけた所にバラッドはいた。彼女はそこで板で斧を組み立て、トドメの準備に入っていたのだ。
「らぁ!」
気合い一つ、斧はテルクルの巨体に叩きつけられる。
その勢いは斧の後方で起こした爆発によって勢いが高められて完全に不可避だ。
だが接触した瞬間、テルクルの体に弾かれる。
カァンと甲高い金属音がなり跳ね返されてしまう。
跳ね返されて飛び出す空中、バラッドは自分の体が後ろから鈍い痛みを感じていると感じた。
背中に当たっていたのは三つの石版の一つだった。
バラッドがとどめを刺すため一時的に止んだ援護射撃の隙をついて近くまで寄ってきていたのだ。
バラッドはテルクルがいる方向に飛ばされる。
テルクルは二つの石版で多方向からの援護射撃を防ぎながら希望を練る。
希望の力が一層輝き、テルクルの首が……伸びる。
そして大きな口を開け……
バラッドを……
食べられなかった。
その口には木の棒がつっかえられており、なおかつバラッドは木の枝を咥えた獣人のおじ様に横抱きに抱えられていた。
「バラッドちゃんはすぐ無茶するから心配じゃんね!あとは俺たち……」
「「「プランターグール護衛隊護衛隊にお任せ下さい!!」」」