ステージ1-12・文房具、やってる間に、村の危機
お久しぶりです!
とあるコンテストの締切があり更新が止まってました。
今日からまた二、三日に1回ぐらいの更新を再開します!
文房具。
俺は創作するための道具が欲しくて魔法で文房具を作った。
今一番やりたいことが小説の執筆だったからだ。
後悔はない。
それにこの魔法は結構役立つものだった。
プランターグールの話によると『一番最初に使えた魔法』がその人の魔法適正となるらしい。
まぁ魔法という名称は俺が勝手に呼んでるだけなので魔法適性を正確に和訳すると『希望摘出技能の方向性の適正』となるのだ。魔法だけだと『希望摘出技能』となる。まぁ、長いので勝手に魔法適性と呼んでいる。
まぁ何はともあれ最初に覚えた魔法が『物質生成』という魔法らしい。自分が強く望んだものを出す。
それがこの魔法だ。
サトリは朝早く起きてその魔法を試していた。
「朝から魔法の練習だなんて精が出るね。」
それを見かけたホムルンはそう言って近くの切り株に腰を下ろしている。
まぁ俺が昨日寝泊まりしたこの部屋はホムルンの自室で、その『切り株』がホムルンの本体なんだそうな。最初は部屋のど真ん中に切り株が置いてあってびびったものだ。
ちなみに本体を燃やされたりしたとしても死にはしないらしい。その切り株は本体と銘打ってはいるものの実は枯れていてもう既に本体は今の体に入っているのだそうな。
と、こんなことを仕事中に喋っていた。
プランターグールはよくわからない生態をもっているものだ。
そんな訳の分からない生物は今ずずーっと四角い容器に入った液体を飲んでぷはーっという姿はまるで農家のおっさんのようだ。
ちなみにサトリは何をしていたかと言うと、鉄の定規をいかにカッコよく出せるかをずっと練習していたのだという。
手のひらから射出するように出してみたり、空中にいきなり出現させてそれを掴んでみたり。刀を引き抜く感じで地面に手をついて定規を出してみたり。
まぁ剣っぽい見た目だし、空中に突然出現させたりとカッコイイのではあるが、その実は定規なのだ。
本人はとても楽しそうなのだが、それはただの厨二病だ。
まぁ、魔法なんてものをファンタジー小説大好きな男子高校生に習得させたら厨二病が発症するのは当たり前とも言える。
と、一人そんなことをしていると急にホムルンが言いだす。
「あ、そうそう言うの忘れてたんだけどさ。魔法は希望によって発動するって言ったじゃん。」
「あ、はい。」
サトリは言葉のニュアンスから重要そうな雰囲気を掴み取ったので魔法の練習……というか厨二詠唱の練習を辞めて聞き入る。
「実は希望と願望、懇願、はそれぞれ違うから気をつけなきゃいけないの。希望っていうのは『コレ』をやりたいと心から願う気持ち。これがあると魔法が使える。願望っていうのは『コレ』になりたいと心から願う気持ち。これがあると進化権が発動する。それは知ってるよね?」
「……うん。まぁね。」
「でもね、懇願。つまり何かにすがる気持ちを持って願っても何も起きないの。まぁ、種類にもよるんだけどね。ソレを出したいと思う希望が生きたいという懇願に変われば何も出てこないのは明白でしょ?」
「んー、なるほど。」
だがしかし、話が難しすぎてよく分からなかったのであった。
だけど、一つよくわからないナニカが頭に引っかかっている。
(アレ?そういえばなんで俺は『元の世界』に帰りたいと懇願しなかったんだろう?)
彼はそれを今、『突然』疑問に思った。
自分は義理の姉妹どちらも好きだった。あ、もちろん兄弟的な意味でだがな。
それに帰りたくないとは微塵も思っていない。
だが、何故か『帰りたい』とは思えないのだ。
なぜだ?
なぜだ?
なぜ……
「ぐぃぎぃいいいいいいいいいいいい!!!」
突然警報が鳴る。いや、正確には音塊族という種族に寄生している村の見張り役の人の声らしい。
だが警報には違いない。
この音がなる時は危険が迫っている時の音なのは確実だ。
ちなみに「ばっげぇえええええ!!!」と叫ぶ時がお昼の休憩時間の声で「ゴニャアアアア!!!」と叫ぶ時はVIP客が来た時の声らしい。
マニュアルに書いてあった。
ちらっとホムルンの方を見ると
「なんて悲壮感の漂う声……そんなに危ないものが近づいてきてるというの?」
とシリアスモードに入っていた。
「そんなにヤバイんですか?」
「多分この村の戦力でヤレるかヤレないかってぐらい強いだろうね。それぐらいの悲壮感漂う声だった。」
……ほんとになんかヤバイらしい。
まぁ、俺は戦闘職ではないし戦場に出るわけじゃないし戦場がどのようなものかも知らないから全く実感はわかない。
ただ、様々な種族の寄生体が取り揃っているこの村が陥落するとは思えないのだが……
外を見る。
そこにはナニカがいた。
見たこともない、聞いたこともない、物語に出てきたこともない、そんな異形がいた。
俺は思わず吐きそうになる。
朝ごはんまだな上、昨日も吐きまくったというのに。
俺はあれはなんだ……と呟いた。
「ああ、カレットさんが戦ってるんだね。」
「え?」
説明しよう。カレットさんとは昨日サトリこと俺の外出に付き合ってくれた護衛のひとりである。
通称肉塊さん。
あの人がカレットさんである。
俺は外出する前、一番最初にあの肉塊が立候補したのを見て正直お前みたいな肉塊クソ野郎に頼む仕事なんてねぇ……って思いっきり怒鳴ってやりたかった。でも我慢したのだ。
その選択を今、心の底から正しかったと思えた。
もしもそれを言っていた時の未来を幻視して涙が出た。
と、そんなことしてる間にもあそこでカレットさんは戦ってる。
もう肉塊クソ野郎なんて呼びません。カレットさん。