68 第10番世界 侍従科でお茶
「うむ、これで私の仕事は……修復と統合ぐらいだな。義理は果たした」
「義理……なのかな?」
「ぶっちゃけると黙らせるため。聞かなかったお前が悪い。ハハハハ」
「ああ、うん」
「まあ、世界共通語が直前に強制インストールされてんだ。大抵の奴は信じる」
仕事……つまり創造神様に言われているのは修復と統合ぐらいなので、残りは全て趣味と言えなくもない。
神の加護……主に自然神としての加護はほぼオートなので、意識することは無い。細かい調整は精霊達の役目。どでかい物差しで細かい調整は面倒なのと同じように、細かい作業は精霊達にさせた方が楽である。
「ねぇ神様」
「何かねにんげ……まだ人間か」
「故郷では殺人は最大と言っても良い禁忌だけど、4番と10番はそうでも無いよね? 盗賊とかむしろ推奨だし。なんで人は人を殺しちゃいけないの?」
「なんだ、哲学か? 人はいかに自分が納得できる答えを見つけられるか……が、全てだと思うぞ? それが他者の迷惑にならないなら万々歳だ」
「納得できるかかー……」
「正しい事だと分かっているから正論というのに、吐き捨てる様に言うのが人間だぞ? 納得できなければスッキリしないだろう」
「うーん……」
「まあ、簡単に考えても何個かパターンがあるな」
まず創作でよく見るパターン。
殺ったら殺り返される。復讐されるリスクを負うだろう。
「これは復讐によって自分が殺されるという恐怖心を利用した方法だ」
「あなたを殺して私も死ぬ?」
「まあ……周りからすれば傍迷惑な話だが、個人で見れば完結してるな。そういう奴には一切通用せん。というかその方向は最強すぎる」
既に自己完結しているんだ。外野の言う事はもはや聞かないだろう。
次。法律で禁止されている以上、殺せば捕まる。
「それ、捕まっても良い程憎んでるなら、殺人おっけーにならない?」
「なるな。だが言い方を変えると、ただそいつのために自分の人生捨てる覚悟あるんだから、別に良いんじゃねぇの? 全部覚悟の上で殺ってるだろ。そこまでイッてる人物を止めるのは相当面倒だぞ?」
「まあ……確かに?」
「自分に関わりのない人物は間違いなくスルー案件だな。そんな面倒な事、誰だってしたくはなかろう。ほぼ確実に相手は話を聞かないしな」
次。法律で殺人が禁止されていないと、常に背後を気にする生活になる。
「つまり自衛にも繋がってる状態」
「常に背後を気にする何かをしたのでは?」
「ハハハハ。人間の醜さ舐めるなよ。生きてるだけで恨みは買うぞ。『その娘は俺が狙ってたのに! グサー』無いと言えるか? 禁止、されてないんだぞ? 邪魔者を排除するのに1番効果的なのは殺すことだ。死人に口はなく、今後邪魔される事もない」
「「「4番世界を経験してるだけに否定ができん……」」」
「だろ?」
次。同族殺しは生物としてどうなん?
動物が弱い子を見捨て、生きる可能性が高い個体を育てるとは訳が違うのでは?
「人間の『殺人』は、『野郎ぶっころっしゃー!』で、ぶっちゃけ感情論よな。増えるために集団生活を選択したはずなのに、自分で減らしてどーするよって」
「でも集団生活を選択したのは遥か前の先祖だよ?」
「そうだな。だがそれは論点がズレそうだ」
次。足の引っ張り合い、他人の邪魔をしないため、究極の手段である殺人を禁止にした。
「つまり?」
「人間社会の発展のため、禁止にしたわけだな」
「視点が大きい!」
「集団生活でのルールとはそういうものだろう」
派生。殺しを禁止しないと、兵器ばかり開発研究され、他がボロボロ。
「野菜の品種改良なんてするわけがなく、ゲームなんかもないし、お菓子もない。畜産なんかもしないだろうな。ジュースなんか無理だろう。果実絞るなんて勿体無い! 絞らず食べろになる」
「文化が死ぬ?」
「死ぬ。それこそ核の炎に包まれたヒャッハー時代になる。娯楽どころではない。奪った方が早いんだ。そのためには力がいる。力こそ全てだ。死んだら全てを失うのだからな。魔物を相手にして知ったはずだ。殺しにくる相手を追い払うにも力がいると。守るためにも力は必要なのだ」
戦争は間違いなく技術を発展させるだろう。死に物狂い……は意味が変わるか。死にたくないからこそ、死ぬ気で兵器を開発する。
『俺は死にたくない、お前が死ね!』である。兵器というのは複雑だったり、精密性が要求される。必然的に技術力が上がる。
だが問題は、戦争によって得た技術力は、戦争が終わらないと他に発揮されない事だ。戦争中はずっと兵器を作り続けるのだから当然である。
その他娯楽方面に、人も材料も回される事はない。余裕があるからこその娯楽だ。戦争という余裕がない時に真っ先に削られるのは娯楽。
娯楽方面の職業だった人達も戦争に駆り出され、戦争で死に、知識や技術が途絶える。
結果として、文化が死ぬ。地球から採れる資源は有限というのも問題だ。ダンジョンみたいな物は無いのだから。
次。『殺害』という行為に、後戻りはできない。
「反省しても、いくら後悔しようが、殺した者は復活しない。大半の人は『失ってから気づくタイプ』だ。壮絶な殺し合いをしていた、先人の知恵とも言えるか? 死んでしまうとは情けない……にはならないからな」
「鬼畜王」
「このようにそれなりの数ありはするが、どれも抜け道が存在する。だからこそ個人の価値観や物差しをガン無視して、『群れの都合である法と言う名のルール』が必要なわけだ。じゃないと集団生活なんかできないからな」
神様と話せる良い機会だからか、清家達勇者組は色んな事を聞いている。
神、または年齢で見ても上の存在に対する、所謂なぜなに攻撃だ。子供が親にするあれ。思いついた事を、気になることを脈絡なく聞く。
逆に言えば、それができる程度には懐いたと言えなくもないが。
「この国も殺人は禁止?」
「禁止」
「理由は?」
「複数あるが……他の国に合わせただけだな。後は兵器より娯楽が欲しい」
「大事!」
「殺人は禁止だが、殴り合いの喧嘩は許可している。お前達に分かりやすく言うなら……決闘か。どうしても意志を通したいならそれもまた良し」
「決闘かー」
「まさに世界による常識の違いだな。6番世界からすれば決闘の時点で野蛮と言うかもしれん。が、当然決闘にはルールがあり、お互いに譲れないからこそ決闘が行われる。本人達がそれを選んだなら別にそれでいい」
『10番世界の最強トップ10を答えよ』の答えは……シュテル、シロニャン、眷属騎士達で埋まる。
つまり国防に兵器が不要であり、そちら方面の発展は不要。そんな物より娯楽を寄越せ……が女神の望みである。よって、様々な娯楽が生み出される。美食に遊びなどなど、様々な物がだ。
シュテル個人としてはどうでも良いが、女帝としては武器の開発もちゃんと行うように言っている。なぜなら創造のダンジョンがあり、冒険者達に必要だから。
装備の発展は冒険者達の生存率を上げ、戦利品が増える。戦利品が増えれば冒険者ギルドから広まるので、豊かになる。金や素材が動く。
国防のための『兵器』はこの国には不要だが、個人の持つ武器自体は必要だ。街から出たりダンジョンに潜れば、魔物という外敵がいるのだから、無いと困る。
なかなか重そうな話をしているが、学園の教室で、メイド見習いに囲まれて、お茶会の最中である。
割と真剣に周りの生徒達も話を聞いていたりするが。
「ちなみに最初の問に関しての私の意見だが、『盗賊は”人”ではない』だ」
「「「人ではない?」」」
「そもそも人とはなにか? 何をもって人とする? 見た目か? 知能か? 私は『意思疎通が可能である知能を持つ者を個として認める』だが、私の従魔は人とは言わないだろう?」
「まあ……人じゃなくてフクロウと蜘蛛だよね」
魔王種となった魔物は頭が良い。10番世界の世界共通語を使えるようになる。だが、喋れるだけで価値観まで人と同じになるわけではない。価値観はあくまで魔物だ。ぶっちゃけ野生。そう生まれて、そう過ごしてきたのだから当然である。
従魔はあくまで魔物個人が、強者やお気に入りに従っているにすぎない。
「いわゆる普通に過ごしている者達を人とするなら、盗賊は人から外れた者達だ。彼らと同じ扱いをするのは失礼だろう? ゴブリンなどのように同性は殺すし、異性は捕らえたりする。大して変わらんだろ。言葉は喋れても会話にならんしな」
「盗賊はゴブリン亜種……確かに、やってることは同じかー」
「ゴブリンはあくまで本能だ。生きるため、種のため。むしろ盗賊よりマシと言えるが、襲われる側からすればそんな事は関係ない」
「つまり盗賊は人じゃなくてゴブリン亜種として割り切れと」
「まあ、この国のある中央で盗賊を見ることはそうないが……4番世界だとそうもいかんな」
アトランティスを中心にある5大国。北の国は鉱山、南は農国、中央にダンジョン。人手はいくらあっても困らない。盗賊になる必要が無いのだ。
そもそも、盗賊が出ないようにするのは国の上層部の仕事だ。冒険者の仕事ではないし、子供の仕事であるはずもない。
「この際だからはっきり言ってやるが、正論より偽善だ。口だけの正論より、行動に移している偽善の方が遥かにマシだ。その小さい手でできる事など限られている。お前達は神でも化け物でもないただの人だ。できる事とできない事、しっかり見極めろ。広げすぎた腕は……そのまま千切れるぞ」
シュテルは手からすり抜ける……などという甘い事は言わない。腕ごと持っていかれると思え。共倒れしなくて良かったな、と言われるのがオチである。
周りからの評価を気にしたがための行動から助けたのかもしれないが、助けられた相手からしたら、助けてくれた人に他ならない。行動理由なんて人それぞれが当然であり、どちらも損してないのだから文句を言う必要はない。むしろ助けられたくせに文句が言えたら大したもんだ。
「助けた側も他の奴に何言われようが気にする必要はない。偽善者と嘲笑られたら、傍観者と言ってやればいい」
「「「野次馬……」」」
「『助けてくれれば誰でも良かった。でもあの中で実際に助けてくれたのは貴方だ』……この言葉が全てなんだよ。お前達ならよく分かるはずだ。異世界に誘拐された勇者達。私ならすぐに6番世界に帰す事もできただろうに、そうはしなかった。お前達の親は文句を言うかもしれない。お前達はどうする? 親と一緒に私を罵るか?」
「「「絶対にそれはない」」」
「……その時の想いは、本人達にしか分からない。正義や悪なんてものは視点の違いでしかないんだ。人からすれば勇者が正義で魔王が悪。魔からすれば魔王が正義で勇者が悪。いざ死ぬ時悔いがないように、その小さい手でやれる事だけをやれ」
シュテルは神だ。それも神の中でも最上位レベルの。全ての人間を救うか? 答えは否だ。生憎とこの神は慈愛の女神ではなく、全く優しくない。『なぜ助けてくれないのか』など言おうものなら、中指を立てる性格であり、それだけなら遥かにマシと言えるレベルだ。場合によっては拳や魔法が飛んでくる。
「さて、哲学は放置だ。そんな事より引き続き勉強な。世界の違いについて。これから3世界が統合される。先に勉強できるなんて恵まれてるな!」
「「「えー」」」
「勉強というと大体拒絶反応が出るが、興味を惹かせるのが教える側の役目である。まあ、君達にも興味深い話をしてやろう。君達の世界には電池やバッテリーという物が存在するな?」
「「「うん」」」
世界統合の下準備のため、6番世界にも分身を送り込んでいるため、あることは分かっている。分かっているが、話の掴みとして必要な部分だ。
「4番世界や10番世界にも、君達の世界にある電化製品に似たものが存在する。さて、それはなにか?」
「……魔道具じゃないの?」
「その通りだ宮武。電気で動く電化製品の替わりに、魔力で動く魔道具が存在する。では、電池の代用品もあるはずだ」
「魔石!」
「うむ、清家の言うように魔石だ。君達も魔物から入手している。冒険者ギルドで買い取りしてくれる物だが、魔道具のエネルギーとなるため価格が安定している」
冒険者は魔物素材を冒険者ギルドへ持ち込み、冒険者ギルドが商業ギルドや生産ギルドなどに回している。商業ギルドから商人、生産ギルドから職人。
まあ、その辺りは置いておく。
「さて、その魔石だが……魔物から取れたままではエネルギーとしては使えん。加工する必要がある」
「そういえば……4番世界の店で見た魔石が高かったけど」
「あれはただのボッタクリではなく、魔道具用に加工した物が置かれている」
「そうだったのかー」
「あれは技術料が入った後の値段だ。採れた鉱石をインゴットにして売ってるようなものだな」
当然ひと手間加えて売った方が、儲けは大きくなる。冒険者もただの魔石を持ち込むより、魔道具に使えるよう加工した物を持ち込んだ方が買取額は上がる。
まあ、そんな事できる冒険者はそういないが。できるなら命を懸ける必要がある冒険者より、技術者として生計を立てた方がマシと考える者が多いからだ。
「知っての通り、私は元6番世界の住人だ。そこで、我が国では生産ギルドに規格を作らせた」
大神殿にある備蓄……というか、大神殿で使われている魔道具の交換用として置かれている物を、テーブルの上に転移させる。
「電池だ……」
「うむ。このシステムは中々便利だ。使用する魔石のランク、加工後の形状を統一させる。それにより金額や買う側、更に作る側も楽になる。交換も楽だしな」
魔石のランクが同じと言う事は、魔石の持つ魔力量が大体同じと言う事である。それはつまり、『このサイズの電池何個で、どのぐらい動くよ!』という売り込みが可能になる。消費者としても分かりやすく、技術者としても作った物の燃費が分かりやすい。
技術者の中にはただ作るのが好きな人間もいれば、自分の作った物が誰かの役にたっている事が好きな者もいるだろう。そして、お金が欲しい者もいるはずだ。
どの道生きるにはお金がいる。そのためには物を売らねばならない。物を売るためには良い物を作る必要がある。作る側としても規格化されている電池は、とても分かりやすい目安になるわけだ。
買う側からすれば長持ちするに越したことはない。同じ目的の魔道具が同じ値段で並んでいたら、少しでも良い方を買っていくだろう。
そして魔石を加工して電池を作る側も、作る物が決まっているので楽なのだ。この電池は《魔導工学》の入門だ。学園の子達が練習に作ったりする。作る物を指導する先生も楽である。
「つまり競争が始まる。金の為に、名誉の為に、または笑顔の為に。技術者達の目的はともかく、買う側からすればそんな事はどうでもいい。そして私からしてもどうでもいい。欲こそが人間の動力源。国の発展大いに結構。……公害出したらしばき倒すが」
「しばき倒すんだ……」
「当たり前だろ長嶺。私は自然神だぞ? 自然神の国で環境破壊とかいい度胸してるじゃないか。というかまず漂ってる精霊達にボコられるが……」
この国は精霊達の為に環境が整えられた国だ。そして自分達の親に等しい自然神がいる。精霊達の楽園なのは間違いなく、もはや実家のようなもの。そこで有害物質を発生させたり、植物や水、空気を汚そうものなら……。
「ぶっちゃけ真っ先にブチギレるのは私ではなく精霊達だな……」
「この国はともかく、元々精霊達って土着神に近いんだったよね?」
「人類からすれば精霊達の力は神に等しい。獣を聖獣として祀るように、精霊達を土着神として祀るのもあるだろう。精霊にそのつもりがあれば、誰にでも見れるようになるし」
元々精霊達は気に入った土地に住み着く傾向にある。精霊の属性によって住み着いた土地は変化するが、湖に水の精霊が住み着くようなものだから、劇的な変化はない。
住み着く精霊達はある程度力を持った精霊達だ。新人とかは世界を飛び回りバランスを整えている。幼子のように意識がはっきりしていない状態といえば分かりやすいだろうか。個が確立していない幼精霊達は、本能に従い飛び回り、世界のバランスを整える事だけをする。
ここに住み着いているぞ……というアピールで確実なのは、姿を見せる事。定期的に目撃されていれば、拠点にしていると分かる。つまり人類が目撃する精霊と言うのは、本来これらの精霊なので、土着神と言えなくもない個体である。
気に入って住み着いた土地を汚したりして精霊を怒らせると、所謂祟りが発生。人類には抗えない自然を使った災害が襲う。水の精霊を怒らせ、津波により地図から消えた国も過去にはある。
「宮武の言うように土着神というのは正解と言えるが……もっと単純に、とても理解しやすくする事が可能だぞ」
自分の家・お気に入りの棲家を荒らされたら誰だってブチ切れる。実に単純にして切実な理由。人類は法律や権力だなんだと色々あるが、精霊や魔物などが持つのは圧倒的な武力。つまり、解決方法や報復方法が暴力一択!
そもそも法律は人類に適用されるものであり、精霊や魔物に当てはめて考える奴はいない。
「つまり『死にさらせゴルァ!』しか選択肢が無いんだよな」
「精霊なら話せるよね?」
「いきなり人の家荒らす奴に言葉が通じるとは思わんだろ?」
「「「…………」」」
「大体精霊は先に警告をするけどな。大義名分と言うのは大事だろう? 問題の根本的な解決をするなら、原因である者達を皆殺しにすれば早いわけだよ」
4番や10番世界は6番世界より原始的だ。それこそ『世界の違い』なのだから受け入れる以外に道はない。いくら気に入らなかろうが、個人の意見にそんな力はないのだから。
勇者達がクラス単位で召喚されたのはある意味幸運だった。集団心理を利用して、世界の違いを納得させる事が可能だったからだ。『理解』ではない『納得』だ。理解など無理だろう。とりあえず納得さえさせてしまえばいい。
6番世界では相手が強盗だろうと殺人はNGだが、4番や10番世界は相手が盗賊ならむしろ殺害推奨である。逃がすと他に被害が出るし、経験を積んでより巧みになる。確実に仕留めた方が世のためだ。
どちらが良いではなく、世界が違えば違うのが当たり前。『同じ事を奇跡』だと思うべきであり、国の在り方も、人の生活も違うのが当然なのだ。そもそも教育の基礎となるだろう法が違う。
これはもう、思考停止も一種の手だ。『そういう物』『それはそれ、これはこれ』と割り切るしか無い。考えたところで、その世界ではそういう物なのだ。
魔物だなんだと、死ぬ可能性が遥かに高い世界。そういう世界では戦う力があるというのは、生きるのに必要な力を持っているということ。武力が必要な世界だ。
なんて突然やってきた神やその連れが話している中、侍女見習いの学生達がせっせと減ったお菓子や飲み物を補充する。
お菓子は主にメグやシロニャンが食べまくっている。つまり、話にあまり興味がない組。
メグは今までの生活からして目の前のお菓子に興味津々。食べられるうちに食べる癖がついている。そして女神が口にする物……つまり世界的にも最高の物である。このチャンスを逃すはずがなく。
シロニャンはもう、シロニャンにとって世界は狭いのだ。飼い主であるシュテルが全てであり、同じ眷属達が友達ぐらいの認識。それ以外は虫である。蟻とかにいちいち意識を向けず、視界をチラチラする鬱陶しい羽虫をはたき落とすぐらい。言い方を変えると……物凄い自己中。よって、話している事は心底どうでも良い事なので、お菓子を貪っている。
立場的にも扱い的にも、シロニャンはトップ2である。勿論1番はシュテル。実は眷属の中では1番偉い。つまり眷属騎士やヒルデより上に来る。眷属達はシロニャンにとって同士なのでマシだが、勇者達はシロニャンに顎で使われる。
とは言え、基本的にシロニャンはシュテルから離れないので、問題はあまり表面化しない。
「さすがにメイドさんこんないると落ち着かない……」
「慣れろ。王族や公爵からすれば普通だ」
「それ極一部って言うよね!」
「ん……? おう、そうだな!」
当然王族や公爵といった立場は世界的に見て少数だ。しかしシュテルの周りは王族や公爵といった者がメイン。宮武と認識のズレが発生する。基本になるのはまず『自分』であり、こればかりは仕方ない。
「まあ、そろそろ勇者ごっこも終わりだろう。とはいえ、やってることはただの冒険者と変わらんから、今更感はあるが」
「勇者の肩書のおかげで、他の冒険者より遥かにマシ!」
「それはあるな。そろそろ4番帰るか……お前達は睡眠も必要だしな」
「「「ういー」」」
侍従科の担任に伝えてから全員で大神殿へと転移。並行して呼んでおいた4番世界に連れていくディアナとローゼを拾い、4番世界に次元転移。
メグはこのまま10番世界に置いていく。本人からしたら故郷なんてものじゃなく、ただのトラウマ世界だろう。居残り眷属にでも面倒を見させる。
転移先はすっかり暗くなった宿の庭だ。




