53 第6番世界 事前準備
『シュテル、どうするかは決めた?』
6番世界の旅館で寛いでいると、創造神様から念話が届く。
『正直どっちも一長一短なので、実際来た時に楽な方で統合しようかと思っているのですが……理想は次元統合……だけですねぇ』
宇宙を1つに統合する場合、現在の太陽系が変わる。
4番世界や10番世界は宇宙は放置なので気づかないにしても、6番世界は確実に気づくだろう。
世界を隔てる次元の壁の統合はどっちにしても確定だが、宇宙を統合しない場合。
この場合は簡単にそれぞれ区切るにしても、次元の壁ほど強力な物でないため3世界間で迷い込むことが増えそうだ。
今まで通りするのなら宇宙統合はありと言える。
少なくとも4番世界と10番世界は他世界に関わることはないだろう。
だが問題は6番世界で『地球』と同じサイズの惑星と、倍はあるサイズの惑星が増え、生命体も確認できるのが突然増えるのだから間違いなく接触を図るだろう。
6番世界が動いた時点で今まで通りとはいかなくなる。
むしろ動かないとは思えないので、4番世界と10番世界は他世界に接触する手段がないためその面では不利といえる。
では統合しない場合はと言うと……。
迷い込むのは『人』だけじゃない。つまり魔物達も迷い込むだろう。
迷い込む場所……出現位置はランダムであるはずだ。つまり突然街中などに魔物が現れる可能性がある。
この場合4番世界と10番世界はともかく、6番世界が大惨事となる。あの世界は戦えない者が大半だ。突然ぽつんと人混みに魔物が現れたら……。
そういう意味では統合した方がマシなのだろう。
しかしどちらが楽かというと、統合しない方が楽だ。
3世界を1つの次元の壁で包み、世界ごとに分けてしまうだけだ。
だが統合する場合、惑星を1個1個公転させる位置なども気にしながら配置する必要がある。ミスったらどっか飛んでくか、他のとぶつかってグシャーだ。
しかもベースとなる世界……宇宙は一番広い10番世界である。
太陽のサイズとかも考えると……面倒という一言である。
よって統合しないで迷い込み対策をした方が遥かにマシと言える。
『まあどっちにしても、必須なことをやってもらうからこっち来て』
『へーい』
創造神様の所へ行ってくると伝え、神界へと転移する。
視界が切り替わり最初に目に入ったのは……なんかでかい塊だった。
「なんです? これ」
「新しい6番世界の核。入れ替えておいて」
「えぇ……」
「それマナ作るから」
宇宙を分けて統合するにしても、次元の壁という強力な物が無くなるため、迷い込みはかなりの頻度が予想される。
迷い込んだ者は『様々な意味で近い世界』が拾おうとするのだが、次元の壁がない場合、まずその中に行く可能性が非常に高い。
その場合マナがない世界があるのは少々問題である。
迷い込み対策として、最初から門を作って安定させた方が良いかもしれない。
不定期に様々な場所で空く穴が問題なら、最初から穴を開けておけばいい。
それだけで頻度はかなり減るはずだ。
まあともかく。
「じゃあちょっと変えてきます」
「同じ状態にしてから入れ替えてねー。じゃないと凄いことになるから」
「……へーい」
でんっと置かれている塊を持ち上げ、6番世界の宇宙空間へと転移する。
自然神の力で核の元となる自分の右側に浮いてるデカブツの反応を進め、黒い塊が熱を持ち始め赤くなっていく。
そして時空神と自然神の能力を使用し、惑星の中心を把握。
同じ状態にしてから……いよいよ入れ替えだ。
「もうちょい…………"ワールドストップ"」
6番世界の時間を止め、核を入れ替える。
そしたら時間を動かし、しばらく観察だ。神眼でマナを見える状態にしておく。
少しすると核のある中心部分からスプリンググリーンの粒が吹き出るのを確認。
そのうちマナの吹き出す特異点ができるだろう。地上まで行くのはしばらく先だ。
元の核と一緒に創造神様のいる神界へと転移する。
「戻りました」
「離れたところに置いて」
言われた通りに元の核を遠くに転移させる。そして自分には多重次元結界を増々にする。
創造神様が元の核の方角に軽く手を振ると、まるで消しゴムでこすられたかのように消える。そしてシュテルの張った多重次元結界も余波で数枚消えた。
「後は……これね」
「これは……マナを撒いてますね……」
「マナが地上に出るまではそれなりにかかる。他の手段で地上からも撒くわ」
創造神様が出した物は手のひらサイズで、透明の四角いケースの中でスプリンググリーンの塊がクルクルと不規則に回っている。このまま置物として使えるかも。
それを複数取り出し、シュテルへと渡す。
「1個は持ち歩いて、残りはてきとーに海にでも撒いておいて」
「分かりました。植物はどうします?」
「植物は法則で変えるのが手っ取り早いのよねぇ……。まあ森とかあったら一回変えて放置でいいわ。ある程度立派なのだけ変えておけば十分でしょう」
「ふむ。しかしあまり無いんですよねぇ……あの世界」
「そうねぇ……でもまあ、無いよりはマシでしょう。あまり時間も無いし」
やれやれと両肩を軽く上げつつ、折角来たので果実を置いてから旅館に戻る。
「お帰りなさい」
「うむ。この世界にもマナを撒くことになった。惑星の核は変えたが出てくるのはそれなりにかかる。という事で少し動く」
「「畏まりました」」
とは言え、植物の書き換えとか自然神の力を持つシュテルぐらいにしかできないので、他はお留守番だ。
キューブを海に撒くのも転移させてしまえば済むので、動き回る必要はない。
そんなわけで、ポイポイと1個以外海に転移させる。1個は机の上に放置だ。
これからは魔力回復が早くなるぞ? 良かったな、退魔師達。
さて、植物を改造して回るか。光合成でマナも出すようにな。




