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43 第4番世界 悪魔襲撃

いくつかの村や街を経由して大体中間ぐらいの、比較的大きな街に着こうとしている勇者一行。

ただ歩くだけというのも暇なので索敵をしつつ、シュテルから話を聞きながら移動している事が多い。


「ユニエールさん、ローストビーフってどうやって作るの?」

「あれはオーブンなどで均等に、長い時間熱を通して作るやつよ」

「転移前はオーブンがあって肉がない……。今は肉があってオーブンがない……。ん? ユニエールさんって……」

「お肉貸しなさい」

「やったー!」


ちょいちょい魔導オーブンでデザートを作っているのを思い出した清家は、キラキラした目でシュテルを見上げ、あざといおねだりを無意識にしていた。

普段だとシュテルの方が清家より小さいが、未だに大人モードを維持しているのでシュテルの方がでかい。

ついでにイラッと来たので今は口調も少し変え『レディ』をしていた。

正直、10番世界に転生して少し経った頃に戻った感があるが、400年以上前の話なのでかなり久しぶりだ。

傍から見ると完全に保護者の夫人になった。夫人は普通馬車移動だが……。


喋りながらも空中で野菜がカットされ、オーブンに敷かれる。

その間にも肉はフライパンで表面に焦げ目がつく程度に焼かれる。肉をフライパンに乗せ、フライパンの下に能力で火を付けておくのだ。


「そう言えば思ったけど、魔法で直接肉焼いたらどうなるの?」

「表面が焦げて中が生焼けのゴミができるわ」

「つまり薄ければ平気……いや、面倒か」

「距離を調整しながら炙るなりすればできなくもないけどね。かなりシビアね」

「それなら鉄板を魔法で熱して焼いた方が早いかー」

「そうね。作ったオーブンもそういう仕様よ」

「と言うか、そのフライパンって……」

「ダイヤモンドだけど?」


シュテルはフライパンもお手製だ。

『ダイヤモンドコーティング? ダイヤモンドフライパンにすればよくね?』

から生まれたダイヤモンドのフライパンである。

精霊の加護付き天然ダイヤの塊だ。値段を聞いてはいけない。


「与えられた熱を均等に伝える魔導ダイヤフライパン」


ちなみにシュテルと眷属以外が持つと、もれなく手も焼ける。

全部ダイヤで作り『均等に』熱を伝えるためだ。欠陥品も良いところだが、火傷とかしないし……熱いとも思わないからいいやとそのまま使っている。

てへってしながら欠点を言うシュテルであった。


「『……可愛く言っても……あれは間違いなく欠陥品……』」

「便利なんだけどねぇ……ほいっと、完成は2時間後」


ちなみに、唯一肉体を持つフィーナも持っちゃダメと言われている。フィーナとて自分の手焼いて喜ぶ趣味は持ち合わせていないので、持つ気はさらさら無い。

そもそもフィーナは旅用の調理器具セットを誕生日に貰っている。


実は熱操作でフライパンの温度を上げるとそれも均等に伝わり、火無しでの調理が可能だったりする。色々と便利なフライパンなのだ。

シュテルがどう使うかは割りと気分次第。


「あれ……煙か?」

「畑で焼いてんのかね?」

「そう思いたいがこの世界だと……」

「だよなー……行くか!」


遠目に見えた煙の確認のため走り出す勇者達。……それを見送るシュテル達。


「ああ! やっぱ火事じゃん!」

「待った! なんかいる!」


勇者達の視線の先、街の上空には『なにか』が数匹飛んでいた。勇者達にその知識は無く、あれが何か断言できない。


「なんか飛んでんな?」

「『悪魔っぽい!』」

「―――あれは下級悪魔ね。それと中級が数体」


勇者達が止まったところに転移してくるシュテル達であった。

走るつもりが一切ない。


4番世界と10番世界の悪魔は姿はともかく、だいぶ違うようで。

10番世界の悪魔は悪魔召喚しない限り来ることはほぼ無い。悪魔召喚も召喚魔法が変わってからわざわざ使う必要も無いのだ。リスクあるし。

しかも悪魔が人間界……つまり地上にいるのを天使が感知すると、突撃してきて天魔戦争始めるからやめて欲しい。


悪魔は人で遊び、天使は悪魔を見つけると即戦闘だ。

天使は天界、悪魔は魔界に住んでいるが、争う場合は地上だ。

対話は可能だが、人の話を聞くかはまた別の話。

神の使いや、邪神の使い……なんてことはなく、天使種と悪魔種のようなもの。

どちらも力を持つほど人の形に近く、翼も多くなる。


4番世界の悪魔は魔王の魔力から生まれてくる魔法生物だ。

つまり人で遊ぶ……のではなく、最初からぶち殺しに来る。

悪魔の能力は千差万別であり、大体飛行能力を持つのでかなり厄介である。



「悪魔最弱、量産型のデーモンだな……お?」


獲物を探してから飛び回っている1体がこちらに来た瞬間、勇者達をガン見。

叫び声を上げながら真っ直ぐ襲い掛かってくる。


「うわ来た!」

「っていっぱい来た!」


叫び声に反応して増援までやってくる。


「あれ? 勇者達と言うか……こいつら……もしかして我々天使扱い? えー? いやまあ確かに? ジャンルとしてはそうなるかもしれないけれど……」

「『悪魔ホイホイ!』」

「喧しい。さっさと倒しなさい」

「貫け、聖なる光よ……"シャイニングレーザー"」


宮武の持つ杖の先から白いレーザーが放たれ、突っ込んできていた悪魔を貫く。

勇者達全員にシュテルから"オールレジスト"がかけられ、状態異常耐性が上がる。


「うわ、なんだあの空飛ぶ目玉! きっも」

「イーヴィルアイね。複数の状態異常魔眼を持ったかなり厄介な中級悪魔よ」


球体の体に大きな瞳と口、翼を持った悪魔だ。

状態異常系の魔眼は見ているだけでその状態異常が発生するので、基本的にレジストするしか逃れる事ができない。

シュテルの"オールレジスト"が無いと地獄絵図だったろう。


同じ量産型デーモンでも、装備によって役割は変わる。

ソードマンだったり、ウィザードだったりだ。

それに加えグレムリンなどもいる。ナタのような物を持った、緑色の生物だ。


「数はそんな! 多くないけれど……っとぉ!」

「飛ぶなゴルァ! 届かんだろうが!」

「ゲハゲハゲハ」

「『笑われてるみたいでムカつくううううううう!』」

「ゲギャッ」

「どっせい!」


飛んでいたグレムリンが、シュテルの重力操作により地に落ちたところを勇者の1人が斬りつけ倒す。

デーモンウィザードから"ファイアランス"が飛んでくる。


「狐火・炎装炎尾!」


清家の尻尾が炎に包まれ、飛んできた"ファイアランス"に尻尾をぶつける。


「炎はこっちの得意分野!」


尻尾の炎が"ファイアランス"を取り込み、尻尾の炎が大きく膨れ上がる。


「狐火・炎装炎舞!」


取り込んで大きく膨れ上がった炎を武器に回し、炎を振り撒きながら戦う清家。

相手の魔力をそのまま自分の物とし扱う超高等技術。清家の場合火属性限定だがそれが可能であり、相手と自分のを利用し爆発的な攻撃力を得る。

とは言え流石に取り込むにも限界があり、自分が扱える限界を超えると普通に焼かれる。相手の炎を自分の炎で包み利用している様な物だ。


「やっぱ火は派手で良いなぁ! かっこいいよなぁ! 俺は魔法あんまりだけどねぇ!」


そう言う長嶺はと言うと《身体強化》で物理で倒していた。


「真面目に戦いはじめて思うけど……! 盾ちいせぇ……なっと!」


長嶺の持つ盾は円盾。バックラーといった感じだ。


「カイトシールド辺りが欲しいな! いくらするのか知らねぇけど!」


グレムリンのナタをガンッと受け流しつつ、首を切り飛ばす。


「ふぅ……終わったか?」

「今の奴らがC+といったところね。イーヴィルアイがB+」

「大体20体ぐらいいたかな? こいつら素材は?」

「魔法生物は倒されれば勝手に消える。素材になれるほどの部分だけ残るわ。こいつらは血じゃなくて魔力が吹き出るのよ」


魔法生物はゴーレムだったり、ガーゴイルだったりそれなりの種類存在するが、魔力によって動いているのが共通する部分だ。

よって傷から魔力が漏れれば動けなくなり、死ぬことになる。

ゴーレムなど体があればそのまま残るが、悪魔などは最終的に霧散してしまう。

その際核となる魔導石や、魔力の集まりが良かった場所がそのまま残ったりする。


「おー、爪だ。ファンタジー素材。それと魔石」

「魔法生物の場合は魔石ではなく魔導石というのよ。魔石より魔導石が優れ、それらより魔晶石が優れる」


普通の魔物がタンクとして作るのが魔石。

魔法生物やアンデッド、天使や悪魔などの魔法生命体が作るのが魔導石。

自然から採れる、マナの塊が魔晶石という。


基本的に出回るのは魔石で、入手先が決っているのでレアなのが魔導石。

スーパーレアどころか、ウルトラレアが魔晶石だ。

マナの塊なので、魔力の塊である魔石や魔導石とは物が違う。


主な採取場所はマナの吹き出す特異点のみ。大体聖域か魔物の巣窟と化しているので入手が困難。極稀だが特異点以外でも無いわけではない。

マナ水晶のため、うっすら緑色。透き通る淡い緑で非常に綺麗。その為宝石の一種として扱う場合もある。


ちなみにシュテルの国、アトランティスは元々聖域の森を開拓した場所で、内部マナ濃度が一定に調整されている。

女神が住んで長いので聖域ではなく神域になっており、更に精霊や妖精達ばかりなので、魔晶石がそこらに転がっていたりする。

とは言え当然採取は禁止されており、ある程度大きくなったら地の精霊達が運んでいく。楽園の果実や魔晶石はシュテルのポケットマネーになるのだ。

大体その売上は使い道がないな……となり国に回され、ボーナスとして役員達行きになる。シュテルは純正竜を肉目当てで狩るので、それ以外の素材は売れるのだ。

資金としてはそれだけでも十分異常な額になる。


「よし、回収終わり!」

「じゃあ街の様子を見に行くか」


そして街に向かっていく。


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― 新着の感想 ―
ダイヤって火に弱くなかったっけ? 熱には強いからいいのか?
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