40 第6番世界 黒装束よりお菓子
今回は短い。
退魔師達は保有魔力が少ない。
保有魔力量は魔法の使用によって徐々に増えて行く。魔力切れまで定期的に持っていく事により、このままじゃヤバイと体が危機感を覚え量を増やすようなものだ。
しかし6番世界はマナがないので、使ったら回復に物凄い時間がかかり気軽に魔法を使うことができない。よって、簡単に増やすことができない。
それが全ての原因と言えるだろう。
これは例え勇者達だとしても同じである。マナがないのが全ての原因だからだ。
しかし、シュテル一行はこれに当てはまらない。
魔力の源になり、植物にとっては成長に必要な栄養でもあるエネルギー体のマナ。
細胞にとってもマナはエネルギーとなり力を発揮する。故に、マナの無い6番世界とマナのある世界では『人』と言っても体の頑丈さだったり、スタミナに大きな差があったりする。
マナは動植物に取り込まれ、その生物が使えるよう魔力へと変換する。
マナの状態では生物には出力が高すぎると言える。自分達に扱えるように、魔力としてエネルギーを保有するのだ。だからこそ魔力光が人によって違う。
一度摂り込み、変換するので個体差が出るのだ。
マナから魔力への変換効率は大体種族によって変わる。
獣人で20%。人間とドワーフが30%。エルフや魔人、天使に悪魔が40%。
ハイエルフ、ハイドワーフが50%。妖精種が60%。精霊が80%。
……と言ったところだ。
ただしあくまで平均がである。それぞれの肉体がしている以上、当然この変換効率にも個体差が出る。
マナの発生源は太陽、惑星の中心たるコア、そして植物だ。
太陽とコアは『まあ、ふーん』と分かる感じだが、何で植物? となるだろう。だって、植物もマナ吸収して自分の栄養にしてるのだ。とは言え、植物も夜は呼吸しているようだし、似たようなものだろうか?
正直創造神様がそうしたんだから気にするだけ無駄だ。
神力がマナになる事を知った始まりの神は、マナを世界に組み込んでみた。
当然、その当初は『マナ』と言う名前は付いていなかったが……。
そしてふと、マナがない世界はどうなるんだろうと作られたのが6番世界だ。
とは言え、全く無いかと言われればそうでもなく。
迷い人が出ない様な穴でもマナは通る。世界規模で見ればかなり少ないが0ではない。まあ、そのマナが妖かしとかになったりもするのだが。
つまり、6番世界の『退魔師』と言われる裏の者はかなり苦労している……と言うわけだ。この者達の先祖は6番世界に迷い込んだ他の世界の者。
それでシュテルに関係ないのは魔力の源たるマナ……の源である神力を持つから。
故にマナから魔力への変換効率もなにもないのだ。これは神々共通である。
ちなみに神力とマナの間には特大の、マナと魔力の間には大きな差がある。
空気中に出た神力は大量のマナへと変わり、動植物に取り込まれ魔力になり、魔法などで放出された魔力はそのまま役目を終え消失する。
神様魔導炉とか創ればそれはもう素晴らしい永久機関の完成だ。……シュテルどころか創造神様が出張ってくる可能性が高いが。
真っ向から神々に喧嘩売った方法だし、当たり前である。
退魔師達は余裕のあるうちに魔装具を作り、倒すのに使用しているようだ。
魔装具と言うのは魔道具の武具版だ。魔道具は生活用品だと思っていい。
それでその魔装具というのが所謂御札のようだ。
魔弾とか言う代物も考えたようだが、銃とか日本じゃ持てねぇし、サプレッサーを付けても音が消えるわけじゃないからダメ。音を消すのに魔法使ったら節約の意味も無いってんで速攻でボツな模様。
紙なら発動と共に自分も破壊させれば証拠隠滅も楽勝である。
よって、今でも御札を重宝する模様。
バリバリバリ。
「大変ですね……」
「で、あれはどうします?」
「喧嘩売ってこないなら放置でいいだろう。覗いてたらたまに遊ぶけどな。見られるのは慣れてるが、コソコソ覗かれるのはなんかムカつく」
ポリポリポリ。
「気づかないならともかく、バッチリ分かってますからね……」
「正直話すのも面倒だし、あのまま帰らないかねぇ?」
「何言うか悩みますからねぇ」
「んだな」
バキバキ! ボリボリボリ。
「めっちゃ食ってんなシロニャン。と言うか飴を口に入れた瞬間噛み砕くのはやめてさしあげろ」
今はお気に入りのお菓子を探している最中なので、味さえ分かればいいと飴を舐めずに噛み砕いていた。悲しい。
シロニャンはお菓子に首ったけ。
退魔師達に興味すら示さないのは正直予想通りと言えるので、スルーである。
次元の壁修復はもうすぐで終わり、なんとか次元干渉前には間に合いそうである。
6番世界は次元干渉が始まってからが本番なので、正直それまでは観光ぐらいしかやることがない。
今のところの問題とすれば……退魔の黒装束次第。
正直どう動くか待つ……と言うのも面倒だし、いっそこっちに強制転移させてやろうか……と思ったりするシュテルであった。
待つと言うのはこれが結構……ストレスが溜まるのだから。




