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04 相談と食事

こっそりタイトルを変更しました。

現人神の日常→現人神の導べ

みちびく、みちしるべ的な感じで。

いつもと変わらず優雅にカップを傾けるシュテル一行。

しかし当然召喚された学生達はそうもいかず、親しい者達で集まり話していた。


13歳の中2には不釣り合いな豪華な部屋。

そこで1人の男と1人の女、狐の耳と尻尾を持った女の3人が話していた。


「色々突っ込みどころはあるけど、どうしようかこれ」

「どうするっても、取れないんだろ? 耳と尻尾」

「無理だなぁ。と言うか動かせるし、触れば分かるから神経繋がってると思う」

「可愛くなっちゃってまー」

「可愛くなったのは不幸中の幸いと思っておくよ……」

「性別変わった挙句不細工だったらガチへこみするわな」

「まあ、別に絶対に男がいい! とか言う拘りも無いし別にいいんだけど……問題は勇者召喚だよね」

「だよなー」

「だよねぇ……」


仮想空間の中に入って遊ぶDVRゲームは中2だけあってよくやる。

ただ、それが現実となるとまた別だろう。ゲームのキャラで召喚された訳でもないし、実際に剣なんて握ったことはない。銃刀法違反もいいところだ。

ちゃんとゲームと現実の区別が出来ている3人である。


「そう言えばあの子……メイドさんを連れた女の子どう思う?」

「えっと、ユニエールさん?」

「教えられた中に入ってたな。この魔法もすげぇよな……」


誰が味方で、誰が敵か。貴族達の名前と顔を魔法によって教えられた。忘れることはないだろう。

その中に自己紹介も面倒だからと魔法使用者であるシュテルと、侍女のブリュンヒルデ、ペットのシロニャンも入っている。


「んまあ、俺としては信じていいんじゃないかとは思う。俺らの事気遣ってくれているのは確かだ。特に楓、お前な」

「そうだね。あれで400歳超えてるのはびっくりだけど……」

「ロリババアって奴だな! リアルで会えるとは思わんかったな!」

「せめて合法ロリと言って差し上げろ。ババアでキレたらどうする。どう考えても強いでしょあの人」

「どっちも失礼よあんたら……」


全くもって失礼だが、そんな事で怒るような人ではない。女神は寛容である。

当然与えた中に女神というのは入ってないし、女帝というのも入っていないが、冒険者だったことを入れてある。


「強いらしいし、俺らが戦えるようになるまで守ってもらうのはありだろう。ただあの人、謁見の間? でヘイト稼いでたんだよなー。あれ、わざとだろうなぁ」

「あそこで言わずに、解散後俺らに教えてくれればいい事だもんねぇ……」

「そうなんだよ。俺らから……特に楓から注目を外すのが目的か?」

「どうしてそこまでしてくれるのかが分からないんだよね……」

「そればっかりは聞かなきゃ分からんわな」


うーんと頭を悩ませる3人。

そして考えてる間に御飯の時間である。




「お食事のご用意ができましたので、ご案内致します」


ふむ、ご飯か。どんな料理が出てくるか楽しみではあるな。

時空神の空間把握で何か分かってしまうんだが、味は流石に分からない。

ちなみに料理は3人分頼んでいる。シロニャンはハリネズミの姿をしてるだけで、我々と同じなので雑食である。


呼びに来た侍女についていき、食堂へと向かう。

長机と椅子が並び、料理が置かれている大部屋だ。そこに制服姿の学生達が並んで座っているから学食風景である。

並んでいる料理の豪華さと、壁際に待機している侍女を除けばだが。


「お好きなところにお掛け下さい」


どこも料理は同じなので、言われた通り3席空いてるところに陣取る。

若いだけあって腹ペコなのか学生達の集まりは早い。宮廷料理というのも気になるのだろう。

我々の向かい側は狐っ娘3人組が陣取った。


割りと多くの者がいただきますと言い食べ始める。久しぶりに聞いたな。

正直世界が違うから言ってもしょうがない。言うなら作った料理人に直接言うか、侍女に伝えてもらうぐらいだ。

そして何より、『時空と自然を司る神』である私は言われる側の存在である。


もぐもぐしていたら宮武が話しかけてきた。


「……やっぱりユニエールさんって貴族かなにか……?」

「……まあ、少なくとも自由に城へ出入りできる程度の立場にはいたな」

「だよね……すごく動作が綺麗だもん……。メイドさんも連れてるし……ドレスも凄い……」


今着ているドレスは従魔の1人、アラクネのベアテが作った物だ。

ベアテと契約精霊達の力を合わせてできた糸が『聖魔糸』。その『聖魔糸』で作った布が『聖魔布』だ。この『聖魔布』だけで作られたドレスを着ている。


聖魔糸はどの精霊から力を借りたかで色が変わる。

火の精霊に借りれば赤、水の精霊で青、風の精霊で緑、地の精霊で黄色、光の精霊で白、闇の精霊で黒だ。鮮やかさなどはベアテの望む通りになる。

基本的に聖魔布はかなり薄く、半透明で透けている。だから服として使用する場合、複数の布を重ね合わせ、色の調整をしつつ使用する。


精霊の力を多分に含んだ聖魔布は非常に軽く、非常に丈夫で、皺に為らず、汚れを弾く最高の布である。

ただ、聖魔布を作れるのが今のところベアテだけなので、流通には出していない。


そして私の今着ているドレスだが、デザインは侍女のエブリン。

全体的にフリルは控え目、レースが多い。その為あまり広がってはいない。

胸元と肩は出ており、二の腕辺りで胴体と繋がっており長袖。

スカートは前が短く、他はふくらはぎ辺りまで。

背中は腰まで開け、最低限の4本がX字で留めている。

靴下はニーソだな。


色は白をベースとして淡い赤、淡い青、淡い黄、淡い緑を使用。

白と青がメインで、赤と黄色がアクセント。緑は赤と黄色よりは使われている。


レースのデザインは雪結晶の羊歯六花。

羊歯六花は淡い青、他は白でレースが作られ、下に淡い緑で蔓っぽいのが羊歯六花を支える様なデザインをしている。

胴体部分の模様はところどころ切り抜かれており、下地の淡い青色がその形で見えるようになっている。


デザインは良いのだが、エブリンには少々問題がある。

あいつ着るの自分じゃなくて私だからと、エロに走る事がある。と言うか走る。

結果が服を着ているというより、張り付いているイメージに近く、生地も薄く体のラインが出る。

胸は載せているだけのイメージで乳首ギリギリ。上と左右はちょっとぷにっとはみ出気味である。


まあ、私は生物ではないので乳首はないが。それを知っているし、聖魔布で作られた服は魔装具となる。魔道具の武具版だ。よってズレる事がない事も知っている。

だからエブリンはやりたい放題であった。


ちなみに私の羞恥心はとっくに行方不明だ。生物じゃないからな。

女神と言っているが、ぶっちゃけ人の形を取った時、男性型か女性型かの違いだ。

人の形である必要も特に無いのだが、人間社会にいる限り必須だろう。得体の知れない物には恐怖する生き物だからな。


ちなみに、胸元に卵型をしたカラフルな植物の種をネックレスとして吊るしている。この種は私の自然神の力を使用したメイン武器だ。私の思い通りに形を変える植物。生体武器と言える物だ。

剣は勿論、斧や槍、杖や鎌、薙刀とか鎌だって可能だ。

自然神の能力の1つである、新植物の創造。それを使用して武器となる植物を創造した。逆に言うと、これ以外の武器は持ったところで私の力に耐えられん。

これを使わないなら素手でいい。これに知能は無いから安心してくれ。


私の装備はそのぐらいだな。

ちなみにネックレス型と言ってもチェーンじゃない。種から伸びる蔓でぶら下がっている。当然私専用の神器だ。


「見る分には良いドレスだろう? 着たいとは思わんだろうが」

「えっ……と……うん、流石に恥ずかしいかな……」


胸元を見てそう言う宮武であった。まあ、そうだろうよ。


「まあ、この国の騎士達が着てる金属鎧より性能良いけどな、これ」

「「「えっ」」」

「伊達に精霊の力でできていないさ。魔装具と言われる物だ。まあ、マジックアイテムだな」

「「「おぉー……」」」


もぐもぐ……。

料理人の腕は悪くないと思う。ただ、この世界も流通があれだな?


『……4番世界も香辛料不足ですか?』

『のようだなぁ。10番世界より魔物は弱い感じだが、魔王という指揮官がいる分殺意は高そうだな』

『補給路潰しは戦争の基本ですね。あれ、でも魔王ってまだですよね?』

『復活しそうってだけで、復活自体はまだらしいな。魔王のせいか4番と番号が若いくせにいまいち発展していないな』


"念話テレパス"は口を動かす必要がないので、食べながらでも普通に会話が可能である。

シロニャンは念話にすら反応せず黙々とハリネズミ形態で頬張っている。


「楓、これやる」

「じゃあこれあげる」

「おう」

「好き嫌いせず食べなさいよ……」

「「無理!」」

「野菜食べろ!」

「「食べてるだろ!」」

「キャベツだけじゃないの! ピーマンぐらい食べろ! 小学生か!」

「「そんなに食いたきゃやるよ」」

「あんたら……こっちの野菜美味しいのに」


うんうん、元気なのは良いことだ。引きずってメソメソしてるぐらいならこのぐらいの方がいいだろうし……中学男児はそんなもんだろう。好き嫌いない方が珍しいんじゃないか。


10番世界と同じく、こちらにも精霊達がいる。ただ、10番世界よりは数が少ないようだ。

少ないけどいることには変わりない。精霊達の加護があり、いない6番世界より野菜が美味しい。


「あれ、今更思ったんだが異世界なんだよな?」

「じゃなかったら俺の説明がつかない」

「だよな。何で見覚えのある食べ物しか無いんだ?」

「「……確かに」」


そこに気づくとは天才……ではないな。落ち着いていれば普通気づく。

だが何故3人してこっちを見るか。まあ、知ってるからこっちに聞くのが正解ではあるのだが。至って単純な、簡単な理由だ。


「……知りたいか?」


問うと3人共コクコクするので教えてあげるとしよう。


「答えは簡単だ。作った方が同じだから」

「「「……え?」」」

「同じ神が世界を作ったからだ。同じ神が作ったから同じ野菜が別世界で使われていても不思議ではあるまい」

「それって所謂手抜き……」

「本来なら気づきもしない事だから良いんだよ。こちらに何か問題あるわけでもあるまいて」

「まあ、確かに」

「とは言え、世界により微妙に違う事はあるぞ。同じ物でも環境によって育ち方は変わるだろう。味も形もな」

「という事は……食べ物以外にも共通点があるかも?」

「既に体験しているじゃないか。空気や重力、物理法則は同じだろう」

「……あれ、もしかして召喚された瞬間死ぬ可能性あった?」

「無いとは言えないねぇ。空気の配分違ったらアウトだろう。当然違う部分もある。法とか常識がその最たるものだな」

「聞いといて何だけど、ユニエールさん詳しいな……」

「情報収集してるからな。情報は武器だよ諸君」

「頭脳戦はちょっと……」


まあ、全ての情報を無視してただぶん殴るのも好きだけど。

と言うか野菜云々は良いんだが、何の肉かは気にならんのかね?

美味しければいいのかね。言わないでおくか。


「あれ……放っといて大丈夫……?」


3人がガン見してるのは皿に頭から突っ込んでるシロニャンである。人間用の皿そのままだから、サイズ的にもそうなる。


「大丈夫だ。いつもの事だからな。見てると可愛いぞ」


小動物の食事シーンは可愛いものである。

シロニャンなら頭突っ込んでも汚れることはないしな。


食べ終わった後はヒルデがいれた紅茶を飲みながらのんびり過ごす。


「ユニ様、お風呂なら入っても良いそうですよ」

「そうか、さすが勇者。待遇が良いな。では後で入るとしよう」

「お風呂……あれ? 俺まさかの女湯行き?」

「むしろその体で男湯行く気か? 行くと言うなら別に止めはしないが」

「……遅くに入ろうかな。あれ、となるとトイレも……?」

「だな」


ハハハハ、風呂入った時に突撃してやろう。

それまでは部屋に戻って壁の修復だな……。



次元の壁はぱぱっとできるような事じゃないからなぁ。家の土台を家建った状態で修理するのと同じだぞ……。

壁がボロボロだから2世界から召喚されたんだろう。その分消費エネルギー少なく済むだろうから。正しく天災だ。私に対する嫌がらせとしか思えん。

しばき倒そうにも作った奴はとっくの昔に死んでるんだよなー。


ガタガタガタガタ。


「おや、地震ですか?」

「いや、妾の仕業だ」

「何してるんです……」

「次元の壁修復の影響だ。正確には地震じゃなくて空間振動だな。地面じゃなくて世界そのものが揺れる」

「ああ、なるほど。確かに揺れが変でしたね」

「抑えられなくもないが、そちらに力回すのもな。大した揺れじゃないし」

「城の者はそれなりに慌てているようですが、子供達は微動だにしていませんね」

「日本人がこの程度で慌てる訳もない。地震大国とすら言われる国だからな」

「なるほど。まあ、放置でいいですか」

「構わん」


シロニャンやヒルデなどの眷属達は、シュテルとの契約により空間把握能力が極端に上がっている。流石に世界を把握するシュテルほどではないが、王都丸々把握する程度は余裕である。

よって、城の中の者達がどう動いているかなど手に取るように分かる。


来ることが分かってるのに不意打ちが通じる訳もなく、思考が読まれるので暗殺ができるはずもなく。文字通り格が違う女神と眷属に敵うはずもなく……。

結果、弄ばれて飽きたらボロ雑巾にされ、飼い主のところに捨てられる。

そして飼い主が飛び起きて慌てるのを見るのが、元の世界での遊びである。


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