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31 第4番世界 本題の翌朝

いまいちモチベがなかったので、ゲームしてた。

4番世界フェルリンデン王国、シュテルの部屋。


シュテルの分身体とヒルデがいるが、そこへセラフィーナ、エルザ、イザベルがやって来た。


「おや……2人はともかく、フィーナも来たのですか」

「まあ、4番世界なら問題あるまい。大体いつもお留守番だからな……」

「なるほど……」

「言ってみたら連れてきてもらった」

「1人でふらふらしてはダメですよ?」

「はーい」

「とりあえず、ご飯行くか」


部屋を出てぞろぞろと食堂へと向かう。


「「ふむ……。普通ですね」」

「そりゃな。我々の世界と大差ない世界だからなぁ」


異世界と言えば、様々な『違い』を楽しむのだろうが、4番世界と10番世界は大差ないので、その違いが何とも言えない。

つまり『面白みがない』という事だ。


「ああ、そこの。料理を3人分増やしてくれ」

「は、はい。畏まりました」


勇者達は食べ盛りでおかわりする。3人分ならすぐに用意できる。


それぞれ椅子に座り料理を待っていると、ぞろぞろと学生達がやってくる。


「うおう……。翼生えとる……」

「おぉ……、目がしゅごい……」

「目も翼も目立つから隠していただけさ」


女神という正体をばらしたので、ここでは目も翼も隠す必要がなくなった。隠さなくていいなら隠さない方が自然体で、楽なのだ。

そこへ一応同じパーティーの長嶺、清家、宮武がやってきた。3人はシュテル達の向かい側に座る。シュテルを中心にヒルデとフィーナ、更にエルザとイザベルが座っている。


「あれ、増えてる?」

「娘と眷属騎士だ」

「『むす……えっ?』」

「当然養子な」

「もしかしてエルフ?」

「正確にはハイエルフだ。古代種の超レア物」

「エルフとの違いって?」

「エルフよりも遥かに精霊に近く、不老。寿命は無いが不死ではない存在だな」


精霊に近いだけあって魔法適性はかなりの物。

セラフィーナはシュテルから貰った魔導弓・アルテミスを愛用している。

アルテミスは神霊樹と言われる御神木で作られており、見た目はアーチェリーで使われるリカーブボウにコンパウンドボウのカムシステムを付けた物だ。スタビライザーはばっちり付いているが、サイトは付いていない。エルフは目視で十分である。そして普通の矢も使えるが、基本的には魔法を矢の形にして放つ。

ただ大型の弓なので、普段は木の指輪としてフィーナの指で待機している。


眷属騎士の2人、エルザは赤い刀身をした直剣と小さな黒い棒。イザベルは青緑色の刀身をした直剣を2本装備している。

盾はヒルデの持ってる小さな黒い棒。それを小手の形ではなくカイトシールドの形にした物だ。

剣は持ち手がマナタイトクォーツ。その中に核となるルナクォーツが仕込まれ、刀身は魔力で作られている。《魔力操作》で刀身の長さは勿論、刃も作れる。と言うより《魔力操作》で刃を作らない限り剣の形をした鈍器。

刀身の色はそれぞれの髪の色と同じ魔力光。エルザは赤、イザベルは青緑だ。魔力なので刀身は透けている。


マナタイトクォーツは白い水晶で、ルナクォーツは青白い宝石。

白い水晶の中に青白い宝石が見え、魔力光の刀身がある片手直剣という訳だ。

《魔力操作》で刃を作らない限り安全なので、鞘は無い。



「そう言えばユニエールさん? これからどうするの?」

「む? ……ああ、別にどうもしない。『世界を破壊する原因』は既に排除したから、女神の仕事は終わりだ。地上にいる生物達のすることに口は出さんよ」


基本的に神々は世界の管理をするだけだ。

惑星に住んでいる生物達のすることに口を出したりはしない。例外が『世界が滅びそうな危機』だ。


「あ、そうなんだ」

「うむ。お前達人間が魔物にやられたところで、神々は動かん。我々からしたら人間という動物が、魔物という動物に狩られただけだからな」


人間達がそれで騒ぐのは『同族』が殺られた事に対して騒いでいるだけだろう。

知り合いでもない限り『あの魔物に人間が殺られた事がある』という事しか覚えん。それはつまり『同種族』に対する注意を促しているだけだ。

それは人間という個が弱く、群れることで生活する事を選んだから必要なこと。

『あの魔物は人間を襲った』『あの魔物は危険』という事を知らせている。それによって今後の対策をするのだ。


「神々に頼るのはお門違いという事さ。まずは同族を頼るべきだろう。同族でなんとかするべきなのだ。お前達人類にとっての問題が、同じく神々の問題かは別だ」

「あれは? 3つの願いを叶えてやろう! とか」

「妾は『時空と自然を司る神』だぞ? 後『契約と断罪の神』でもあるが、少なくとも『願いを叶える神』ではないのは確かだな」

「流石にあれか、ピンチの時だけ祈ったところで無駄というわけだね!」

「断言してもいい。無駄だ。普段から毎朝祈ったりしてればわんちゃんあるが」

「えっ、あるの?」

「少なくとも我々の10番世界では妾がいるからわんちゃんある。一応祈られれば分かるからな。毎朝祈られれば流石に覚える。朝である必要もない。ただの例だ」

「おぉー……」

「とは言え……死にかけた時に助けるぐらいだろう。他は知らんと言うか、管轄外だ。人間社会でのイザコザは知らんよ」

「魔物に襲われたけど奇跡的に! とか、地震で家が崩れて下敷きになったけど奇跡的に生き残った! とか?」

「そうだな。少なくとも妾は人類にとって都合の良い神ではない。敵ではないが味方でもない。触らぬ神に祟りなしとも言うだろう。神々に祈る前に同族に頼め」


朝食をもぐもぐしながら話す女神と狐っ娘。

そして同じく食べているフィーナの一言は『お家の方が美味しいね』だった。


「我が国がどれ程食に恵まれているか分かるだろう?」

「うん。でも他の大国も美味し……ってそうか、輸出してるからか」

「そうだな。我が国から肉と香辛料、ファーサイスから野菜。周囲4大国はどこも同じだ。後は料理人の違いと、その国だからこその特産品を使用したりだな」

「そう言えばかなり前、だいたいこんな感じだった気がする……」

「香辛料が出回り、料理研究が進む前だな。塩や胡椒と味付けが限られてた時はこんなだったぞ」


とは言え、別に不味いわけでもないので食べるのは止めないフィーナ。


「と言うか楓、よく普通に話しかけられるな……」

「んえ、何が?」

「女神様だぜ? 女神様」

「うん、女神様だったねぇ。びっくりだねー。でも目が開いて翼が出たけど、それ以外は今までと変わらないし……」

「昨日も言ったが、別に呼び方も口調も気にする必要はないぞ?」


あれは所詮人が勝手にそうしているだけだし。そんな些細な事で怒りはしない。

『常識』とは実に曖昧な言葉である。国が違えば常識は変わる。世界が変われば当然変わる。種族が違くても変わるだろう。下手したら個でも変わる。

同じく『モラル』も実に曖昧だ。

集団で行動するなら曖昧では困る。だからこそ『法』なのだろう。


まあ、それは置いといて。


「お前達、『悟り妖怪』って知ってるか?」

「『え?』」

「えっと……心を読むとかってやつじゃないっけ?」

「そうだな。心を読む、思考を読む、考えている事を見抜く……。色々言い方はあるが、言葉に出していない事すらもバレる妖怪の事だな。……妖怪にできて、女神である妾にできないとでも?」

「『えっ』」

「故に呼び方や言葉遣いなんて些細な事は気にしない。バカにしてないなら怒る理由がないのだ。むしろ妾より、眷属達の方が気にするんだよなー」


そういうシュテルは少々遠い目をしていた。

眷属達は元近衛が大半だ。女神である事を抜いても、自らが仕える主をバカにされてムカつかない訳がないのだ。かと言って、騒ぐのは主の評価に関わる。それはいただけない。その葛藤が目に出て、睨むのである。相手がバカにすればするほど、魔力が乗り、殺気が混じっていく。魔力というのは感情に左右されやすいのだ。

流石に眷属達はちゃんと魔力制御はするが、目はばっちり睨んでいたりする。

男女問わず美形に無表情で睨まれたらさぞかし怖い事だろう。


「妾をシュテルと呼ぶのは創造神様のみ。眷属達はユニ様と呼ぶ。それ以外は女神様、ユニエール様だな。女神ユニエールとかも極少数ながらいたか。自国民は普通に陛下が多いな」

「ユニエール様が安定かな?」

「だろうなー」

「好きにしたまえ」


その横でフィーナは机の上に座っている自分の契約精霊に、フォークに刺した肉を食べさせていた。実に幸せそうにもぐもぐする精霊である。

それを見た宮武が反応した。


「えっ、かわいい。なにそれ」

「私の契約精霊です」


そう言いながら精霊が指差した物を刺し、精霊の口に持っていく。


「おぉー……かわいい。精霊もご飯食べるんだ?」

「食べますよ。意味はないですけど」

「えっ」

「そう言えば神様もご飯食べてるね」

「満腹や空腹は無いが、味覚はあるから食べはするぞ」


眷属を含め、シュテル達は元人間である。

三大欲求で唯一辛うじて残ったのが食欲だ。生物にある満腹や空腹がないので首の皮1枚と言った状態だが、味覚はあるので美味しいのを食べるのが趣味の1つになっている。


そしてシュテルの真似をして食べ始めたのが精霊達だ。精霊達のために魔道具も作ってあり、フルーツポンチなら好きに食べられるようになっている。そのフルーツポンチに使用されている果実は当然のように楽園の果実だ。

その果実を使ってフルーツジュースが作れるドリンクバー的な物も作ってある。



「あの……ユニエール様?」

「ふむ……。可能か不可能かと問われれば、可能と答えるだろうな」


聞いてきたのは長嶺だ。

思考はどうやってセラフィーナ、エルザ、イザベルの3人を連れてきたのか。

そして、もしかして元の世界に帰すことができるのでは……という当然といえば当然の疑問だ。


「え、じゃあ! ……いや、何か理由が……?」

「ほう、冷静だな。実に良いことだ。未だ自分達がここにいる。それが答えだ」


帰すことができるなら、勇者達はとっくに帰っているはずなのだから。

シュテルとしても帰せるなら面倒見るより帰した方が楽だろう……と。


「理由が……知りたいです」

「重要なことが2個ある」

「はい」

「君達を召喚したのがこの世界の神々だったなら……同じ神である妾が帰すことに何の問題もない。神がやった誘拐を、神が解決するだけだからな」

「俺達を召喚したのはこの世界の人間……」

「うむ。別世界とは言え、生物がやったこと。神々としては干渉しないタイプの問題となる」

「それだけでも答えっぽいけど……もう一つは……?」

「どちらかと言えば、こちらの方が重要だ。君達の体は、既にこちらの世界に適応してしまっている。それが異世界転移という『事故』に対する世界の処置だ。召喚だけでなく、迷い人にもこれは適応される」

「うーん? つまり……?」

「君達は既に魔法が使える。厳密には前の体とは違う体だと思っても良い。清家は言わずもがな」

「『えっ』」

「……性別変わってないだけ良いじゃん」

「『…………』」


清家のぼそっと呟いた事に言い返せない勇者達であった。


「この世界にあって、向こうの世界にない魔力の源、マナ。マナを吸収し、魔力を回復させる。魔力不足は体の不調へと繋がる。ではマナの無い世界に行ったら?」

「え、まさか……?」

「《身体強化》や《生活魔法》を使えば魔力が減る。一気に使い気絶しても1日もあれば十分回復するが、6番世界ではそうもいかん。マナが無いため回復が微々たる物。死にはしないが、ダル重状態が続くな」

「で、でも……向こうの世界なら魔法を使う機会は……」

「本当にそう思うかね? 君達は《生活魔法》の存在を知っている。《生活魔法》と言うだけあって、生活する分には非常に便利な魔法だ……」


薬に頼らずに生理痛を抑えられ、かすり傷もすぐ治す……"ファーストエイド"。

いつでもどこでも飲水生成……"ウォーター"。

生温くなった飲み物を温める? それとも冷やす? "ヒート"と"クール"。

暑くなってもすぐにそよ風、プチ扇風機な……"ブリーズ"。

そして何より、汗で気持ち悪い? 好きな人の隣に行きたいけど臭いが気になる? 飲み物零して服が汚れた? 風邪で風呂がだるい? そんな多数な悩みを瞬時に解決……"ピュリファイ"。


「我慢できるのかね? 特に"ピュリファイ"の使用を。《生活魔法》の中では一番魔力消費が多いぞ。フフフフ……」

「『うぐっ……』」


勇者達は見事にシュテルの言った使い方をしているのだ。いや、むしろ分かっていて言った。それらを使わずに我慢できるかな? である。

そして追い打ち情報が、マナのない世界での魔力自動回復速度は自分の生命活動に必要な分しか無いという事だ。魔力を作る臓器なんか無いし。


フフフフ……と実に悪い顔で笑っていたシュテルはふと笑うのを止め、少々真面目な回答をする。


「場合によっては帰す未来も無くはないが、中々面倒な状況だろうなぁ」

「『えっ、本当?』」

「断言はしないが。とりあえず、君達はこの世界で生きれるようになっておけ」


そう、まだ何も言わない。

創造神様は統合するなら10番世界をベースにすると言った。つまりマナがある世界だ。マナは太陽と惑星のコア、そして植物が生成する。

宇宙統合の場合、中心となる太陽はマナを発生させる10番世界の太陽。

次元統合の場合でも、4番世界と10番世界の2つと何かしらの方法で繋がれば、そこからマナが行く可能性は十分にあるだろう。


つまり、勇者達が帰れる可能性は十分にあり得ると言える。

が、その際行くのはマナだけではない可能性もあるので、この4番世界で生きていけるようになっておく事は無駄にはならないだろう。



変わらず紅茶でも飲みながら、眷属騎士やフィーナと勇者達を見守るシュテルであった。フィーナが勇者達と遊んでるのはまあ……良いだろう。

城から出る時は一応目を閉じ、翼は消している。


……追加情報として、召喚したマーナガルムはフィーナを乗せて走り回っていた。


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