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20 実地訓練

今回は出発まで

「よーし、忘れ物は無いなー? 忘れたら地獄見るのはお前達だからなー」


遠征演習……まあ、実地訓練だ。

往復と泊まりで大体1週間ほど馬車で旅に出る事になる。勇者達にとって初めての遠出だ。

選択授業の戦闘は実技だけでなく、一般的なテントの建て方や薬草の見極め取り方など、所謂サバイバル訓練的な事も教わっている。ちなみに乗馬も。移動は主に馬だ。長距離移動するなら必須だろう。特に魔王討伐という旅に出る(はずの)勇者達には必須技能である。


乗馬訓練初日に微妙に騒ぎがおきたが……。




「よし、これより乗馬の授業を始めるが……大体皆乗れるよな?」


縦に首を振る現地人と、横に首を振る異界の勇者達と、何やら考えるシュテル。

現地人からすれば乗馬は普通のことだ。貴族なら特に、家に馬がいても普通。

中2の勇者達が乗馬なんてできるわけもなく。乗馬できる人の方が少ないだろう。

シュテルは……転移した方が早いし、飛んでも良い。馬がそもそも不要だったので、乗馬はできない。


「ふむ、君達の世界では乗馬しないのか?」

「しませんね。馬を使う場所なんて限られてますし、乗れる人の方が少ないかと」

「なら要練習だな。移動は基本馬や馬車だ。世話はできた方が良い」

「ユニエールさん、馬は?」

「こっちの世界でも移動は馬や馬車だったが、妾には不要だったので乗れんな」

「不要? 使わなかったの?」

「妾は転移した方が早いし、個人飛行もできるからな。馬なんて遅い物は使わんよ。こっちの世界はでかいのだ。移動が地獄だぞ」

「飛べるの!?」

「飛べないと思ったのか? むしろ妾は空の方が好きだが」

「飛びたい!」

「まだ早い。今飛んだら落ちて死ぬ」

「むむぅ……」


中央5大国の移動ならまだしも、それ以外は王都から王都の移動で一月とかざらである……。まあ、途中に村やら街やらあるけれど、それでも一週間……5日だな。野宿する事も普通にありえるのが10番世界だ。


「馬は良いや、乗り物は自分で用意しようか。妾も騎乗しよう」

「え、自分で?」

「《使役魔法》の1つ、召喚を見せてやろう」


そう言ったシュテルの手のひらに、立体型の球体魔法陣が出現する。

それをぽいっと宙へ放り投げ、呪文を唱え……ない。


「背に乗せてくれ、月の狼……マーナガルム!」


宙へ放り投げられた球体魔法陣が即座に広がり、門となる。

そこからのそりと現れたのは大きな狼だ。金の瞳にふさふさの蒼銀の毛。

威圧感抜群で馬がビビる。馬どころか人もビビる。


本来高ランクの召喚には鍵となる呪文が必要だ。

球体魔法陣に鍵となる呪文を与えることで、召喚する門が繋がる。

しかし、時空神であるシュテルは鍵をガン無視して手動で繋げた。


マーナガルムは人を丸呑みできるサイズであり、見上げるレベルの大きさになる。

そんな狼が突然でてきたら当然ビビる。しかも威圧しまくってるからたまった物ではない。しかも喋る。


「もっと威圧を抑えなさいマーナガルム」

「これでも抑えているのだがな。軟弱者共め……で、娘はいないのか?」

「フィーナならお留守番だ。別世界に召喚されてしまってな」

「……主をか? ふはは、なんという命知らず! これだから人は面白い。……戦う分には弱すぎてつまらんが、見てる分には良いな」

「そうな、見てる分にはな。今回は見事巻き込まれたわけだが」


マーナガルムはフィーナの事が気に入ったらしく、よく背に乗せて走っている。


「ああ、こいつの扱いもシロニャンと同じだ。不用意に触ろうとしたら食われるぞ」

「人間なんぞ好んで食ったりせんが……有象無象に触られる気はないな」

「まあそんな事はどうでもいいとして。背に乗せてくれ」

「珍しいな」


そのままシュテルはマーナガルムの背に乗り、物凄い速度で走り去っていった。


「……えーっと、じゃあ乗馬練習しようか」

「『ういーっす』」


無かったことにして始める教師である。

ヒルデは乗馬が可能なので、勇者達に教えていた。


「《身体強化》して走った方が早くね?」

「こういう時にふと思うけど、いつの間に人間止めてたんだろうな」

「馬より足が早い。今ならオリンピックにも出れる気がする」

「《身体強化》ってドーピングじゃね?」

「でも検査じゃバレなくね?」

「「……行ける!」」

「こら」


清家と長嶺の会話に突っ込む宮武であった。初日以外は平和だった。




学園の訓練場にて、馬と馬車が並び待機中。

学生達はそれぞれに割り当てられた馬車で準備中だ。

参加するのは選択授業で戦闘を選んでいる者のみ。それ以外を連れて行ったところでしょうがない。


「忘れ物は無いかー?」

「買ってそのまま空間収納に入れたんだから忘れようがない」

「ねー。便利でいい」


パーティーごとに馬1匹、馬車1台用意されている。中々太っ腹だ。

訓練中、馬の世話と馬車の確認など全て自分達で行う事になっている。

肉類も現地調達になるだろう、かなり本格的な実地訓練だ。


4番世界の旧魔法形態にとって、《空間魔法》はレア魔法である。

勇者達は違うので、皆普通に空間収納を使用する。と言うか、シュテルが便利だからと覚えさせた。よって馬車の中は物が無いため広く、馬も快適だろう。


そして、学生達なので護衛の騎士がパーティーに2人ずつ付いている。

よって大体馬車1台に学生4人前後、騎士2人となる。


長嶺、清家、宮武、シュテル、ヒルデの5人と騎士2人とペット1匹。

とは言え、馬車で移動していても護衛は必要である。

御者席に1人、外に周囲警戒の護衛4人回る事になる。騎士2人は外に出るので、学生から2人が外、従者に1人となるだろう。


「さて、俺らは護衛順どうするか」

「宮武に御者させて、2人で外出るかね?」

「そうするかねぇ……ユニエールさんどうする?」

「それでいいんじゃないか? 正直索敵なら妾がいれば十分だが……経験しといた方がいいか。好きにやってみろ」

「じゃあそれで」

「うへぇ、緊張するなー」

「事故んなきゃ大丈夫だろ」

「即死しなきゃ治せるから安心して事故っていいぞ」

「いーやーだー!」


ぞろぞろと馬車に乗り込み、宮武が騒ぐのでヒルデを横に付け御者席に座らせた。

何かあったらヒルデが代わるだろう。


そして1列に並んでぞろぞろ門へと向かい、門をでたら護衛は降りる。

訓練とは言え、初めての旅が始まる。


実は前作30話とかでちょろっとだけ出たマーナガルムちゃん。

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