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おれの名を呼ぶな!  作者: 古柴
番外 『レイヴァース家の異聞抄』編
761/820

第749話 14歳(夏)…私が育てた

シャンセルの話を書こうと思っていたのに、リビラが食べていた草の話になったという不思議。

 どうしてセレスさんの誕生日会に呼んでくれなかったんですかー、というリマルキス怒りのお手紙はどうでもよかったが、リクシー兄さんの『早く遊びに来てほしいわん』とだけ書かれた手紙はかなりの危うさを感じさせたのでちょっと様子を見に行くことにした。

 近々、リビラがダウンするまで放置してしまったことをアズ父さんに謝りに行こうと思っていたので丁度いいと言えば丁度いい。

 同行するのはリビラ、そしてシャンセル。

 アズ父さんに回復したリビラを見てもらわないといけないし、ベルガミアに行くのに王女を置き去りというわけにはいかないからだ。

 他にも同行したそうな者たちはいたが、娘さんのことを謝りに行くのに他の婚約者をぞろぞろ連れて行くのはまずかろうという理由に納得してくれた。

 が、聞き分けのないのも一人いる。

 ミーネである。


「駄目かしら?」

「ダメです」

「駄目かしら?」

「ダメです」

「むぅ」


 膨れた。

 でもダメなのです。

 そしてそちらへ伺いますよ、と返答した予定日の朝、どういうわけかリクシーはユーニスと共に屋敷にやって来た。

 なんで出鼻を挫いてくるんですかね……。


「待ちきれなかったのだ」

「兄さま、おはようございます!」


 いやまあ来るのは全然かまわないのだが、いきなり予定外のことをされると反応に困るのである。


「すまぬ。早く国を脱出したくてな。あともう俺たちは兄弟だ、そう丁寧に喋る必要は無い。英雄の弟をもって鼻が高いよ」

「僕もです」


 二人して尻尾をばさばさ。

 喜んでいるという表現で尻尾を振って見せているのか、それとも振れてしまっているのかはもはや謎。屋敷を徘徊していた子ヤギが興味を惹かれて誘われるように近づき、顔を尻尾で往復ビンタされることになって「めへへぇ~」哀れな声を上げながら逃げていった。


「あー、じゃあこれからは普通に喋るとして……、それで、いきなり予定が狂ってきちゃったけど、どうするの?」

「まずはのんびり話でもしようではないか。庭園がいい。広々とした庭園でゆっくりしたい。ゆっくりしたいのだ」

「は、はあ」


 その程度の要望を叶えるくらいなんでもないので、ひとまず庭園に移動してテーブルとイスを用意する。

 このぐだぐだっと始まったお茶会にはシャンセルとリビラが同席。

 離れたところではクロアとユーニス、セレス、シア、ミーネ、ティアウル、ジェミナが活動的な精霊獣たちと駆け回っている。

 その様子をリクシーは穏やかな表情で眺めていたが、ふと思い立ったように言う。


「考えてみれば、ここにはすべての獣人の祖先がいるのだな……」

「確かにそうだニャ」

「みんな無邪気すぎていまいちぴんとこねーけどな」


 リクシーの言葉に何とも言えない表情になるリビラとシャンセル。

 事実ではあるものの、実感となると話は別らしい。


「なあヴィロック、俺は思うのだがな」

「……? あ、はい」


 名前を呼ばれるも反応が遅れる。

 まだ慣れねえ。


「君は……、ほら、あれだ。獣人の祖先たちの主人なわけだ。ということは、君がベルガミアの国王をやっても別に問題ないのではないかと思うのだよ」

「いきなり王位を放り投げようとしてくんな」


 急に何言いだしてんだこの王太子。


「兄にゃ、危ねーこと言うのはやめるニャ。それ、広まったら本気でそうしようって運動が始まるからしゃれにならねーニャ」

「そうだぜ。ダンナの苦労が増えるだけじゃねえか。それにもしそんなことになったら、ベルガミアだけずるいって他の国と揉めるだろ」

「間違いなく揉めるニャ。でもって行き着く先は、ニャーさまが六カ国によって選出された皇帝になる未来ニャ。兄にゃがベルガミアの国王として苦労する未来に変わりはないニャ。違いは余計なことを言いだされたせいで皇帝にさせられたニャーさまの恨みくらいニャ」

「恨みか……、それはいかんな。それはいかん」


 おお、リクシー兄さんが諦めた。

 あとで二人をいっぱい褒めておこう。


「まあ現実逃避はそれくらいにするニャ。そんなに大変なのニャ?」

「大変と言うか……、いや、大変だな。瘴気領域の開放など前例がないため考えることが多すぎる。連日の会議、会議、会議。国内だけでなく、それぞれの状況を報告し合う六カ国での会議。各国が自国だけうまくいっていない、なんて状況を避けるべく頑張っているせいでより一層の努力を求められるわけでな……」


 はあ、とリクシーがため息をつく。

 本当に大変なようだ。

 遊びに来て欲しい、というのは建前、実際はお仕事を投げだしたかっただけのリクシー王子、今は少しの間でも王宮から離れていたいらしい。

 まあそれは別にいいのだ。

 俺も王宮へお呼ばれするのは正直なところ気がのらない。いくらお忍び訪問であったとしても、王宮に行けばそれなりの歓迎はされてしまうわけで、窮屈な思いをするのは避けようがないからだ。

 しかし、アズ父さんに謝りに行くと決めていたので、もうしばらくリクシーを休ませてから向かうことにしよう。

 そう思っていたのだが――


「アズアーフ殿は領地へ戻っているぞ?」

「あれ、そうなの?」

「うむ。これまではスナークの襲来に備え、精霊門ですぐに境界線へ向かえるよう留まっていたが、もうその必要は無いだろう?」


 言われてみれば確かにその通りである。

 かつての暗黒ヤンチャ団は、ファンシーヤンチャ団になって全部こっちに引っ越してきている。


「リビラの実家……、あたしも何回か行ったことあるな」

「ニャーも行ったことあるニャ」

「おい」

「いやホントにそんな感じニャ。実家で暮らしていたのはまだちっちゃい頃ニャ。感覚としては王都で生活していた期間の方が長いニャ」

「あー、そっか、そうだな。お前ずっと王都暮らしだったもんな」


 となると、アズ父さんに会いに行くにはデヴァスにお願いして飛んでもらわないといけないか。


    △◆▽


 昼食をとったあと、竜化したデヴァスの背に乗り、俺、リビラ、シャンセル、リクシーはレーデント伯爵家へと向かった。

 ユーニスは同行を迷ったが、結局はそのままクロアと遊ぶことを選択したのでお留守番となる。

 リビラの大雑把な案内のもと、しばし空の旅を楽しみ、俺たちはレーデント伯爵領の領都へ、そしてリビラの生家へと到着する。

 まあいきなり竜が飛来したもんだから大騒ぎだ。

 いったい何事かと、ばたばた屋敷の使用人たちが集まって来て、そこでリビラの帰還、さらにリクシー王子やシャンセル王女、そして俺の訪問を知ってさらに騒がしくなる。


「ぎニャ~!」


 リビラはお嬢様の帰還を喜ぶ使用人たちに揉みくちゃにされ、俺たちはややほったらかし感もあったが、それを咎めるつもりはリクシーにもシャンセルにも無い。もちろん俺やデヴァスにも無く、ただただ悲鳴を上げるリビラを微笑ましく見守るだけである。

 それから俺たちはぐったりしたリビラと共に、アズ父さんがいる庭へと案内されたのだが……、そこには立派なお屋敷にはちょっとそぐわない畑が広がっていた。

 栽培されているのは前にリビラが食べていた薬草で、庭師(?)らしき男性が――って、あれアズ父さんだ!


「ととニャ!?」


 伯爵自ら農作業している様子にリビラが驚きの声を上げた。

 お馴染みの光景――というわけではないようだ。


「おお、リビラか」

「リビラか――じゃねえニャ! どうなってんニャ! 庭が畑になってんニャ! それもこの草ばっかニャ!」

「ははは、どうだ、立派なものだろう。たくさんある、お土産にもっていくといい」

「ニャ、ニャ……?」


 ほがらかな様子でこちらへやって来るアズ父さんにリビラが戸惑う。

 俺からしても雰囲気がずいぶんと穏やかになっているように感じられるのだから、リビラとなればよりいっそう違和感を覚えるのではないだろうか。


「よく戻ったな。何か用があるようだが……、急ぎではないようだし、少しはゆっくりしていけるか?」

「そ、それは……、まあ少しはそうニャ……」


 これまでとは雰囲気の違う父親にリビラは戸惑い、そそそっと俺の背後に隠れた。

 いや隠れんでも……。


「……ニャーさま、妙ニャ。ととニャが何だか隠居した爺さまみたいになっちまってるニャ……」

「……爺さまって……」


 いきなりジジイ呼ばわりし始めたリビラの辛辣さは少しどうかと思ったが、言われてみれば確かにそうも見えてくる。

 むしろ鋭い指摘なのだろうか?


「こんにちは。え、えっと……、実はですね、今日はお詫びに来たんです」

「お詫び?」

「はい。僕と皆の婚約が発表されたあと、しばらく屋敷が混乱しまして、その間、リビラは一人で屋敷内のことを切り盛りしてくれていたんです。それが激務で倒れてしまいまして……」


 娘をよろしく頼むと言われた義父に、娘が倒れるまで放置してしまったことを報告するのはつらいものがある。領地に戻り、せっせと滋養強壮効果のある薬草を育てている姿――たぶんリビラのため――を見てしまえばなおさらだ。

 黙っておけばバレないかもしれないが、もうこんなことが無いようにという戒めのためにも避けるわけにはいかない。

 なのでリビラさん、俺を盾にしつつシャッシャッと猫パンチを繰り出して威嚇する必要はないのです。


「ふむ……」


 話を聞き終えたあと、アズ父さんは一つ唸りすっと手を挙げる。

 拳骨、チョップ、あるいは目つぶし――瞬間的にあれこれお仕置きを想像したが、アズ父さんの手は俺を盾にしているリビラの頭にぼすっと乗せられる。そして撫で撫で。


「頑張りすぎたか。あまり無理をせんようにな」

「ニャ……、ニャ?」

「この子は大切なことのためにはつい無茶をする。気にかけておいてやってくれ。次は決闘になるぞ?」


 苦笑するアズ父さん。

 ひとまずは許された……、と言うか大目に見られた。

 しかしほっとしたのもつかの間――


「ととニャ、いったいどうしたニャ! すっかり腑抜けてるニャ!」


 父親像が崩壊の危機らしく、リビラが慌てた様子で言う。

 だが当のアズ父さんは穏やかなものだ。


「腑抜け? ふむ、腑抜けか……。そうかもしれんな。黒騎士としての役割はもう終わり、娘も嫁ぐことが決まった。肩の荷が下りたのだよ」


 羨ましい……、とリクシーが呟いていたがそれは無視する。


「まあ、戦うことしか能のない者など、暇を持てあまし腑抜けている方がよいしな」

「いやいやいや、それでもちょっと腑抜けすぎニャ。ととニャはただ軍人ってだけじゃないニャ。レーデント伯爵ニャ。そんな調子で領地の方は大丈夫なのニャ?」

「これまで領地の運営は信頼できる者に任せていた。いまさらあれこれ口出しする必要はないだろう。むしろ私はこうしてのんびり土いじりをしている方が邪魔にならなくてよい」

「ええぇ……、じゃ、じゃあ家はどうするニャ。跡継ぎ無しじゃレーデント家が途絶えるニャ。魔王とかスナークとか、体のこととか、もうあれこれ心配が無くなったなら後妻を迎えるかするニャ。ははニャも文句言ったりしねーニャ」


 このままだと父親が急激に爺さまになってしまうと心配したか、リビラが再婚を勧めだした。


「後妻か……」


 しかし、アズ父さんはいまいち乗り気ではない様子。

 家が途絶えてもかまわないくらいの気持ちなのだろうか。


「まあ跡継ぎはそのうち何とかなるだろう」

「何とかって、このままじゃなんともならねーニャ。いったい、何がどうして何とかなるなんて――」


 と、言いかけたリビラは、ハッと薬草畑に目を向け、それからアズ父さんに視線を戻した。


「なぁぁに考えてんニャ――――ッ!」


 そしていきなりの大声。

 俺の背から飛び出して、アズ父さんをぽこすか叩き始める。

 でもアズ父さんは嬉しそうだ。


「なあダンナ、なんでリビラは怒ってんだ?」

「わからん……」


 この展開に俺とシャンセルは困惑していたが、そこで「あ」とリクシーが何かに気づく。


「兄貴はわかったのか?」

「ああ、どうやら孫に家を継がせようと考えていたらしいな」

「孫……、って、俺とリビラの子供にってことか!?」

「そのようだ」


 となると、だ。

 せっかくの庭を畑にして、せっせと滋養強壮効果のある薬草を育てていたのは……。

 遠回しすぎるわ!

 そして反応に困るわ!


「生まれてもいない子供の将来を勝手に決めるんじゃないニャー!」


 ひとしきりぽかすかした後、リビラは俺の腕にしがみつく。


「ニャーたちの子供は、のびのびごろごろ育てるニャ! 将来は好きにさせるニャ! ニャーさまもそう思うニャ!?」

「え、あ、う、うん」


 荒ぶるリビラの発言もまた、ちょっと反応に困る。

 と、そこで逆の腕がぐいっと引かれた。

 何故かシャンセルがしがみついている。


「シャンセル?」

「な、何となく……」

「そ、そうか」


 しがみつかれるのはまったく構わない。

 が、これが荒ぶるリビラの癇に障ったようだ。


「シャン! 今はニャーとニャーさまの話ニャ! ニャーさまから離れるニャ!」

「ええ!? そ、そんなふうに言うことねーだろ!? ダンナはあたしのダンナでもあるんだぜ!」

「そうでも今は控えるニャ!」


 ぐぐぐっ、とリビラが俺を引き寄せようと引っぱる。

 すると負けじとシャンセルも俺を引っぱる。

 両腕にそれぞれお胸の感触を感じて俺は幸せになった。

 が、いけない、これは大岡裁きだ!

 真っ二つになっちゃう!


「待て待て、二人とも。落ち着け」


 ここで見かねたお奉行さま――リクシー兄さんが俺の前に来て助けてくれようとする。

 が――


「兄にゃは関係ねーニャ!」

「兄貴はすっこんでてくれ!」


 どごどごっ、と妹たちから突き飛ばし――掌底打ちを胸に喰らわされるはめに。


「ぐふぅ……」


 リクシー兄さんダウン!


「に、兄さん……!」

「すまない、弟よ……、俺の力が及ばないばかりに……」


 ぐったりして起きあがらないリクシー兄さん。

 これ以上望むのは酷だ。

 かといってデヴァスは手出ししにくいだろうし、事の発端であるアズ父さんは眼を細めて微笑むばかりで役に立ちそうにない。

 つまり助けはない。

 俺が自力で脱出する?

 無理だ。

 お胸の感触がある限り、俺の弱体化は収まらず碌な抵抗ができないからである。


    △◆▽


 リビラとシャンセルによる意地の張り合いは、俺の上着の両袖がパージされたことで一旦の決着を見ると期待されたが、興奮したニャン娘とワン娘はその程度で収まりはつかず、今度は俺すらもほったらかしの取っ組み合いへと発展した。


「そもそもおめーは来る必要なかったニャ!」

「また親父さんと変に仲がこじれたら困るからって心配して来たんだよ!」

「べつにこじれてなんかねえニャ!」

「家出までしておいてよく言うなぁおい!」


 俺はもげた両袖をそれぞれ左右の手に持ち、二人の戦いを大人しく見守るしかなかった。

 もし下手に手出しをして、今度はズボンで同じことをやられたらパンツ姿は不可避、たまったものではない。両袖がもげた上着、下はパンツ一丁、それはあまりに時代を先取りしたファッションだ。


「涼しげな装いだな、弟よ」

「ええ、おかげさまで」


 帰ったらコルフィーは怒るだろうか、それとも喜ぶだろうか。


「誰か連れてきた方がよかったのではないか?」

「その場合、俺は子犬たちに与えられたぬいぐるみのように奪い合われてズタボロになっていたと思うから……」

「幸せなのだろうが……、大変だな」

「大変だけど、幸せなんだよ」

「なるほど」


 ふっ、と二人で微笑み合う。

 なんとなく気取ってみたが、それでリビラとシャンセルの喧嘩が収まるわけではない。

 現実逃避しているだけである。

 ひとまず二人が疲れるまで大人しく静観することにしたところ――


「お館様ぁ――――ッ!」


 聞こえてきたのは女性の声。

 見やると、獣人の女性が足早にこちらへと向かってくる。

 ズボンを穿いてのきっちりとした服装で、ぱっと見では仕事ができそうな印象を受けた。

 しかし――


「ぬあ!?」


 女性はガッと足をもつれさせ、そのままビターンと倒れ込んだ。

 ゆらりと揺れる尻尾はキツネのそれ。

 咄嗟に手を付こうとすらしないその転倒ぶりは見事ですらあった。

 俺、リクシー、デヴァスはぽかんとするばかりであったが、アズ父さんは彼女の所へ向かい、起きあがるのに手を貸してやる。


「あ、ありがとうございます!」

「うむ、君は急ぐといつも転ぶ。もうこう言うのは何度目かわからんが、ともかく気をつけなさい」

「はい!」


 キャリアウーマンっぽくはあるが、どうやら残念なところがある女性のようだ。


「紹介しよう。彼女はレイザ。私の代わりに領地の運営をしてくれている優秀な女性だ」

「ご紹介に与りました、わたくし、レイザ・クランネルと申します」


 町から戻ったレイザは俺たちが訪問したことを使用人たちから聞いて慌ててこちらにやって来たらしい。

 一通り挨拶をしたあと、レイザはアズ父さんに尋ねる。


「それでお館様、お嬢様と王女殿下はどうして戦っているのでしょうか?」


 リビラとシャンセルもレイザは初対面となるらしく、挨拶したそうであったが今は無理だ。

 ひとまずこの争いの理由を説明されると、何故かレイザは感銘を受けた様子で言った。


「なるほど、レイヴァース卿の寵愛を巡っての争いでしたか。レイヴァース卿は愛されているのですね!」

「え、えっと……、ありがたいことに、はい」

「以前、ザナーサリーで発行されている新聞の記事、縁結びの地の話、読ませていただきました。公園でお嬢様と王女殿下に告白なさったんでしょう?」

「んくっ……」


 そ、そこに触れてくるか。

 不意打ちすぎて思わず言葉に詰まる。


「いいですねぇ。私、一度でよいのでその公園を訪れてみたいと思っているんですよ。お相手は……、まあ、居ないのですが……」


 しょぼくれるレイザ。

 その姿を見て、俺はふと思いついたことがあったのだが……、しかし、それは今ここで告げるべきではない。少なくとも、リビラが本気でアズ父さんに後妻を迎えてもらうつもりかどうか確認してからだ。


「……なあ弟よ、俺はふと思いついたことがあるのだ……」

「……あ、兄さんも?」


 どうやらリクシーも俺と同じことを考えたようだ。


「……でもまあ、もう少し様子を見てからだよね……」

「……そうだな。こうなると、とっとと喧嘩をやめてほしいところなのだが……」


 俺とリクシーがヒソヒソ囁き合うなか、リビラとシャンセルは飽きもせずフシャーッ、ガウガウ、と争い続けていた。


「セレスを連れて来たらよかったのかなぁ……」


※誤字脱字の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2020/04/25

※誤字の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2021/05/19

※さらに誤字の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2021/08/12


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― 新着の感想 ―
[一言] 獣娘ズ可愛いなぁ。 今また最初から読んでますがほんとみんなキャラが立ってて飽きないです。アフターストーリーもファンディスク的な楽しさでもっと続いて欲しいです。体調に気をつけて、でもたくさん続…
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