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おれの名を呼ぶな!  作者: 古柴
11章 『想うはあなたひとり』編
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第686話 14歳(春)…世界会議

 俺の指示で星芒六各国のうちの五カ国、それからザナーサリーとエルトリアに向かった皆がそれぞれ王様や代表を連れて戻ったところで本格的な王様集めが開始される。

 まあ実際に頑張るのはリマルキスを始めとした六カ国の王様や代表だ。その間、俺は戻った皆と情報共有を行い、いずれ揃うであろう王様たちのための説明会、この準備を手伝ってもらう。

 まだパイシェだけは戻らないが、おそらく各地に散っている上級闘士を集めるのに時間がかかっているからだろう。

 それから何時間か経過し、夕方近くになったところで、リマルキスから王様・代表を集め終わったと報告された。


「よし、じゃあこっちに来てもらってくれ」


 この指示により、かき集められた王様たちは迷宮庭園へと連れて来られ、うちのメイドたちによって野外講堂に案内されていく。

 ほとんどの者が、ここはどこなのか、と戸惑っている様子だが、これについての説明は後々する予定だ。

 こうして王様たちが揃ったところで、俺とシャロは舞台に姿を現した。

 ここに雁首揃えたオッサンや爺さまが大陸を支配していると思うとなかなか壮観な眺めに思える。

 六カ国の国王や代表、それからザナーサリー、エルトリアなど幾つかの国が最前列を占めているのは……、なんだろう、序列とかあるのかな?

 まあいいや。

 ともかく、集まった人々のほとんどが詳しい事情をまだ知らないので、まずはこの全員に説明をすることから始める。


「どうもこんにちは。自己紹介については省かせてもらうとして、これから僕が現在の状況に至るまでの経緯を説明します。長い話になりますが、ひとまず最後まで聞いてください」


 それから俺は世界樹計画が再開されることまでを説明し、今回こうして集まってもらったのは、その計画を阻止するための協力をお願いしたかったためと伝える。

 と、そこで――


「何ということだ!」


 声を荒らげ立ち上がるどこかの王様。

 ひとまず最後まで聞いてって言ったのに……。


「このような事態を招くとは、やはりその王女は殺しておくのが正解だったのではないか!」


 あ、リマルキスが渋い顔してる。


「それを生かしたとなれば、その責任、どう取るつもりなのだ!」

「え? 普通に悪神ぶっ殺して王女を取り返すつもりですが、それじゃあダメですか?」


 素直に答えたところ、その王様は目を丸くする。


「そ、そんなことが可能なのか!?」

「可能ですよ。そのために、ちょっとご協力頂きたいんですよね」


 これで大人しく座ってくれたらよかったが、その王様はまだ喋りたいらしくそうもいかなかった。


「貴様のことは色々と聞いてはいる。だが、神だぞ? 可能と言われてそれをそのまま信じられるものか。それにだ。どのような協力を求めようとしているのかは知らんが、そちらの不手際でこのような事態を招いたのだ。これについては――」

「あ、賠償だのなんだのという話でしたら、知ったことではないのでご遠慮願いますね」

「はあ!?」


 すげない返事とは自分でも思ったが、変に取り繕っても仕方ないのでここは正直に告げた。


「例えばなんですけどね、貴方の政策によって不利益を被ったどこかの一般人が、責任を認めて賠償しろって言ってきても知らんぷりするでしょう? ってか、悪神はずっとこれを企んでいたわけで、こんな事態を防ぎたかったなら、もっと前々に貴方が何かすればよかったじゃないですか」

「そ、そんな事を言われてもだな――」

「ですよね。誰もがそうだったんです。千年以上も時間があって、誰も何もしなかったことがここにきてたまたま問題になったんです。自分は関係無い? いえいえ、関係無い人なんて一人もいないんです。つまり貴方にも責任はあるわけです。何もしなかったという責任が」

「そ、そんなものは詭弁だろう!」

「まあ詭弁なんですけどね」


 実際、ただの詭弁である。


「ふん、やはりそうか。煙に巻いて責任の所在をあやふやに――」


 と、王様が続けようとしたところ――


「黙れ小僧」


 竜皇国のドラ父さんがドスを利かせた声で告げ、王様は思わず口を噤む。

 その台詞、シアなら喜ん――、いや、それどころではないな。


「責任? 賠償? 世界の滅びを前に貴様いったい何を言っているのだ? 貴様が怒鳴りつけている者が、悪神に対抗できる唯一の希望なのだぞ? 千年以上にも及ぶ年月の果てに、ようやく現れた世界を救える存在なのだ」


 怒鳴ったりすることはなかったが、言葉に強い力を込めてドラ父さんは語り、これに王様はすっかり萎縮してしまった。

 国力うんぬん以前に、ドラ父さんは竜だからな。


「そもそも、ここはそんなことを話し合う場ではない。もはやそんな段階ではなく、そして準備のための時間は明日からの三日しかない。貴重な時間をこれ以上浪費させようとするなら、まず俺が余計な心配などしなくてもいいようにしてやろうか?」


 何かの冗談のようにドラ父さんが頼もしい。

 いや、本来の姿はこっちで、前に見たのは特別ダメなところだったのだろう。きっとそうだ。

 いつまでも喋くりそうな王様を止めてくれたことには、素直に感謝である。


「ドラスヴォート陛下、ありがとうございます。ですが、大丈夫ですよ。こういった意見が出て来ることはわかっていましたからね」


 国の代表なのだ、被害を被ることになればそれについて文句を言ってくるのは当然で、さらに協力するとなれば何らかの対価を要求するのはごく真っ当なことなのである。

 特に星芒六カ国に頭を抑えつけられ続けた国々だ、この機に乗じて立場の向上を企んだりもするだろう。

 時間があればつきあってやってもいいが、今は余計なことをしている余裕が無い。

 とは言え、このままドラ父さんを始めとする星芒六カ国が威圧することで他の国々を従わせてしまうのもよろしくない。


「えっと、ドラスヴォート陛下も仰いましたが、この状況をどうにかできるのは僕だけなんですよね。で、これに失敗するともう世界は滅びます。前回の失敗を反省しての計画再開なので、邪神の自滅も期待はできません。つまり生きとし生けるものが邪神に吸収され、人造の神となってお終い、というわけです。ここまではいいですよね?」


 ひとまず確認を取る。

 が、反応が薄い……。

 だからって「理解していたら拍手してください」と促すのもちょっとあれだからな、ともかく話を進めよう。


「要は戦うしかないというわけです。戦って、この計画を阻止しないことにはどうにもならないんですよ。とは言え、いきなりそんなことを言われても戸惑うでしょうし、責任を求めたくなるのもよくわかります。しかし……、実はですね、今回の計画なんですが、そこまで協力してくれる国が無くても平気なんですよ」


 これを聞き、文句を付けてきた王様だけでなく他のお偉方もきょとんとする。


「星芒六カ国、それから志願してくれるいくつかの国、あとは有志を募ったりなんかすれば、たぶん何とかなるんです。別にこうやって集まってもらわずとも、何もかも片付いてから事後報告で世界は救われましたよーって連絡いれるだけでもよかったんです。なら呼ぶんじゃねえって思うでしょう? いやこれ、僕なりのお詫びだったんです」


 俺が何を言いたいのかまだよくわからず、ほとんどのお偉方が困惑しているようだった。

 どっしり構えているのは六カ国やザナーサリー、エルトリアといった俺に関わったことのある国王や代表だ。俺の考えがわかっているのか……、それとも、何とかするだろうと静観しているだけなのか。


「僕はこの計画を阻止します。必ず。実は僕がこうやってはっきり約束するのって珍しいことなんですが、今回ばかりは確約します。まあこれを信じても信じなくてもいいんですが、ほっとけばどうせ世界は滅んでしまうわけで、なら救われた場合のことを考えておいた方がいいでしょう? ――で、本題はここから。世界が救われたあと、この事実は広まります。メルナルディアで悪神が大々的に計画のことを話してしまいましたからね、ちゃんと救われたことは広めないわけにはいきません。となれば人々は喜ぶわけです。やったーって。きっとレイヴァース卿すごいすごいって言ってくれるでしょうね。そして僕に協力してくれた国々は後々までこのことを語り継ぐことでしょう。なにしろ前文明を終わらせた災禍、そして千年以上もの間、我々を苦しめ続けていた呪いがようやく解けたわけですから」


 そこまで喋り、少し間を置いてから俺は続ける。


「で、その一方、協力しなかった国々は歴史でどのように語られると思います?」

『……ッ!?』


 ここでどよめきが起きた。

 賠償とか報酬とか、そんなものはこの危機を乗り越えなければ何の意味もないものだ。何とかなった後を想像するなら、ここまで考えておいてもらいたかったが、突然のことだからな、それは望みすぎなのだろう。


「作戦に参加しなかった――、どうして参加しなかったのか? 参加させてもらえなかったのか? 必要のない国だったのか? その程度の国だったのか? 参加した国と、しなかった国、ここにはとてつもなく深い溝が生まれ、そしてそれは世界の終わりまで埋まることはないでしょう。国民に対しどう言いつくろおうと、世界の命運を賭けた戦いに参加する機会を蹴った事実はどうしようもありません。いくら隠そうとしても隠しきれず、例え国が滅ぼうと、かつてこの地にあった国は臆病風に吹かれた愚王が治めていたと語られ、長く長く汚名は語り継がれていくことになる……、かもしれませんね」


 良い顔をしていなかったお偉方だが、今度は顔色が悪くなった。

 これまで『条件次第では協力してやる』という立場だったのが、気づけば『頼むから協力させてくれ』と嘆願しなければいけない立場になっていたのだから当然か。

 手の施しようのない権威の失墜、これは国を治める者にとっては大問題なのである。

 でも何で六カ国やザナーサリー、エルトリアの王様まで顔を引きつらせてるんだろうか?

 いや、みなさんは協力してくれるんでしょ?


「皆さんをお招きしたのは、つまりはこういう配慮だったわけです。なにしろ、ここに呼ばれなかったことすらも問題になりますからね。これについてもちゃんと説明するつもりだったんですが……、まあこの際かまいませんか。それで、どうでしょうか? そんな配慮など必要ないと言うのであれば、ここでお帰りいただいてけっこうですよ?」


 にっこり微笑んで促してみる。

 少し待ってみたが……、席を立つ者はいなかった。


「では、皆さん協力頂けるということですね、誠にありがとうございます。やはり人員は多い方が安全性が増しますから。それでは時間も限られていますので、さっさと説明を終わらせるとしましょうか」


※誤字脱字、文章の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2019/09/28


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