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おれの名を呼ぶな!  作者: 古柴
間章3 『にぎやかな冬』編
630/820

第620話 14歳(冬)…剣と犬

 聖都の新年祭、そして冒険の書の大会と、年の暮れから大きなイベントを立て続けに乗り越えてきたおれの元に、ヴァイロ共和国の大工房からほぼ完成品となる魔導機構剣が届けられた。

 その数、五本。

 この内から最も出来の良い一本を『真打』と決め、神鉄の針を埋め込むことで真打・魔導機構剣は完成する。

 魔剣が届けられた翌日、ひとまず魔剣製造の関係者――おれ、リィ、髭コンビ(クォルズ&レザンド)、シャロは、どれを真打とすべきか見定めるため、審査と試用を行うべく人目に付かず無茶苦茶しても平気な迷宮庭園に訪れた。

 他にもこれを見学する者が……、まあほぼ全員だ。

 みんなに見守られながら、まずは区別しやすくするため魔剣に一番から五番と名札を取りつける。

 それから機構がちゃんと可動するかをおれが、回廊魔方陣が正常に稼働するかはリィが、そして剣身に映り込む景色に歪みは無いか、刃がぶれてはいないか、そういった剣としての出来映えを髭コンビが念入りにチェックした。

 結果、五本とも問題無く実に良く仕上がっていることがわかった。

 そしてここからは試用を行っての動作・耐久度チェックである。

 奉納用の魔剣とは言え、ただ凄いだけでは武具の神も納得しない。

 剣として実用的でなければならないのだ。


「というわけでイール、これからおまえを滅多切りにするから、何か気づいたこととかあれば報告してほしい」

「はい、報告です! 貴方は私に対して残忍すぎます!」

「え?」

「え、って何です!?」

「いやだっておまえ……、べつにこれくらい全然平気だろ?」

「たぶん平気ですけど滅多切りにされて気分が良いわけはないでしょう!?」

「でもおまえみんなにぺちぺちされて喜んでたし……」

「貴方もしかしてアホですか!?」


 結局、激しい抗議によってイールを的にすることは実現できなかった。

 こいつが身に受けてくれれば、どのくらい威力があるとか報告してもらえるから名案だと思ったのだが……、まあ断られてしまったなら仕方ない。

 イールが用意した魔物で試し切りをすることにしよう。

 用意された魔物は、基本のゴブさんから立派なオーガさんまで。

 しかしこの試し切りは早々に中断されることになった。

 魔剣に施された回廊魔法陣の威力が予想よりだいぶ高く、用意した魔物が消し飛んでしまうので試し切りの意味が無かったからだ。


「どうします? もっと頑丈な魔物を用意しますか?」

「いや、魔物はやめにして……、そうだな、こう、土を盛って山にしてくれるか? そこに攻撃を叩き込むことにするから」

「わかりました。では……、よいっと」


 にょきっと草原に堤防のような土山が生える。


「わん! わんわん!」


 そしたら喜び勇んだバスカーが飛びだし、土山を駆け上がった。

 いやそれ遊び場じゃないから。


「バスカー、ほれ、こっち戻れ。そこに居ると危ないから」

「わおーん!」

「いや、わおーんじゃなくてな」


 あの犬、土山の天辺で尻尾ぺるぺるするばかりでこっちに来やがらねえ……。


「ユーニス、悪いけどあの犬とっ捕まえてきてくれるか?」

「はい!」

「あ、じゃあ僕も!」


 ユーニスが飛びだし、すぐにクロアも続く。

 迫る二人に対し、バスカーは捕まってなるものかと土山を下って草原へと駆けだし、ユーニスとクロアはさらにそれを追った。こうして始まった一匹と二人の追いかけっこは、最終的にクロアとユーニスがバスカーに追っかけられて戻って来たことで終わりを迎えた。


「二人ともありがとうな。バスカー、満足したか?」

「わん!」


 よし、何も考えてなさそうな良い返事だ。

 アホ犬のせいでちょっと余計な時間を食ったが検証を再開。

 土山めがけ、砲撃演習みたく魔剣攻撃をばかすか叩き込む。

 これが思いのほか楽しく、途中からはミーネ、クロアとユーニス、そしてメイドたちも参加しての性能・耐久テストとなった。

 おかげで用意していた回廊魔方陣発動用魔石弾のほとんどを使い切ることに。

 この段階になると、もうみんな魔導機構剣――レバーアクション・リロード機構の扱いには慣れ、最初はおれやミーネだけだった魔剣をくるっと回して魔石弾をリロードするスピンコック・リロードアクションを行うようになっていた。

 そんな耐久テストの後、わずかに動作不良を起こしたのが二本。

 残った三本の内をさらにチェック、最高品質の一本を選び出す。


「よーし、レイヴァース卿。いよいよじゃ」


 レザンドから手渡された魔剣に、おれの手で神鉄の針を埋め込む。

 ぷすっ、と。

 ……。

 特に変化は起きないな。

 ミーネの剣がそうだったように、針を刺してすぐ影響が出るってものでもないようだ。

 まあこれはこの一本が特別とする証みたいなもの、これ以上どうこうしようと考えていたわけではないので気にしない。


「よし、これで仕上がったな! どれ坊主、いっちょ試してみい!」


 そう言ってクォルズが魔石弾を放ってきた。


「そうですね」


 キャッチした魔石弾を込め、さっそく真打・魔導機構剣の試し打ち。

 皆が見守るなか手早くリロードを行う。

 魔法攻撃傾向は――、まあ『衝撃』でいいかな。


「よーし、じゃあ行くぞー! みんな下がって下がってー、これは完成品だ、きっと凄い威力だからなー!」


 もちろんそんな訳は無く、これはただの冗談である。

 が。

 チュドォォ――――ンッ!!


「え?」


 おれが放った一撃は、これまで皆の集中砲火を耐えてきた土山を綺麗さっぱり吹き飛ばすことになった。


    △◆▽


 神鉄の針を埋め込んだせいだろうか、予想以上だった魔剣の性能がさらに想定以上のものに化けた。

 ひとまずシャロ先生に検証をお願いする。


「ふむ、ロシャよ、この剣に何か感じるか?」

「いや特に」

「そうか、では何らかの力を生みだしているわけではないと……」


 シャロはまず頭に乗せているロシャに尋ね、それから真打ちを手にとって調べ始めたが、すぐに「ああ!」と納得の声を上げた。


「なんじゃ、単純な話じゃったか。婿殿、この魔剣、使用者の魔力を持っていくようになっておるぞ。さっきの威力は魔石弾だけでなく、婿殿の力を利用してのものだったようじゃ」

「つまり……、その魔剣って魔石弾が無くても使用者の魔力を使って魔法攻撃が出来るようになったってこと?」

「そのようじゃな」

「また唐突に物騒な変化を……」


 使用者のMPを吸収して攻撃とか本当に魔剣っぽくなっちまった。

 困惑していたところ、いつの間にかクロアとユーニスが近くに寄ってきていて、そわそわしながらおれを見つめていた。


「兄さん兄さん、僕それ使ってみたい」

「兄さま、ぼくもお願いします」

「い、いや、これ危ないかもしれないからな?」

「じゃあまず私が試すわ!」


 何が『じゃあ』なのかよくわからないが、ミーネが実験台を志願してイールにさきほどよりも大きな土山を用意してもらう。


「いっくわよー!」


 でりゃー、とミーネが土山に魔剣攻撃を叩き込む。

 どっかーん、と。

 おや?

 ミーネの攻撃は先ほどのおれの攻撃よりも威力控え目だった。


「あれー、思いっきりいったのにー……」

「調子はどうだ?」

「うん? ちょっと疲れた感じ?」

「そんなもんか……」


 おれは特に何も感じなかったしな。

 これなら、クロアとユーニスも大丈夫かな?

 そう思って使わせてみたところ、魔剣攻撃を繰り出したあと二人はへにょっとしてしまった。

 もう見るからにお疲れという感じである。


「だ、大丈夫か二人とも……」

「うん、だいじょうぶー、でもなんかだるいー」

「ぼくはたくさん運動したあとみたいですー、ちょっと目が回っていますー」


 これは体の成長具合が関係しているかと思ったが、クロアとユーニスにも若干の違いがあるのか。

 どういうことだろうと考えていたところ、シャロが言う。


「秘めた力の関係じゃろうな」

「あ、そうか」


 おれは力だけなら無闇矢鱈にある、ミーネはたっぷりある。

 でもクロアとユーニスはそうでもない、と。


「へー、人によって威力が違うのね! ――あ、そうだ!」


 ミーネは真打を手に、様子を見ていたいシアの元へ。


「シアも試してみて!」

「わたしですかー? じゃあ――、じゃない! ちょっとミーネさん何ふっつーに渡そうとしてんですか! わたし、鎌以外を使おうとすると大惨事なんですから! ってか、こんな魔剣使おうとしたら大惨事ってレベルじゃすみません!」

「むぅ……、残念……」

「あの、ミーネさんや、それ本当に大惨事になるからな? やめような?」


 アレサが居るから平気とかそういうレベルではない。

 ミーネに持たせておくのは危ないので、さっさと真打を回収する。

 そして――悩む。


「これどうしたものかな……、このままだと危険じゃないか?」

「神に捧げるわけじゃから、よいのではないか?」

「もしいらないとか言われたらさ……」

「あー……、そうなると……、仕舞い込んで封印するか、もしくは安全装置を設けるか……」


 シャロは一考すると、亜空間から立派な杖を引っ張り出した。

 シャロの背丈ほどもある杖で、見た目は機械式。

 そこは魔導機構剣と似ている。


「これはわしの魔導杖なのじゃが……、このままではこの通り、ただのごつい杖でしかない。しかしこれに――、ほれ、ロシャよ」


 このシャロの誘いに――


「ほいほいほ――、あ、いや、今の無し!」


 ロシャは条件反射で何かをしかけたが、すぐ我に返ってシャロの持つ杖へと飛び乗り、そして溶け込んだ。

 すると杖に淡い光が灯り、稼働をし始める。


「この通り、この杖はロシャが鍵になっておる。魔剣もこのように精霊の依代にしてみてはどうじゃ? これで安定してしまえば、以後はその精霊が入っておらねばろくに使えず、入っていたとしても精霊に受け入れられなければ真価は発揮できんようになる」


 なるほど、精霊をセーフティにするのか。

 それは良いかもしれない。

 住んでいる屋敷自体が精霊が取り憑いているようなものだし、取り憑かせることに対して抵抗はない。


「じゃあ取り憑いてもらう精霊は……」


 と、人選(?)にかかろうとしたが、ロシャみたいにはっきり形を持つ精霊で暇してる奴と言ったら候補はバスカーしか居なかった。


「バスカー、やってくれるか?」

「わん!」


 心なしか、普段よりもキリリッとした顔つきで応えるバスカー。

 了解を得たところで、おれはさっそく真打・魔導機構剣に〈精霊の煮込み鍋〉でバスカーを憑依させる。

 結果――


「……」

「わん!」

「……」

「わんわんわん! わおーん!」


 手にする真打がめっちゃ吠えるようになった……。

 物凄く間抜けな状況である。

 ってか、神鉄の針を埋め込んでからというもの、魔剣が加速度的におかしなことになっているんだが……。


「か、貸して! 貸してー!」


 しばしの静寂を打ち破り、まずそうせがんできたのはミーネ。


「バスカー、バースカー」

「わおわおーん!」

「あはははは!」


 おれの手から真打を奪い取ったミーネはバスカーの名を呼び、吠えさせて楽しんでいる。

 するとそれを眺めていた他の者たちも集まっていき、同じように吠えさせて遊び始めた。

 当のバスカーは注目を浴びているのが満更でもないらしく、景気よく吠え続けている。


「端から見ているぶんにはほのぼのしておるな……」

「んだね……」


 提案者としてはこの状況を申し訳なく思うらしく、シャロはちょっと沈痛な面持ちである。


「と、ともかく、これで使用者に制限は設けられたじゃろう。最後にもう一度、使用しての確認をしてみてはどうじゃ?」

「そうだね、そうするよ」


 気を取り直し、真打・魔導機構剣(バスカー入り)の試し打ちをする。

 結果――


「うぅぅ――ッ、わおぉぉぉ――――――んッ!!」


 カッ――。

 目映い閃光が視界を覆い尽くし、続いて轟音が響き渡った。

 ようやく物が見えるようになったとき、そこに土山は無く、それどころかずっとずっと遠くまで地面がごっそりと抉れて道が出来ていた。

 水を入れたら立派な水路になりそうだ。


「威力がさらに跳ね上がってんじゃねえか!」

「わん!」

「って、おまえか!」


 バスカーが認めた相手しか使えないとしても、これだと屋敷の面子相手なら誰でもOKになっちゃうのでは?

 誰でも使える物ではなくなった代わりに、使える者なら簡単に高威力をぶっぱ出来るようになってしまった。

 これはもうあれだな、神に受け取り拒否されたらすぐ封印だな。


「バスカー、ひとまず剣から出てくれるか」

「わん!」


 一声吠え、バスカーがおれの手の中に。

 代わりに剣が消えた。


「あれ? 剣は?」

「わん!」


 すると今度は魔剣がおれの手に現れ、バスカーが消えた。


「ちょ!? おま!? 分離できねーの!?」

「わふぅ?」


 魔剣が困惑している。


「ま、まあ落ち着こう。よしバスカー、普段の姿になるんだ。しばらくそうしていろ」

「わん!」


 再び子犬となったバスカーを、おれはそっと地面に下ろす。

 バスカーは「どうだった? うまくやれた?」とでも言いたげにおれを見上げ、尻尾をぺるぺる振っている。


「よーしよーし、おまえはよくやったぞー。じゃあちょっと大人しく待っていようなー、ほーれ、よしよしよし」


 バスカーを撫で繰り回して満足させてから、すぐに制作者で顔をつきあわせての相談を始める。

 まずリィが面倒くさそうに言った。


「なー、これさー、無かったことにした方がいいんじゃねーの?」

「ですかねぇ……」

「坊主が良いならそれで良いが……、まだ出来の良かったのは二本あるしのう」

「レイヴァース卿、もう針を打ち込むのはやめた方がよいじゃろ」

「そうですね」


 武具の神には二番目に出来の良かった魔導機構剣を奉納することにしよう。

 そう考えたとき――


「きゅ~ん、きゅ~ん……」


 バスカーの悲しげな鳴き声が聞こえてきた。

 見やると、立派なドレスを着た女性がそこに居て、バスカーを抱きしめるように抱えて頬ずりしていた。

 周りにいる皆は誰もそれを止めようとせず、ただ呆然と見守っているだけである。


「うふふふ、なんてカワユイ子なのかしら。ささ、お姉さんと一緒に行きましょうねー」


 女性は子犬攫いだった。


「攫っちゃうお姉さんは一人だけで充分なんだけどなぁ……」


 ため息をつきつつそっと女性に近づいていき、縫牙でもってガスッとドレスの裾を地面に縫い止めた。

 上手く行けばこれでこの女性は身動きがとれなくなる。

 ただ同時に、おれも縫牙から手を離すわけにはいかなくなり、しゃがみっぱなしの体勢で女性を見上げることになった。


「あら? 服が固まって……、これはいったい!?」


 女性が戸惑いを見せ、その隙にバスカーが腕から脱出。

 おれの側に寄り添ってくる。

 そこで女性は足下に居たおれの存在に気づいた。


「あ! ちょっと貴方、この私になんてことを!」

「この私って、どちら様ですかね?」

「どちら様って、神ですよ! それも見目麗しい女神です! いやちょっと待って、この状況なら私が何の神かわかるでしょう!?」

「武具の神……、ですかね?」

「その通りです! 武具の女神ルティミア、それが私なのです!」


 まあ、いきなり出現してバスカー攫おうとしてたからな、薄々は気づいていたが。


「レイヴァース卿、貴方はとても良い働きをしました。この子は私がありがたく受け取り、これからは大事に――」

「あ、こいつはあげられないので」

「へ?」


 ルティミアはきょとんと。

 だがそれもわずかな間だけだ、ルティミアはほがらかに笑う。


「またまたー。あ、貴方特有の神に対してのイジワルですね?」

「いえ、本当にあげられないんで」

「ちょっとぉー!? それはあんまりなんですけどー! もうザナーサリー王には、よくやったーって頭ひっぱたいて祝福あげてきちゃったのに!」

「そうは言われてもバスカーごと持って行かれるのは……。なんとかバスカーが分離するまで待ってもらえませんかね?」

「この子がいなくなっちゃったら嬉しさが半分になっちゃいます!」


 悔しがるルティミア。

 性格的には……、遊戯の神に近いのかな?

 それからおれとルティミアはしばらくの間、ちょうだい、あげない、ちょうだい、あげない、と不毛な言い合いを続けることになった。


「え、本当にくれないんですか?」

「これだけ言ってようやくそれを確認するのか……」

「だってずっと私に贈るために頑張ってきたじゃないですか。それをここにきてあげないだなんて、そんなのイジワルすぎます!」


 それについては悪いと思うが、だからといってこんなアホ犬でもはいそうですかと渡すわけにはいかないのである。

 そんなことしたら、あとでクロアとセレスに何て言われるか……。


「ああもう、仕方ないわ。じゃあもらうまでしなくていい。保留。お友達で!」

「お友達……? こいつと?」

「そうです。バスカーちゃんとです。週に一回くらいは私のところに遊びにこさせるようにしてください!」

「そんなことできるの?」

「もうバスカーちゃんは武器としての特性を得ましたからね、それでどうにかなります! 私も協力しますから!」

「年に一回くらいになりません?」

「うわっ、正真正銘のイジワル来た! 酷い!」


 しくしくしく、とルティミアは泣いた振りをし始める。

 神はだいたい面倒だが、こいつも例に漏れないらしい。

 しかしいつまでもこんなやり取りを続けるのもまた面倒、そしておれは平気だが縫牙がちょっと限界らしく手の中でビリビリ震え始めている。

 仕方ない。


「じゃあ、週に一回くらいなら……。バスカーもそれでいいか?」

「わん!」


 バスカーも同意したようなので、おれはドレスの裾から縫牙を引き抜いた。


「バスカーちゃんをくれませんでしたが、それでも貴方は見事私の心を鷲掴みにする子を作り出してみせました。この功績は讃えなければなりません。ということで貴方に祝福を授けましょう」


 自由になったルティミアはそう言っておれを撫で撫で。


「あー、ありがとうございます」

「おや、素直ですね。切羽詰まっているからですか? これで貴方は祝福が八つ。でも、これでも危ういですよ。気をつけてくださいね」


 これでルティミアは消えるのかと思ったが……、そうでもなかった。

 しばらくバスカーを撫でて撫でて撫でくり回し、剣に姿を変えさせてうっとり眺めるなど好き勝手に振る舞った。

 やがて――


「ふう、今日のところはこれくらいにしましょう。では私は戻りますが、くれぐれも約束は守ってくださいね。バスカーちゃん、週に一回なんて言わず、来たかったらどんどん来てもらっていいですからね」

「わん!」

「よろしい! 待っていますからね! それでは!」


 そう言い残し、ルティミアはパッと姿を消す。

 後にはうんざりしたおれと、唖然としたままの皆が残された。


「あのー、ご主人さまー、つまりはどういうことなんで?」

「バスカーに友達ができたってことでいいんじゃね?」


※誤字の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2021/02/28


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― 新着の感想 ―
[気になる点] つまりは魔剣と魔犬を掛けたと? 山田くん、ザブトン一枚!(笑)
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