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おれの名を呼ぶな!  作者: 古柴
9章 『奈落の徒花』後編
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第571話 14歳(秋)…シャロ様のありがたいチュートリアル2

『説明が終わったのち、お主らが訪れるのは瘴気領域の東にあるザナーサリー王国、その南東に存在したサフィアス王国の首都ノイエとその近郊を再現した世界じゃ。伝わっておるとは思うが、今は無きその国、滅びたその都市こそが三番目の魔王が誕生した場所であり、同時に討ち滅ぼされた場所でもある』

「ふわ!? 国は無いけど都市はまだちゃんとあるわよ!? そこで育ったもの!」

「落ち着きなされ。言葉の綾だから。どうどう」

「むぅ……」


 びっくりしてミーネがちょい過剰に反応。

 撫で撫でして落ち着かせる。


『お主らはその地で活動することになるが、時期的には魔王が誕生する数年前じゃ。ひとまずは当時の世相を感じつつ、いかにして魔王が誕生し、そして倒されたか、それを見守り、理解してもらうことになる。とは言っても、いきなり放り込まれた夢の世界で何をすればよいのかさっぱりわからんじゃろう。そこで儂はお主らが達成すべき目標を用意した』


 このように――、とシャロ様が言うと、大きなウィンドウが出現。

 皆で確認できるそのウィンドウには文字が記されていた。


《 TUTORIAL 》

 ★【シャーロットの話を聞こう1】(達成!)

 ☆【シャーロットの話を聞こう2】

 ◆[起きあがってみよう](達成!)

 ◇[飛び跳ねてみよう]


『星印は状況を進展させるための目標であり、これを達成すると白星が黒星になる。菱形は重要ではないが、夢の世界に慣れるためやってみてもよいのではないかという儂からの提案じゃな。星印が優先目標、菱形が準目標と捉えてくれ。基本的には達成することで次の目標が現れるようになっておる』

「冒険の書で言うところの、メインクエストとサブクエストみたいなものかしら?」


 ミーネがぴょんぴょんしながら言う。

 あ、準目標の[飛び跳ねてみよう]が達成された。


「そ、そうだな。それでいいと思う」


 みたいなもの、というか、まさにその通り、根本が同じなのだ。

 普通ならシャロ様が何を言っているか、まずそれを熟考しなければならないところだろうが、ミーネ、そしてアレサも冒険の書に当てはめてなんとなく理解できているようだ。

 思わぬところで冒険の書を作った甲斐が生まれていた。


『夢の世界でお主らは現実のように振る舞うことができる。しかし夢の世界だからとあまり無茶をするのはお勧めせんな。夢の世界には夢の世界なりの秩序があり、無法を取り締まる枠組みもあるのでそこは注意してもらいたい。そしてお主らが気にしているであろう、夢の世界で死んだ場合なのだが、これは安心してもらいたい。夢の中で死んだところで現実の方は眠ったままじゃ』


 よかった、仮想世界で死んだら現実でも死んでしまうデスゲームではないようだ。

 シャロ様の話におれとシアはほっとしたが、ミーネとアレサはよくわかっていない感じである。

 夢の世界での死については……、まあ死ぬわけがないという感覚だから当然と思っているのだろう。

 デスゲームを意識している方がおかしいのか。


『夢の世界で死んだ場合、安全な状況下で仲間が抱き起こすことで蘇生するようになっておる。もし全滅してしまった場合、お主らは少し過去に戻り、そこからやり直すことになる。よくわからないと思うが、これについては実際に体験してもらうしかないじゃろうな』


 ふむ、オートセーブポイントがあるということか。

 これについて、シアはまあ当然だが、ミーネとアレサも特に困惑することなく付いてきている。

 冒険の書でも全滅したら手前からやり直すからな、ここはすんなり受け入れられたようだ。


『そして活動期間についてじゃが、こちらで長く過ごしても現実では一眠りといったところじゃから安心するといい。流石に一年、二年と過ごせば話は別じゃがな。この夢の世界から出る方法については後で説明するが……、さて、ここまでの説明をもう一度聞くかね?』


 二度目の確認。

 おれとシアは必要無いだろうが、ミーネとアレサはどうだろうか?


「ねえ、これって要は冒険の書で設定された舞台が過去のクェルアーク領で、そこで魔王がどうやって誕生して、どうやって倒されたかを確認するってのがメインクエストってことよね? 無茶をするのは良くないってのは、冒険の書だって町中で人に斬りかかれば捕まるわけだし、遊びとわかっていてもそのへんは常識的にってことでしょ?」

「お、おう」


 ミーネの理解が早い。

 びっくりするほど早い。

 ちょっと感心したので撫でておく。


「そうだな、そんな感じでいいと思う。理解が早いな」

「これくらいはね」


 そう言いつつもミーネは「むふー」と誇らしげだ。


「猊下、私、私も理解しています!」

「わたしもしてるんですけどー!」


 アレサとシアが張り合ってきた。

 ひとまずアレサは撫で撫で、シアはくしゃくしゃっとしておいた。


「わたしだけ雑なんですけどー!」


 シアが贔屓だと不平を言うがこれは無視。

 それからおれたちは『いいえ』を選択してチュートリアルを進める。


『ふむ、理解が早いのう。では次に、お主らがどのような状態になっておるかを説明しよう。すでに気づいておるかもしれんが、普通の夢とは違って、はっきりとした感触があるじゃろう?』


 あ、そう言えばそうだ。

 感覚としては現実とそう大差ない感触がある。


『実際には錯覚させておるだけなのじゃが、一方、痛みに関しては鈍くしてあるんじゃ。戦いによって傷つくことがあっても、お主らはそう気にせず戦い続けることができるようになっておる。ただ、それでは自分がまだ平気か、危ない状態になっているかの判断が付きにくい。そこでこういうものを用意した』


 と、そこで視界の隅にポップした横長の赤い棒。

 HPバーか!

 あ、でも見えるのは自分のだけだな。

 みんなの状態がまとめて見られるような共有情報は無いようだ。


『今お主らの視界に現れたものは、お主らの状態を端的に表した代物じゃ。危害が加えられるとその棒は短くなるが、休息をとったり、手当をすることによって元の長さまで戻る。戦いになったら、その棒の長さに気を配っておくといい。この棒が無くなると死亡ということになるのでな。まずは少し体験してもらおうかの』


 と、シャロ様が言った瞬間――。

 ドンッ、と。

 激しい衝撃があり、おれたちはその場に転倒することになった。


「いった――……、くないわね。でもびっくりしたわ」

「あ、棒の長さが――、あ、戻ってしまいました」

「あれま、アレサさんの特性が反映されてるんですかね、わたしのはちょびっと削れたままですよ」

「私は一割くらい削れてるわ」

「え、おれ半分くらいごりっと削れてるんだけど!」


 受けたダメージの違いは体力や防御力の関係だろうか?

 あと、アレサが即回復したことから、この夢の世界では現実の能力もしっかり反映されているらしい。

 これもうあっちの世界の技術ぶっちぎってるぞ……。


『驚かせてすまんの。ともかくこれでその棒については、なんとなくでもわかってもらえたと思う。短くなった部分については、そのままにしておけば徐々に戻るので心配はいらんぞ。もし回復魔法を使える者がいれば試してみるのもよいかもしれんな。ちゃんと使えるのがわかるはずじゃ』

「あ、では猊下の治療を」


 と言ってアレサが抱きついて来た。

 途端にHPバーがフルに。


「ありがとうございます。戻りました」

「え、戻りましたか?」

「はい、戻りました」

「そ、そうですか……、この感覚は現実とは違うんですね」


 ふむ、ちゃんと能力や特性が反映されている一方、そういった感覚まで完全再現とはいかなかったのか。


『さて、これで今の状態についての説明は終わりじゃ。ここまでの説明をもう一度聞くかね? その場合は、また攻撃を受けてもらうことになるがの』


 これにおれたちは『いいえ』を選択する。

 もし回復もせず『はい』を選択してたらおれ死んでたなこれ。


『よろしい。では次に、この夢の世界におけるお主らの活動を補助してくれるものについての説明をすることにしよう』


※誤字の修正をしました。

 ありがとうございます。

 2019/01/28


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